ブロックチェーン世代が語るこれからの「政治」 —— 仮想通貨によって国家の役割は小さくなる

仮想通貨のイメージ画像

ブロックチェーン技術やそこから生み出される新たなビジネスモデルに熱狂する「ブロックチェーン世代」と言える人々が現れている。10月4日の記事「“ブロックチェーン世代”は国にも会社にも依存しない」では、そんな彼らの世代像を描いた。

それでは、はやくからブロックチェーンに関わってきた人たちは、いまの政治をどうみているのだろうか。開発、普及、コンサルティングの立場でブロックチェーンに取り組む3人の座談会を開いた。参加者は、ブロックチェーン技術を基盤に信頼性の高いソーシャルメディアの開発を目指すスタートアップ企業ALIS社でCTO(最高技術責任者、Chief Technology Officer)を務める石井壮太さん(35)、仮想通貨の普及に取り組んできた藤本真衣さん(32)、監査法人でブロックチェーン関連のコンサルティングを担当している勝木健太さん(30)。

座談会の3人

座談会に参加してくれた3人。それぞれの立場でブロックチェーンに取り組んでいる。

撮影:今村拓馬

Business Insider Japan(以下、BI):みなさんのブロックチェーンや仮想通貨との出合いは。

藤本真衣さん(以下、藤本):5年くらい前、寄付事業の立ち上げを進めていました。海外送金の手数料が高くて、寄付事業なんてできないじゃんと思っていた時に仮想通貨に出合って、「手数料はほとんどかからなくて、直接送れるって、何それ」というところから興味を持ちました。ただ、そのころは仮想通貨についてほとんどの人が知らなかったので、まずは普及活動を続けてきました。

勝木健太さん(以下、勝木):2014年ごろ、藤本さんのビットコイン勉強会に参加したのがきっかけです。当初は、ビットコインは胡散臭くて、ブロックチェーンに価値があると思っていました。ただ徐々に、ビットコインも、マイニングという行為自体がその価値を担保している可能性を認識し、大きなポテンシャルを持つ存在であると捉え方が変わっていきました。

仮想通貨は従来の通貨と異なり、価値の裏付けがないと言われますが、通貨の価値って何でしょう。従来の通貨には国や中央銀行の信用力がバックにあると言われています。でも何かがバックにあるというより、流動性が担保されており、人々が価値のある実体だと認識すれば、そこに価値が生まれるのではないかと考えるようになりました。仮想通貨の将来性に少し懐疑的だったのですが、最近は、もしかしたら仮想通貨そのものが、超国家的な価値を持つ可能性もあると感じています。

信用を技術で成し遂げたブロックチェーン

石井壮太さん(以下、石井):藤本さんが、しっかり普及活動をされた結果ですね。

勝木:完全に、ぼくは藤本チルドレンだと思います。2014年か2015年頃は全然風向きが違いましたね。

石井:2015年は世の中では完全に「仮想通貨=詐欺」と思われていた時代ですね、しんどい時代だった。

藤本:セミナーを開いても、まず詐欺ではないと誤解を解くことから始めていました。

勝木:しゅうまいさんという著名なブロガーの方がいて、その方はツイッターの黎明期から可能性を認識していた方です。インターネットの可能性に初期から気づいたマーク・アンドリーセンも、早くから仮想通貨の可能性を見出していた。だから、自分よりも先見性のある一部の人たちが、仮想通貨に可能性を感じていたので、「もしかしたら」という思いは若干ありました。

藤本:以前、「子どもの笑顔から世界を繋ぐ」ことを目的とした「キッズ時計」というウェブコンテンツに参加していました。お母さんたちが主体的に、どの国のどういう課題に寄付をしたいかを選んで、直接送金できるプラットフォームを目指していました。

でも、銀行の手数料が高くて、少額寄付なんてできないよと断念しかけた時に、私は運命的にロジャー・ヴァー(注:はやくからビットコインに投資をしていた先駆者のひとりとされる人物)に出会いました。ロジャーが「ビットコインは海外への送金手数料ほぼゼロで、目の前でお金を渡すみたいに海外の人に直接お金を渡せるんだよ。すごくない」と言っていました。

