アップルは、グーグルの手が(まだ)及ばない“勝てる世界”で戦っている

Google商品

先日、Googleの新しいスマートフォンであるPixel 2を初めとして、複数のハードウェアが発表になりました。

正直に申し上げると、想定していたよりも遥かに進化した製品が発表された、と言う印象です。

今日のnoteでは、Googleの得意とするソフトウェア開発、そしてそのソフトウェアが飲み込もうとしている世界、さらにはGoogleが逆にあまり得意でない世界の話を、少ししてみたいと思います。

まずは個人的に非常に驚いた機能を2つ紹介してみたいと思います。

驚き1: 「翻訳コンニャク」並のヘッドフォン

1つ目は、Googleが初めてリリースすることになるワイヤレスヘッドホンGoogle Pixel Budsです。

Google Translate画像

最近のスマートフォンはヘッドフォンジャックが廃止されていく傾向にあり、今回Googleが発表したPixel 2も例外ではありません。

AppleのAir Pods然り、ワイヤレスのヘッドホンが必要になってくるわけですが、今回のGoogleのワイヤレスヘッドホンは、ただのヘッドフォンではありませんでした。

実際に発表会の際のデモのビデオを見ていただくのが早いと思いますが、このワイヤレスヘッドフォンは、Pixel 2と接続することで40カ国語に対応したライブ翻訳が可能になるというものです。

これを実現するためには、高性能なワイヤレスヘッドホンとしての機能だけではなく、正確な音声認識と正確な翻訳技術が必要になりますが、それはまさにGoogleのお家芸だったというわけです。

驚き#2: レンズ1つでボケを作れるカメラ

もう一つ驚いたのは、カメラの性能とその実現方法です。

カメラというのは、スマートフォンの中でも利用頻度の最も高いアプリケーションのうちの1つとも言うことが出来、カメラの重要性を強調しても強調し過ぎることはありません。

Googleのスマートフォンのカメラ

最近の高性能スマートフォンでは、裏側のカメラには2つのレンズを有していることが多くあります。 iPhone 8 plusやiPhone Xなどは、2つのレンズを使うことで、ポートレートモードでの撮影を可能にしています。

カメラのフォーカス画像

ところが今回Googleが発表したPixel 2のカメラは、レンズが1つしかないにも関わらず、ポートレートモードでの背景ぼかしが可能になりました。

Google は一体どのようにしてそれを実現しているかと言うと、物理的に2つのレンズを用いるというハードウェアによる方法ではなく、ソフトウェアで実現している、という説明がありました。

他社カメラとのピクセル比較

Pixel 2のカメラの性能の高さはこのポートレートもモードだけに限らず、カメラの性能評価サイトである DXOMmarkによると、iPhone 8 plusよりも高いスコアが出ています。

「ハードウェア」から攻めるApple、「ソフトウェア」から攻めるGoogle

こうして見てみるとGoogleが、もともとAppleが得意としていた、スマートフォンやヘッドフォンなどのハードウェア領域に侵食してきていることがよく分かるわけですが、そのアプローチの仕方があまりにも対照的です。

スマートフォンの進化が、ハードウェアのスペックという点においては一段落してきたこともあり、各社発表する上位機種を見る限り、ハードウェアのスペック、搭載するCPUやメモリに大きな差が出なくなってきました。

Appleの場合、スマートフォンに搭載するCPUチップから自社で設計を行い、ハードウェアからOSソフトウェアまで、ベストなユーザーエクスペリエンスを提供するために、垂直統合的アプローチをとっています。

AppleのCPUチップ

そしてAppleの強みは何かと聞かれれば、他のソフトウェアメーカーには出来ない、ハードウェアとソフトウェアの密接な連携を可能にしている点だと言えるでしょう。

電子回路基板の画像

一方で、Googleのアプローチは全く逆です。最近になってようやくHTCのスマホ部門を買収しましたが、Googleは完全にソフトウェアの会社であり続けていきました。

AppleはAppleで、ハードウェアを起点とした強みを生かし続けている一方で、GoogleはGoogleで、コモディティ化するハードウェアの中でも、際立つソフトウェアとアプリケーションで強烈な差別化を図ってきています。

Google is eating the world.

著名なベンチャーキャピタリストであるマークアンドリーセンは、数年前に次のようなことを言いました。

Software is eating the world.

これは、世の中のあらゆる部分がソフトウェアによって置き換えられてきている、という趣旨の発言ですが、最近のGoogleの人工知能周りでの進化を見ると、

Google is eating the world.

とも言いたくなるほどの進化を見せているとも思えてきます。

特に「音声認識の精度を上げる」「翻訳の精度を上げる」「綺麗な写真を撮れるカメラを作る 」と言うように、数学的に記述できそうな問題に関しては、Googleよりも早く正しい回答をできる会社はこの世に存在しないのではないでしょうか。

Googleの手が(まだ)及ばない世界

そんなGoogleですが、一方で、弱点がないわけでもありません。今回の新製品発表会で発表された内容でも、いくつかの弱点が確認できます。

1つ目は、Pixel 2を発売する国がアメリカ、イギリス、カナダ、ドイツに限られているという点です。

Pixel 2は、Googleにとってはフラグシップデバイスであり、iPhoneに対抗していくのであれば、出来るだけ多くの国で発売すべきものだったとも言えるでしょう。

私が日本人だからと言うわけではありませんが、スマホ大国である日本が含まれていないという点は、本気でPixel 2を広く普及させるていくという意味においては、非常にマイナスであると言わざるを得ません。

日本はiPhoneユーザーが非常に多い国でもありますが、Google playのアプリの売上を国別に見ると、日本はアメリカと並ぶほどに大きな市場であり、Googleにとって特にモバイルでは無視すべき市場ではないはずです。2つ目は、アメリカでのPixel 2の携帯キャリアからの発売が、Verizonのみであった点です。

Googleのスマートフォンのカメラ

アメリカでも日本でも、約$1,000(約10万円)もする端末を、一括払いで購入するユーザーはそう多くはありません。多くのユーザーは契約している携帯キャリア会社から、通常24ヶ月の分割払いでスマホ端末を購入します。

VerizonはアメリカにおけるNTT Docomoのような存在で、ユーザー数が非常に多いのも事実ですが、他にも3つの主要キャリアがあり、それらのキャリアでPixel 2が取り扱いされないというのは、販売台数を増やしていくという点では大きなデメリットになると言わざるを得ません。

両方の点において言えるのは、素晴らしいソフトウェアを作るという点においては非常に感動的なレベルで仕上がっているとも思う反面、それを普及させるという点においてはまだまだAppleのiPhoneレベルには至っていないなと思ってしまったのが正直な感想です。

特に今回のPixelは、昨年に引き続いての2世代目であるため、販売台数にも大きくこだわってユーザー数を増やし、更に良い端末になるべくデータを収集して欲しかったなと言う気持ちが強かったわけですが、このままだと一部のハイエンドユーザー向けの端末になってしまう可能性も少なくありません。

あくまで個人的な印象ではありますが、Googleは直接コンシューマーに提供するBtoCのビジネスではなく、大企業同士のBtoBのビジネスにおいて、特に既存産業との折り合いをつけて行く、と言うプロセスに、まだ進化の余地が大きくあるのかもしれません。いずれにしても、個人的にはPixel 2とGoogle Pixel Budsの2つを、とても楽しみにしたいと思います。

決算が読めるようになるノートより転載(2017年10月17日記載)

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