有機ELパネルを採用、日本導入も決まっている「Mate 10 Pro」。
ファーウェイは10月16日、ドイツ・ミュンヘンで同社のスマートフォンの最新モデル「Mate 10シリーズ」を発表した。このMate10は、すでにファーウェイ・ジャパンのゴ・ハ代表が将来の日本への導入を明言しており、格安SIMユーザーにとっては注目の一台だ。
発表会に登壇したファーウェイのコンシューマービジネスグループCEOのリチャード・ユー氏。
現在スマートフォン市場はサムスンとアップル、そしてファーウェイの3強時代となっている。米調査会社Strategy Analyticsの調査によると、2017年第2四半期のメーカー別出荷台数はサムスンが1位で7950万台。2位はアップルの4100万台で3位がファーウェイの3840万台。この3社で世界総出荷台数の約44%と半数近いシェアというのが最新の状況だ。
特にアップルとファーウェイは出荷台数では260万台、シェアにすると約0.7ポイント差と肉薄している。「Mateシリーズ」はファーウェイのフラッグシップに位置するハイエンドモデルのため、発表会に登壇したファーウェイのコンシューマービジネスグループCEOのリチャード・ユー氏は、ことあるごとにサムスンの「Galaxy Note 8」やアップルの「iPhone 8シリーズ」と「iPhone X」を比較対象として言及。両社へのライバル心むき出しのプレゼンを行った。
本体背面はガラス素材を採用。
カメラレンズは縦に配置されており、指紋認証センサーはその下にある。
国内登場モデルから、海外だけのポルシェデザインモデルまで
新発表の「Mate 10シリーズ」は「Mate 10」と「Mate 10 Pro」、そしてポルシェデザインとのコラボレーションモデルで「Mate 10 Pro」ベースの「PORSCHE DESIGN HUAWEI Mate 10」と合計3モデルをラインナップ。このうち「Mate 10 Pro」は日本での発売も予告されている。
ポルシェデザインモデルの背面。上品なロゴが入る。
細かな点では、アイコンもオリジナルデザインを採用している。
ポルシェデザインとのコラボレーションモデルPORSCHE DESIGN HUAWEI Mate 10。
ファーウェイは「Mate 10シリーズ」をヘビーユーザー向けのポイントをキッチリと網羅した端末に仕上げてきた。例えばカメラ性能は、同社のハイエンドモデルとしては定番となっているライカと共同開発したダブルレンズカメラを搭載。サムスンやアップルのように「標準と望遠」の組み合わせではなく「カラーとモノクロ」というシステムで、暗所での撮影に強く、発表会では2社のモデルよりも高品質な写真撮影ができることをアピールしていた。
「Mate 10シリーズ」が前モデルと比べて大きく進化しているのがディスプレー回りだ。画面両側のベゼルを極力そぎ落とし、上下のベゼルも幅を抑えた「FullView Display」を搭載。Mate 10は前モデルと同じアスペクト比が16:9の5.9インチだが、横幅は1.1mm、高さは6.4mmもスリム化している。
さらに「Mate 10 Pro」は、今期のトレンドとなっているアスペクト比が18:9(1440×2560ドット)の縦長ディスプレーを採用。パネルは、従来の液晶ではなく有機ELを搭載し、Galaxy Note8やiPhone Xなどと真っ向勝負する。
大容量バッテリーながらGalaxy Note 8よりも薄い。
Mate 10/10Pro両モデルともiPhone 8 Plusよりも薄いベゼルを強調。
バッテリーサイズはどちらのモデルも4000mAh。
スマホの“内部”トレンドのAI支援機能の現状
今回の発表会で取材陣の関心を集めていたのが、実機では初披露となる「AI支援機能」についてだ。というのも9月末にドイツ・ベルリンで開催した「IFA 2017」の基調講演で、リチャード・ユー氏はAI処理に対応した最新CPU「Kirin 970」とそれを搭載する「Mate 10シリーズ」の発表を予告していた。