藤本真衣さん

藤本真衣さん。仮想通貨の普及に取り組んでいる。

周りの人はみんな、絶対に詐欺だから、ロジャーには近寄るなと言っていました。でも、私には彼が人をだますようには見えなかったので、いろいろ勉強しました。すぐに寄付サイトを立ち上げたかったのですが、まずは仮想通貨の正しい知識を広めていこうと、この4、5年は普及活動をやって来ました。

石井:2012年ごろ、ビットコインが2000円ぐらいだった時に、エンジニア仲間から仮想通貨の話を聞いて、最初は「ふーん」という感じでした。Suicaと区別がつかなかった。ブロックチェーンという言葉もあまり表に出ていなかった。ブロックチェーンは仮想通貨から生まれたもので、その裏側でただ動いている技術だと思っていました。

ただ、なんで価値があるのかには、すごく興味を感じました。価値は何らかの裏付け、理由がないと生まれない。ぼくはエンジニアなのでその裏側を見てみたら、ブロックチェーンにたどり着いた。これはものすごいものだなと。

例えば、日本円の信用を保証するには、透かしを入れて偽造を難しくします。紙幣の原料になるミツマタという植物の栽培もかなり厳しく制限されています。偽金づくりがもっとも重い場合、無期懲役になる。なぜこれほど重いかといえば、信用を作るためです。国家が圧倒的な力で担保をしなければつくれなかった信用という、とても大切なものを、ブロックチェーンは技術で成し遂げた。

中央で人が管理をする必要がなく、技術的に自動化されている。革命的だと感じました。ブロックチェーンには、トラストレスという言葉があります。取引の相手を信用しなくても改ざんができないから取引は成り立つ。人が信用をつくる必要がなくなった。

これはすごいと思って、勉強も兼ねて全財産をつぎ込みました。そしたら(注:巨額のコインが消失した)マウントゴックスの事件が起きて、かなりの損失がありました。でも、あの事件は技術の問題ではないと思ったので、その後も自分のお金を突っ込み、ブロックチェーン技術を追ってきました。

石井壮太さん

石井壮太さん。ALIS社のCTOを務めている。

ただ、ブロックチェーンに関連する仕事はまったくなかった。何か仕事としてやりたいなと思っていた時に、ぼく以外にも、ものすごく興味を持っている人たちと偶然一緒に仕事をしました。すごく盛り上がって、じゃあ一緒にやろうとALISという会社を立ち上げました。

BI:売買はしていますか。

藤本:トレーダーのようなことはやっていませんが、毎月ビットコイン貯金はしています。

石井:自分の資産で言うと、日本円と暗号通貨の比率は5対95位です。

藤本:Fiat貧乏(法定通貨貧乏)という言葉が出てきていて、私もFiat貧乏。お金が余ると、仮想通貨に変えています。仲間内でごはんを食べにいって、割り勘という時に、みんな日本円の手持ちがない。

Q1. 最近、国政選挙に行きましたか

藤本:私は行きませんでした。行ったほうがいいとは思いますが、どこに投票すればいいのか自分の中でしっくりこなかったから。

勝木:前回は、ぼくも選挙に行きませんでした。ぼくは政治に関しては極めて無知で、政治に関する知識や知見を持たない自分が、投票するのは果たして適切なのだろうかという疑問もあります。良い政治家ってなんだろうと考えた時に、考えるための材料が自分の頭の中には十分にありませんし、考えるにしても変数がありすぎて、意思決定がきわめて難しい。あとは、もっと簡単に投票できるようになれば良いと思います。

石井:ぼくは一応行きました。貧乏性なのか、権利は使わないと損かなと思っています。

Q2. 自民党についてどんなイメージを持っていますか?

勝木:長期政権が続くのかなというイメージはありますが、考える材料がなく、良く分からないというのが本音です。

藤本:私もテレビがなくてわからない。ネットでAbemaTVを見ることがあるくらい。

石井:テレビを持ってはいますが、ケーブルがなくて、AmazonのFire TVをつないでいます。政治のことは詳しくはありませんが、ブロックチェーンと仮想通貨で考えると、ブロックチェーンは超国家的だと思います。仮想通貨を全部合わせると15兆円くらいですが、すでに経済的には小さな国家より規模がある。この流れは、どんどん進んでいくと思いますし、政治のあり方も変わっていくのかもしれません。

