日本株の勢いは年明けまで続くか —— 世界同時景気回復で強まる日本買い

ダウ平均、ナスダック総合指数、S&P500のアメリカ主要株価指数が史上最高値をつければ、日経平均は10月20日までの14営業日連続で値を上げ、株式市場は1980年代の日本のバブル期を思わせる勢いを見せている。「トランプ・ラリー(株価上昇)」に始まった2017年だが、今のマーケットのモメンタム(勢い)は多くの株式ストラテジストやエコノミストの不意をつくほどだ。

アメリカでは、S&P500が年初に予想された最高値を上回り、投資戦略を練るストラテジストたちは修正を余儀なくされ、予想を引き上げている。日本でも9月以降、日本株に対する見方を「ニュートラル(中立)」から「強気」に変えるストラテジストが目立つ。

クレディ・スイス

クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部の松本聡一郎・最高投資責任者は、「世界同時景気回復」を強調する。

REUTERS/Arnd Wiegmann

そして、市場からは「世界同時景気回復」という言葉が聞こえてきた。アメリカ経済の勢いに加えて、ヨーロッパや日本の成長が新興国経済をも後押ししているというのだ。この「世界同時景気回復」を唱えるのは、クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部の松本聡一郎・最高投資責任者(ジャパンCIO)。

儲かるようになった日本企業の次の一手

工業分野に強い多くの日本企業の業績は、欧米やエマージングマーケット(新興国経済)経済との連動性が高い。海外の投資家は、欧米に比べて割安で、年初からの上昇トレンドに乗り遅れた日本株に対して注目するようになってきた。

この世界景気は、年明けくらいまでは崩れないだろうと考えています。日本株が今後さらに注目されるには、企業が資金をいかに使うかが大きなテーマとしてあると思うのです」

と松本氏はBusiness Insider Japanの取材に答えた。言い換えれば、儲かるようになった日本企業が、積み上げた余剰資金をどれだけ設備投資や自社株買い、配当などに回せるかが投資判断の要素の一つになるのだという。

(自社株買い:自社株を買い入れて消却することで、利益の絶対額が変わらなくても一株あたりの資産価値や自己資本利益率(Return on Equity=ROE)が向上する:野村証券より)

「日本株のセクター投資戦略では、インダストリアル(工業)や情報技術(IT)、素材セクターがアウトパフォーム(Outperform:他のセクターや銘柄などをしのぐ)しています」

と松本氏は続けた。

強いロボット株

人型ロボット

ロボットの受注台数は4月〜6月期、前年同期から49%増え56,795台で、四半期ベースでは過去最高を記録した。

REUTERS/Issei Kato

例えば、産業用ロボットを牽引する国内の代表的な企業の株価は、年初から著しく上昇した。キーエンス株は50%伸びファナック25%安川電機2倍以上に高騰した。日経平均の伸び幅の9.5%をいずれも大きく上回る。

ロボットの受注台数は4月〜6月期、前年同期から49%増え5万6795台で、四半期ベースでは過去最高を記録している。日本ロボット工業会のデータによると、同四半期の受注額は42%増加し2049億円となり、初めて2000億円を突破した。

国内需要の増加と中国のオートメーションに対する強い投資意欲に加えて、アメリカの景気拡大とトランプ政権による「製造業回帰」を促す経済政策が産業用ロボットの需要を押し上げていると、日本ロボット工業会は説明する。2017年の生産額は、対前年比7%増の7500億円に達する見込みだという。実現すれば当然、過去最高値となる。

10年、20年続いた思考からの脱却

「直近のデータを見ても、日本経済が決して弱くないことは明らかです。劇的な変化が起こりにくい日本だけれども、10年、20年続いた失われた時代の思考から脱却しないといけないですね。業績の良い日本企業が株主との対話を通じて、企業価値をさらに高める努力ができれば、投資家たちの日本企業への投資意欲は増してくると思います」と松本氏。

日本銀行

4月〜6月期の需給ギャップはプラス1.22%で、2008年の第1四半期以来の高い数値だ。

REUTERS/Toru Hanai

日銀は10月4日、4月〜6月期の需給ギャップを発表した。需要が供給を上回ればプラスで、下回るとマイナスとなり、物価の変動を見通す指標の一つだ。同四半期はプラス1.22%で、3四半期連続でプラスとなった。プラス1.47%をつけた2008年の第1四半期以来の高い数値だ。

アメリカの景気の先行指標で知られるISM製造業景況指数は9月、2004年5月以来の最高レベルである60.8に上昇。この指数は、供給管理協会(ISM=Institute for Supply Management)が製造業300以上の企業の仕入れ担当役員を対象に行うアンケート調査を元に発表される。ヨーロッパのデータもユーロ圏の経済の底堅さを示した。購買担当者景気指数(PMI=Purchasing Managers' Index)は10月初め、年初来の高水準まで回復している。

隠れた「宝石」はさらに輝きを増すか

松本氏が「日本の小型株は隠れた宝石」と題する投資レポートの中で注目しているのが、2000年以降継続して好調なパフォーマンスを上げてきた小型株(中小企業)だ。

例えば、自動車部品会社の売り上げの半分以上は現在、系列グループ外の自動車メーカーから得られている。系列の供給会社グループを超えた苛烈な競争に生き残った一部の小型企業は、大手メーカーの下請け業者の立場から、主要部品や素材の提供会社となったと、松本氏は強調する。「2000年以降、小型株指数が優れたパフォーマンスをあげている理由の一つ」と話す。

東京湾と富士山

松本氏は、2000年以降継続して好調なパフォーマンスを上げてきた小型株(中小企業)に注目する。

REUTERS/Toru Hanai

「1990年代の半ばに起きた金融危機から、中小企業の多くは選択と集中を徹底的にやってきました。小型株(中小企業)で構成されるTopix小型株のパフォーマンスは15年以上の間、大企業(大型株)で構成されるTopixコア30を上回っています」と松本氏。

2017年、年初から大きく値を上げる小型株の中でも、石川県・金沢市に本社を置く澁谷工業は、清涼飲料水やビール、ミネラルウォーターなどのボトリングシステムを製造している。創業1931年の同社の株価は、年初から61%上昇。機会・自動車部品メーカーのツバキ・ナカシマ(本社:奈良県)は36%アップした。1967年に高知で創業した技研製作所は、産業機械の販売を国内外で行うが、株価は74%上がった

10月20日金曜日、アメリカの主要3株価指数は終値ベースで過去最高値を更新した。上院で予算決議案が可決されると、市場ではトランプ政権の税制改革への期待がさらに高まった。国内では今週(10月23日〜29日)から11月上旬にかけて、企業の中間決算が発表されるが、日本株の上昇モメンタムにさらなる勢いを与えるトリガーとなるのか、市場が特に注視する決算発表になりそうだ。

(文・佐藤茂)

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