「テクノロジーとデザインとデータが民主主義を前進させる」——10、20代が立ち上げた選挙情報サイト

2016年6月に選挙権年齢が18歳以上に引き下げられ、今回の衆院選が法改正後初の政権選択選挙となる。

2016年の参院選では、18〜19歳の投票率は46.78%と全体の54.70%を下回ったものの20代、30代を上回り、今回の衆院選でも若者の投票率に注目が集まる。

そんな中、若者の投票率向上を目指して活動をしてきたNPO法人Mielka(ミエルカ)が選挙情報サイト「JAPAN CHOICE」を10月12日に立ち上げた。

「同世代に投票に行ってほしい」という彼らはなぜ、「JAPAN CHOICE」を立ち上げたのか。その理由をMielkaの徐東輝(そぉとんふぃ、以下東輝)さん(26)に聞いた。

きっかけは米大統領選

「あぁ、ここまで政治情報が可視化されているのか」

東輝さんは2016年、クラウドファンディングで資金を調達し、米大統領選を現地で取材した。その際、日本よりもインターネットと政治が強く結びついているアメリカでの情報公開の“進化”を思い知ったという。

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ヒラリー・クリントン氏の選挙事務所を訪れる徐東輝さん

提供:徐東輝

「若者は投票に行こう!」。メディアやNPOはそう啓発する。だが、1993年の第40回衆院選以降、20代の投票率は低迷し、常に50%を下回る。

東輝さんたちが2014年に発足させたMielkaの前身、ivote関西でも若者の投票率向上のため、政治家を呼んだ交流イベントを開催し、投票も呼びかけてきた。当時、東輝さんは京都大学の学生。関西の学生たちの活動が今に続いている。

しかし、「手応えはなかった」(東輝さん)という。

一方、アメリカではマスメディア以外にも数多くの報道プレイヤーが選挙情報をまとめ、マスメディアに劣らない影響力を持っていた。しかも、ただ事実を伝えるだけではない。いかに分かりやすく伝えるかに注力し、データを可視化させ、直感的に理解できることを重視していた。

有権者もオンラインでの情報収集や発信に積極的だった。SNSがトランプ躍進の一翼を担ったとも言われる。

FiveThirtyEight

米大統領選後も各世論調査の結果が継続して見られるようになっている。

出典:FiveThirtyEight

日本でも「政治山」や「選挙ドットコム」など、政治に特化したサイトも存在するが、数も規模も限定的だ。

現状の日本は「オンライン上の政治情報が圧倒的に足りなさすぎる」。そう感じた東輝さんはイデオロギーに固執せず、ストック情報を可視化した政治情報サイトを立ち上げることを決心する。

情報提供しないのに「投票に行こう!」は無責任

サイトを立ち上げるにあたって特に意識したのは、「これを見ておけば大丈夫」というものだ。

多忙な有権者の「面倒くささ」をいかに解消するか。多くの有権者は政治に関心はあるものの、日々のニュースを追う余裕も、玉石混交のオンライン上の情報を精査する時間もない。

実際、投票に行かない大きな理由の一つとして「政党の政策や候補者の違いがよく分からなかったから」が挙げられる。

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投票棄権者のうち各世代20%以上が政策や候補者の違いが分からないという。

出典:明るい選挙推進協会

そうした「面倒くささ」を解消し、政治参画へのハードルを下げるため、情報を圧縮し、分かりやすいサイト作りを目指した。

具体的には、①自分の住んでいる町の候補者比較、②各政党の公約比較、③20の質問に答えてお薦めの政党をマッチングする投票ナビ、④政策の分析記事がまとめて見られるようになっている。

JAPANCHOICE

地図をクリックすると、自分の選挙区の候補者情報、接戦度合いがわかる。

出典:JAPAN CHOICE

候補者と同じアンケートに答えて政党・候補者との一致度がわかる毎日新聞の「えらぼーと」や政策比較など個別に提供しているサイトは存在するが、候補者や政党の情報も全て網羅され、さらにマッチングまで装備したサイトは他に存在しない。

十分な情報を提供していないのに、『投票に行こう!』は無責任」。東輝さんはそう力を込める。

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重要な争点について各党の公約を比較できる。

出典:JAPAN CHOICE

目指す選挙以外の政治参画

突然の衆議院解散により急遽オープンを前倒しにしたという現サイトは、今は選挙情報に特化しているが、2018年以降、行政・立法に関する情報の「見える化」を目指している。具体的には、年度別の予算の推移や立法状況、現状ははがきやPDFでしか見られない投票所の地図などである。

その先に見ているのは、選挙以外の政治参画だ。

現状、政治家や行政に政策を提言したり陳情をしたりするのは一部の業界や団体に限定されるが、一般の有権者ももっとラクに政治参画できるようにしたい。そのためにもっとさまざまな情報の可視化を進めていきたいという。

最近、日本でもSEALDsや立憲民主党など、デザイン性の高い政治活動が増えている。それをリードしているのは間違いなく若者だ。

「JAPAN CHOICE」も各候補者や政党の公約を入力する作業などは、10代や20代のメンバー30人が分担、システムも得意な人が無償で開発した。

東輝さんは「テクノロジーとデザインとデータは、民主主義を前進させる」と語ったが、それをリードするのもまた若い世代なのだ。

(文・室橋祐貴)

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