勝木:政局よりも、テクノロジーの進化のほうが上位にある概念なのではないかと個人的には感じています。テクノロジーの進化に応じて、政権の振る舞いも変わってくる。

勝木健太さん

勝木健太さん。監査法人でブロックチェーン関連の戦略立案に携わっている。

BI:安倍晋三首相のイメージは。

藤本:一番長く続きそうですよね。首相がころころ変わっていた時代とは違って長く続いていて、イメージ的には悪くない。

勝木:これまでの日本の総理と比べて、より強いリーダーシップを発揮している印象があります。働き方改革に積極的に取り組んでいるのは、素晴らしいと思います。

石井:憲法を巡る議論については、論理的におかしいのはエンジニアとしてしっくりこない。どうしたら日本がもっと良くなるか、きちんと議論をしないといけない。良くない方向に進んだ時に、投票に行っていないと意見を言えないから、投票には行きます。

藤本:北朝鮮の問題を考えると、もっと1票の重みを大事にしないといけないなとは思います。でも、あんまり現実感がないのかもしれません。心の中では、結局(政治を)信用していないのかもしれません。投票をしても、誰かが票数をコントロールするんじゃないのか、とか。

勝木:極論を言うと、ぼくが考えて入れる1票よりも、もっと大きな要因で物事が決まってしまう気がしています。安全保障の問題についても、あまり現実感がありません。平和ボケしているのかもしれません。

Q3. 中央銀行の役割は何だと思いますか。デジタル時代にふさわしい通貨システムとは?

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RAFDC/shutterstock

勝木:通貨を発行したり、金融政策をつくったり。

藤本:実は勉強しなきゃと思って、元金融庁の偉い方がされている紹介制の勉強会に半年通って勉強しました。いま中央銀行に守ってもらっているのは、すごく楽なことだと分かった。

コントロールされているほうが楽なこともあるんだなと理解した上で、仮想通貨が好きだと思えたのはよかったなと思います。今までそうやってコントロールされ守られてきたけど仮想通貨はすべて自己責任。そう考えると、中央集権、非中央集権それぞれにいいところと悪いところがあるなと思います。

勝木:完全な非中央集権的なシステムではなく、ある程度、制約や規制があった方が、イノベーションが促進されるという見方もあります。ICO(Initial Coin Offering、仮想通貨を用いる資金調達手法)についても、適切に規制した方がマーケットは健全化して、長期的に市場が大きくなる可能性もあります。

石井:今まで長くやってきたことが必ずしも将来も続くわけではないと個人的には思います。このままではいられないと思います。

BI:中央銀行の役割が変わっていくと。

石井:日本に限らず、少なくとも縮小する傾向には向かっていくと個人的には思っています。国家のあり方ともすごい深く結びついている気がします。

勝木:デジタル時代にふさわしい新たな通貨システムを世界の中央銀行も構想している段階なのかもしれません。仮想通貨の出現により、新たなパラダイムが始まっているのかも。

石井:ぼくが5対95の割合で仮想通貨を持っているのは、そういう立ち位置でもあります。

藤本:私も10対90ぐらい。ほとんどを仮想通貨に替えています。自分の行動を考えたら、確かに仮想通貨の方を信じているんでしょうね。ちょっと買い過ぎたと思って日本円に戻すこともありますけど。ギリシャで金融危機が起きた時に、日本でも起こったら怖いよねって話していました。仮想通貨に詳しい人は、経済に詳しい人が多くて、話を聞くと、預金封鎖だって日本も他人事ではないと。

Q4. 政府の役割はこれから変わっていくのでしょうか。

勝木:防衛や治安などを除けば、「小さな政府」に向かっていく流れはあると個人的には感じています。社会保障についても、ベーシックインカムのような制度も実験されていますし、今後は、グローバル企業がこれまで国家が担ってきた仕事を一部代替するような未来もありうるのかもしれません。テクノロジーの進化に伴い、政府の役割が縮小していく可能性はあると感じています。

藤本:この間、これからAIが政治を回していくという話を聞きました。その時には人間が、ユニバーサル・ベーシックインカムのような制度で生活をすると。例えば、世界規模の大きなファンドをつくって、AIがいま日本の道路を直すよりも、アフリカの道路を直すほうが経済発展上大事だと判断して、アフリカに投資するような仕組みが生まれるかもしれません。政府もそんな風に変わっていく可能性があると思っています。

勝木:歴史を通じて、世界の大きな流れとして効率性、透明性、公平性が増していく気がしています。政府が独占していたような業務についても、今後は、政府以外が取り組むことができる可能性があります。ICOも、企業による通貨発行と捉えることもできます。

