Facebookの各国オフィスには、全世界共通のこだわりがある。それは「未完成」であること。つまり意図して「作りかけ」状態を保っているのだ。マーク・ザッカーバーグCEOがこだわった「未完成」の意味とは? 東京・港区内のFacebook Japanを訪ねてみた。
巨大な壁画アートがお出迎え。オフィス見学に期待感が高まる。
写真:木許はるみ
「冒険は1%しか終わっていない」
オフィスに入ると、早速「未完成」の象徴が目に入った。天井を覆うものがなく、配管や空調がむき出しになっている。
「未完成」の象徴はどこだ?
提供:フェイスブック ジャパン
軽食を提供するスペースやソファのあるオープンスペースなど、オフィスの至るところで、「未完成」の天井に出合った。
理由を聞くと、コミュニケーションマネージャーの嶋田容子さん(27)は、
「マーク・ザッカーバーグ氏の『まだ(ミッション達成に向けて)この冒険は1%しか終わっていない』という思いが込められているんです」
と説明する。さらに、「この造りは、全世界共通です」とも。オフィスそのものがミッションを表現し、共有するためのものなのだという。
「シェア」する壁で深めるつながり
落書きのような遊び心で、思いをシェアしよう。
写真:木許はるみ
天井から視線を落とすと、入り口のすぐ近くの壁面に、「THE FACEBOOK WALL」がある。白地の背景に「What’s on your mind?」と書かれ、「社員同士で思いついたことをシェアしたり、社外の人とも(ウォールに描いてもらうことで)つながりを深める」(嶋田さん)ために、自由に書き込みができる。
壁の中央は、長谷川晋代表取締役が書いた「いいね」サイン。それを取り囲むように、各社のロゴやイラスト、社名がカラフルに描かれている。 私も書き残したいと思ったが、隙間がないほど、ギッシリだった。
インスタ映えするオフィス
インスタのアイドル「柴犬まる(@marutaro)」。
写真:木許はるみ
入口のオフィスマップの上には、柴犬のぬいぐるみが三角の帽子を被って乗り、来客者を迎える。インスタグラムで260万人のフォロワーを持つ「柴犬まる(@marutaro)」だ。
「毎朝癒されています」と嶋田さんの顔がほころんだ。オフィスマップの棚には、ハロウィンを意識して、ゴロゴロとかぼちゃが並んでいる。手が込んでる、と思わず感嘆。
インスタの写真の枠を意識した“ミニ茶の間”
写真:木許はるみ
同じフロアにあるインスタグラムのオフィスに行くと、木枠に囲まれた“ミニ茶の間”が出現。
どこかで見たことがある枠。
そう、インスタの正方形の写真の枠を意識しているそうだ。
ミニ茶の間には、ソファとテーブル、犬のぬいぐるみが並び、たまにスタッフが内に入って、写真を撮るという。
搾乳できる「マザーズルーム」も
大きな冷蔵庫には、甘酒も完備していた。
写真:木許はるみ
シリコンバレー発の企業はどこもフリーのドリンクやおやつ、カフェ・レストランなど食料事情が充実しているが、Facebookも例外ではない。
オフィスの冷蔵庫を覗くと、「甘酒」や「冷やし飴」。毎月のオススメのドリンクなどを完備している。軽食の提供スペースでは、おにぎりやシリアル、果物を用意し、ヘルシーな食生活を勧めているという。5月には、産休から復帰したスタッフが働きやすいようにと、搾乳できる「マザーズルーム」を設けた。
自転車通勤や営業を終えたスタッフが汗を流せるようにと、シャワールームも並んでいる。
国の文化を反映したデザイン
「和」を意識した、かるたの模様をした天井。
提供:フェイスブック ジャパン
一部の壁や天井には、日本人アーティストによる壁画や、かるたをイメージした絵柄が描かれていた。 あんなに大きな壁に作品を描けたら楽しそうと思えるような、自由で明るい印象をフロアに与えている。
国の特徴やニーズ、文化をデザインに反映しているというフェイスブックのオフィス。フロアのスペースは当初、今の3分の1程度だった。これまでに2回増設し、マッサージチェアやボードゲームのスペース、ヨガなどをするリフレッシュスペースはあまり使われなくなったので縮小した代わりに、広めの会議室を作り、機能性を高めるデザインに変えた。
「オープンスペースが多くあり、社員の間で自然発生的にコミュニケーションが生まれ、新たなイノベーションが生まれていくような空間になっている」(嶋田さん)
どうしたら社内で新しい発想を生むことができるか。オフィスのデザインは、アイデアの源になるのだ。(文・木許はるみ)