テスラは大人気あの車をこれ以上改良するべきではない

モデルS

素晴らしきモデルS

Hollis Johnson

(編集部注:この記事の内容は執筆時点のものです)

テスラがゼロからつくった最初の車「モデルS」は完璧だ。

テスラのモデルSの新型「P100D」は13万5千ドル(約1350万円)、4ドアの4輪駆動車で、100kWhの新型バッテリーを搭載し、航続距離は315マイル(約506km)を誇る。そのうえ、わずか2.5秒で時速60マイル(約97km/h)にまで達する。1億円クラスのフェラーリやポルシェの高級モデルより速い。

100は切りのいい数字であり、モデルSのこれ以上の改善を望まない自分に言わせれば、100で止めるのはいい考えだと思う。

最も人気があり、今日までその売り上げの多くを担ってきたモデルSを、テスラが継続して改良しようとするのは素晴らしいことだ。もちろん、1回の充電あたりの航続距離がどんどん伸びることは望ましい。とはいえ、506kmはかなりの距離だ。2.5秒で時速60マイルも、ものすごい。

私たちは、次はP110Dだ、いやP200Dだ、いやもうP1000D だと、際限なく期待すべきだろうか。パロアルトに巣くうオタクたちの性能アップへの容赦ない声に期待すべきなのだろうか。テスラは今週、もう1つ発表が控えている。最大級に進化したモデルSが果たしてまた出るのだろうか。

たぶん、もうこれから先は、モデルSのパフォーマンスにおけるどんな新しいことも、きっとオマケみたいなものにしかなりえないだろう。

何しろ盛りだくさん

テスラにはもっと大事なことがある。まずはマスマーケット用のモデル3を2017年には市場展開することだ(テスラは発売延期を繰り返した過去がある)。それと、自動運転機能を向上させる必要がある。

電気自動車から自動運転車へと自動車が大きく変化しているなか、今まさにピッツバーグで自動運転車を走らせているウーバーや、2021年に完全自動運転車の実用化を目指しているフォードとの競争に生き残っていくためだ。

ちなみに、テスラによるソーラーシティの買収は失敗に終わった。ソーラーパネルのリースと取り付けサービスを行うソーラーシティは、イーロン・マスク氏のいとこたちによって作られた会社で、マスク氏は取締役会のトップを務めているが、うまくいっておらず、今年は数10億ドルあった時価総額の半分を失おうとしている。

上手くいっているものに頼る

テスラの10年におよぶ壮大な計画の中で、モデルSは偉大な成功例だ。だからこそ、これから取り組む数々の挑戦だけでなく、マスク氏とそのチームはモデルSについて何度となく再検討し続けるのだ。モデルSは、モータートレンド誌が選んだ2013年のカー・オブ・ザ・イヤーであり、コンシューマーレポート誌による消費者の評価テストであまりにも好評を博したために、雑誌側が評価軸を作り直したくらいだ。

筆者はこの車を何度も運転したことがある。いい車だ。とてもいい。滑らかで速く、驚くほど実用的な上に、カッコイイ。アメリカにおいて100年にわたりデトロイトが支配し、そして過去20〜30年は日本とドイツからの参入を許した自動車というマシンを、シリコンバレーがいかに再発明したかを象徴している。

モデルS

ただもう、モデルSが好き。

Matthew DeBord/Business Insider

モデルSの改良は、モデルXへの要求や、より長い航続距離を求めるユーザーの要求に影響されている。100kWhのバッテリーは、よりスピードを出せるモデルXの「Ludicrous Mode(バカみたいなモード)」向けに開発されたものだが、モデルSをより速くすることができる。

しかし、もし私がマスク氏なら、これらのモデルに力を注ぎ込みすぎることはしない。

モデル3が主軸だ。この3万5千ドル(約350万円)の車は、俊敏で、200マイル(約321キロ)の航続距離を持つが、もう少し手の届きやすい価格のバッテリーが必要だ。モデル3では、価格は、パフォーマンスや航続距離よりも重要だ。

モデルSはまだまだ出回ることになる

万一、モデル3の計画が上手くいかなければ、テスラはマスマーケットから手を引かざるをえない。世界を変えるという大志も断念することになるが、たとえそうなっても、モデルSはもっとも贅沢なセダンとして市場に残るだろう。テスラはこの車を平均10万ドル(約1000万円)で販売できるし、時間をかけて利益を生み出せる車にすることができるだろう。

そうなれば、モデルSのパフォーマンスをさらにアップすることもできるはず。いつか、テスラは宇宙で一番速い車をつくることにトライできるかもしれない。宇宙人が私たちと同じようにスピード狂なら。

だが今は、モデル3に注力することが不可欠だ。スピードはマスマーケットにおいては、あまり大きな意味を持たない。

購入者が欲しいのは信頼性、価格に見合った価値、そして安全性だ。多くの潜在顧客も、テスラの物語に参加したがっている。購入予約に1000ドル(約10万円)かかるにも関わらず、37万5000件の予約が寄せられている。

信頼性や安全性などの当たり前のことは、今はテスラの得意分野ではない。しかし将来的には必要なことだ。そうなって初めて、マスク氏は本当にやりたいことーもっとも速く、もっともエキゾチックで、もっとも変わっていて、もっとも贅沢な電気自動車を作ることに戻ってこられるのだ。

[原文:Tesla needs to stop improving its most successful car

(翻訳: 日山加奈子 )

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