石井:今までは、真ん中に人がいて周りにルールがありましたが、真ん中にルールがあって周りに人がいるほうが、圧倒的にミスがなく効率的です。例えば、信号機はそのうち無くなると思っています。人間の目は判断を誤ります。将来、「何で信号機なんてものがあったの」という新しい世代が出てきて、「昔はね、これを見て進んでいいか決めていたんだよ」と、ぼくらが答える時代が来る気がしています。

勝木:信号機が存在することが目的ではなく、適切な移動手段を活用して、安全で効率的に移動することが目的ですよね。そう考えると、実は信号機はなくてもいいのかもしれない。

ブロックチェーンを使った投票システムはありえるか

BI:政府も、税金の形でお金を集める主体と考えると、一種のファンドかもしれません。

勝木:あくまで仮定の話ですが、ファンドとしての機能を政府より適切に行うことができる主体が現れたら、人々はそっちに向かってしまうかもしれない。

藤本:ブロックチェーンは信用を陳腐化しました。誰かを信じなくてもいい仕組みです。中央集権では変な不正もあるけれど、ブロックチェーンは透明性があって分散型なので、そういう風になっていくのかなと思います。

BI:インターネットが普及し始めた時代も、非中央集権化が進む可能性があると言われていました。でも、いまはグローバル企業と強い政府に情報が集中しているという指摘もあります。

石井:ぼくたちは、ALISというプロジェクトでICOによる資金調達をして、だいたい日本円で3〜4億円を預けて頂きました。今は、すごくお金を持っているベンチャーキャピタルやエンジェル投資家が株式をしっかり握って資金を渡していますが、その仕組みがグラついていると感じます。すこし滑らかな社会になってきているのかなと思っていて、個人としてはそんなに悲観はしていません

参加者のノートPC

座談会参加者のノートPCには、仮想通貨関連の企業のステッカーがたくさん貼られている。

BI:日本の政治、ここは変えてほしいということはありますか。

藤本:投票の仕組みって、もっと透明化できませんか。私、募金を始めたのも、コンビニに置いてある募金箱が本当に使われているのかなって思ったからです。疑い深いのかな。人が行う開票作業も変えた方がいいのでは。

勝木:藤本さんがおっしゃったように、より透明性の高い投票システムの実現のためにブロックチェーン技術を活用する可能性はあります。海外では、ブロックチェーン技術を使った投票システムの構想が出てきています。少し利便性を高めるだけで、投票する人の数は飛躍的に増えると思います。例えば、メッセージを送るという行為なら、これまでもメールでもできたけれど、圧倒的にLINEの方が使いやすいので、多くの人々がLINEを使うようになった。有権者が投票する上での「ユーザビリティ」について考えることが大切だと思います。

石井:無駄な支出を削って、AI(人工知能)に集中的に投資するのがいいと個人的には思います。

勝木:いまは、過渡期だと思います。例えば、ぼくがALISのプロジェクトが信頼できると思ったのも、プロジェクトメンバーの学歴や過去の経歴などがありますし、NHKやBusiness Insider Japanといったメディアが取材したことも判断材料のひとつになっています。自分自身についても、現在、伝統的な企業に所属していて、個人としての意思決定も権威主義的な部分があります。将来的には非中央集権化の流れはあるとは思うけれど、今はまったく非中央集権的ではありません。でも、10年後も同じでいられるかというと、そうではないと思っています。


石井壮太(いしい・そうた):ALIS社でCTOを務めるエンジニア。ブロックチェーンを基盤とするソーシャルメディアの開発を進めている。

勝木健太(かつき・けんた):監査法人で、ブロックチェーンをはじめとするフィンテック関連の戦略立案に従事。『ブロックチェーン・レボリューション』の翻訳協力を務めた。さまざまなネットメディアに寄稿している。

藤本真衣(ふじもと・まい):株式会社グラコネCEO。ビットコイン寄付プラットフォームKIZUNA創業者。仮想通貨やブロックチェーン関連企業のマッチングや仮想通貨の啓発活動に取り組んでおり、ミス・ビットコインの愛称も。著書に『人生を変える「繋がりの法則」-人脈から一歩その先へ』。

(構成:小島寛明、撮影・今村拓馬、取材協力:BOOK LAB TOKYO

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