J.P.モルガンは社内にスタートアップを「居住」させる —— アジアで2018年から拡大

アメリカ最大の銀行J.P.モルガン・チェースは2018年、外部の有望なベンチャー企業を社内に招き入れて、次世代のフィンテック(フィナンシャル・テクノロジー)の開発をサポートする「In-Residence(イン・レジデンス)」プログラムをアジアで本格的に始める。

JPモルガン・チェース

J.P.モルガンは、年間約95億ドル(約1兆円)をテクノロジー関連に費やし、そのうちの30億ドル程度はベンチャー企業への出資を含む新規の投資に使う。

REUTERS/Mike Segar

「イン・レジデンス(ある一定期間居住するという意味)」は、J.P.モルガンが昨年にニューヨークとロンドンのオフィスで始めた取り組みで、選ばれたベンチャー企業が6カ月〜18カ月の間、J.P.モルガンの「レジデンツ(住居人)」として、ブロックチェーンやロボティクス、ビッグデータ分析などのアイデアを有効な製品・サービスに作り上げるというもの。

レジデンツに選ばれると、ベンチャー企業はJ.P.モルガンのオフィスで、必要に応じて社内のリソースにアクセスでき、実践で働く金融マンたちと共に実用的なフィンテックの開発を行うことができる。J.P.モルガンは現在、香港オフィスでもこの取り組みができるよう準備を進めている。今後は中国やインド、日本、韓国などのアジア太平洋地域のベンチャー企業の参加を促していく。

J.P.モルガンのコーポレート・アンド・インベストメントバンキング部で最高総務責任者(チーフ・アドミニストレイティブ・オフィサー)を務めるサノーク・ヴィスワナサン氏がBusiness Insider Japanの取材で明らかにした。「居住期間」を終えても、J.P.モルガンは必要に応じてプログラムに参加したベンチャー企業(レジデンツ)の支援を行っていくという。

1兆円をテクノロジーに使う

世界で社員24万3000人を抱えるJ.P.モルガン。開発者と技術者は併せて合計約4万人。年間約95億ドル(約1兆円)をテクノロジー関連に費やし、そのうちの30億ドル程度はベンチャー企業への出資を含む新規の投資にあてている。「イン・レジデンス」は、同社が推し進める次世代の革命的な技術開発を進める施策の一環だ。

サノーク・ヴィスワナサン

「今我々は第3の金融テクノロジーのフェーズにいる」と語るサノーク・ヴィスワナサン氏。

Business Insider Japan

「今我々は第3の金融テクノロジーのフェーズにいます。第1のフェーズは1980年代で、その頃にブルームバーグ(金融情報・データを配信する米企業)などが生まれた。第2のフェーズは1990年後半のインターネット・バブル(アメリカでは『ドットコム・バブル』で知られる)です」

とヴィスワナサン氏は語る。

「第3のフェーズの中で、イン・レジデンス・プログラムは、知識やアイデアを新たなプロダクトに変えるために作られました」

現在までに、475のスタートアップ企業が、イン・レジデンス・プログラムに応募している。そのうち60社が最終選考に残り、わずか6社がレジデンツに選ばれた。今後、新たに10社のベンチャー企業がイン・レジデンス・プログラムを始めるという。

日本のロボット、ブロックチェーン、仮想通貨

ヴィスワナサン氏は、「アジアのフィンテックの開発企業は増加しており、開発スピードも増していると」とした上で、「中国企業は金融とITを駆使したサービスを拡大している」と強調し、アリババやテンセントを例にあげた。「日本は、ロボットと仮想通貨においてリードしている」と述べ、国内のメガバンク3行が中心となって進めるブロックチェーン技術を利用した送金サービスの実証実験は画期的な取り組みだと話した。

みずほフィナンシャル、三井住友フィナンシャル、三菱UFJフィナンシャルは10月、富士通と共同でブロックチェーンを利用した個人間送金サービスの実証実験を2018年1月から行うと発表。メガバンク3行が共通して利用できる個人間送金のためのクラウド上のブロックチェーン基盤と、送金や入出金の手続きを簡単に行えるスマホ用アプリを開発するという。

フィンテック・ベンチャーへの投資・買収を拡大しているJ.P.モルガンは現在、注目する8つの「Emerging Technologies(新たなテクノロジー)」分野をあげている。

  1. UX(ユーザー・エクスペリエンス)
  2. Data Science(データ・サイエンス)
  3. Cyber(サイバーセキュリティー)
  4. Robotics(ロボティクス)
  5. Big Data(ビッグデータ)
  6. Messaging(チャットなどのメッセージ)
  7. Cloud(クラウド)
  8. Blockchain(ブロックチェーン)

ヴィスワナサン氏は言う。

「これまで銀行のライバルは銀行だったが、今では多くのインターネット企業が金融サービスに乗り出してきている。我々銀行は新たなフィンテック企業とパートナーシップを組むことで、今まで提供してきたサービス以上のサービスを提供することができるようになる」

(文・佐藤茂、取材協力・野中利紗)

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