ただし、注目のAI支援機能についてはやや肩すかしといった印象。基本的には写真撮影時のシーン判別や撮影後の写真の判定に使ったり、マイクロソフトとの協力で開発したAI翻訳機能に使っているようだ。
写真撮影時のシーン判定は1億枚以上の写真を解析して学習。「犬」や「猫」、「花」などの被写体や「ビーチ」や「青空」など撮影場所など13種類のシーンを判別して、最適な設定で撮影可能となる。便利な機能ではあるが、ソニーモバイルの「Xperiaシリーズ」などで同様の機能はすでにあり、Kirin 970を使ったAI処理がどれくらい速く、どれほどの精度で対応しているのか、実際に撮影テストなどをしてみないと実感するのは難しかった。
AI翻訳機能では、2人で交互に話して会話を翻訳させる機能を装備。
文字を撮影して翻訳させる機能は反応がはやく、データをダウンロードしておけばオフラインでも利用可能。
また、音声翻訳機能はオンラインのみ対応。オフラインで使える翻訳機能は、テキスト翻訳や印刷物などを撮影してテキストを抽出するものだけだ(言語データをあらかじめダウンロードして使う)。発表会後のハンズオンコーナーでテストしてみたが、音声やテキスト検出は常用には問題ないレベル。ただしこれもグーグル翻訳などがすでに実現している機能で、これまでも高速で翻訳が行なわれているため、どれくらいAI支援機能の効果があるのかこちらも実感するのは難しかった(100枚の写真の画像認識の速度を比較するベンチマークでは、「Mate 10 Pro」は5秒、「iPhone 8 Plus」は9秒、「Galaxy Note 8」は100秒という結果だった)。
Kirin 970を使ったAI処理はオープンプラットフォームになっており、同社の「HiAI API」や「Android AI API」として利用できる。結局のところ、「AIを使って何ができるか?」というのは、今後のサードバーティーの取り組み次第といった状況だ。
100枚の写真を使った認識テストでは、Mate 10 Proが最速という結果に。
Mate 10シリーズの端末の完成度は、極めて高い
世界シェア第3位として、上位のサムスンとアップルとの対決を意識した「Mate 10シリーズ」。発表会後のハンズオンコーナーで実際に触ってみると、そういった背景を抜きにしても、ハイエンドモデルとしてよくまとまった製品に仕上がっていると感じた。
特にデザイン面は、前モデルでは金属だった背面素材をガラスに変更。縁に向かって丸みを帯びた加工と多層処理のガラスにより高級感がある。また背面カメラレンズ周辺にストライプが入ってアクセントとなっているのも◎。スポーツカーをイメージしてデザインされているが、前モデルの「Mate 9」と比べてかなり垢抜けた印象だ。
狭額縁の「FullView Display」もサイズのコンパクト化に大きく貢献しており、大画面ながら持ちやすい(ただ、個人的には「Mate 10」の16:9ディスプレーのほうがいわゆる大画面を体感できて好みだ)。画面は縦長ではあるものの、本体背面の指紋認証センサーはカメラレンズの下に配置されており、普通に握った状態で人差し指が無理なく届く。これは発表会でもGalaxy Note 8にはない利点だと強調していた。
価格も相当にライバルを意識した設定で、「Mate 10」は699ユーロ(約9万2600円)からで、日本でも発売予定の「Mate 10 Pro」は799ユーロから。「iPhone X」は欧州で759ユーロから799ユーロなのでほぼ同額、「Galaxy Note 8」は999ユーロなので、200ユーロほど安い計算。「iPhone X」は出荷量がかなり少なくなるという情報もあり、プロモーションなどユーザーへのアプローチの仕方次第では、上位2メーカーとの差をさらに詰める起爆剤となるモデルになりそうだ。
(文、写真・中山智)