ニューヨーク発のコワーキングスペースで2018年2月に日本でサービスを開始する「WeWork(ウィーワーク)Japan」のクリス・ヒルCEOは、すでに拠点として公表している六本木、銀座、新橋以外に国内で8カ所が候補地として上がっていることを明らかにした。Business Insider Japanが東京都内で開催したイベントで語った。
公表済みの3拠点は4000社超から問い合わせが殺到しており、六本木についてはすでに会員数の7割が埋まっている状況。「ハロウィンまでにはすべて埋めたい」と、月内の契約完売の見通しを示した。すでに公表している3拠点以外も、2018年度以降、続々開業していきたいという。
「もっと燃料を投下しなくては」と、孫正義氏は言った。
撮影:今村拓馬
すでに利用が決まっている企業について「社名は控える」としながらも、半数は大企業で、もう半分はベンチャーなど小規模企業だと説明。共同出資者であるソフトバンクの1000数百社を超える取引先にも、営業を拡大していく考えを示した。
月内にも日本の経営陣がそろう見通しで、「米フォーチュン誌が選ぶ世界企業番付『Fortune Global 500』に選ばれるような企業からもメンバーを迎えることになる」と、述べた。「自分以外は日本人だ」という。
WeWorkで働く従業員についても、95%程度は日本人を採用する意向だ。
きっかけは孫正義氏とのディナー
「マサさんから、もっと燃料を投下するためには日本に来なくてはならない、と言われたんだ」
WeWork本社CEOのアダム・ニューマン氏が、インド政府主催の会食でソフトバンク会長の孫正義氏と出会ったことが、日本進出のきっかけとなったことも、ヒル氏は明らかにした。
「アダムはディナーの席で『人の生き方や働き方はこれからどんどん変わっていくし、変わるべきだ』とマサさんに熱弁し、2人は意気投合した。WeWorkが7年間でいかに成長したかを話したところ、マサさんに『それではまだ遅い。もっと燃料が必要。すぐに日本でビジネスを始めるべき』と勧められたのです」
そうして、WeWorkとソフトバンクはパートナーシップ協定を結び、WeWork日本法人に対し50:50の出資を決めたという。
ミレニアルから変わる価値観
WeWorkがメーンターゲットとして注目するのはミレニアル(1980年以降生まれ)世代だ。
ヒル氏は「2020年にはミレニアル世代が、全世界の労働人口の50%になる。ミレニアルは体験を重視する。さまざまな経験、多くの人との出会い、文化交流、旅行を大切にし、たくさんの人と出会うことに重きを置いている」と、この世代の特徴を指摘する。
「これは世界中で起きていること。世界でミレニアルのための場所を提供したい」と、熱意を込めた。
働き方改革が盛り上がる今の日本については「日本は今、ティッピングポイント(転換点)にある。このタイミングでサービス開始できることがこの上なく刺激的だ」とした。
「月に数百時間働きたい、一つの職場で働きたい人は今の時代、減っている。現代の人たちはしばられたくないという意識が強い。そうした層に向け、人生全体を包括した働く場を提供したい」
WeWorkは10月2日時点で、アメリカを中心に世界18カ国56都市、172拠点で展開する。企業価値は200億ドル(2.2兆円)とも言われ、アメリカを代表するユニコーン企業としても名高い。
(文・滝川麻衣子、木許はるみ、分部麻里、写真・今村拓馬)