ウォルマートの買物客。
Joe Raedle/Getty
- ウォルマートとアマゾンは、ネット通販で低所得者層をその狙いに定め始めた。
- 1ドル・ショップの爆発的な成功は、低所得者層向けのマーケティングが結果につながることを証明した。
- 現時点では、大手小売業者は主に富裕層をそのECのターゲットとしてきたが、市場は飽和状態になりつつある。
大手小売業者はこれまで、アメリカの富裕層をターゲットにネット通販を展開してきた。しかし今、アマゾンやウォルマートといった企業は、貧困層を取り込もうとしている。
米国農務省は今年1月、SNAP(補助的栄養支援プログラム、通称「フードスタンプ」)の対象者による、食料品のオンライン購入を許可するパイロット事業に、ウォルマートやアマゾンを含む複数の小売業者が参加すると発表した。
「インターネットは、地方の買い物難民にとって、大きな希望となるだろう」と、Axiosはこのパイロット事業について書いている。
ウォルマートやアマゾンといったECの主要プレーヤーはこれまで、比較的裕福なアメリカ人をそのターゲットとしてきた。オンラインでは買い物客はより経済的に恵まれている傾向が強く、その55%は年間の世帯収入が7万5000ドル(約850万円)以上だ。
1ドル・ショップは「おしゃれ」ではないが、盛況だ。
Brian Killian/Getty Images for Procter & Gamble
2015年のAmazonプライム会員の平均世帯年収は6万9300ドル(約790万円)と、アメリカ全体の平均世帯年収に比べ、約1万5000ドル(約170万円)高い。ウォルマートもネット通販事業では、女性向けのModCloth(モドクロス)や男性向けのBonobos(ボノボス)といった、通常の商品に比べより流行を追った、より高価なブランドを中心に展開している。
しかし小売業者は今、その反対、つまり低所得者層をターゲットにしたビジネスにもチャンスがあることに気付き始めた。
シアーズやメイシーズといった百貨店が苦戦を強いられる中、1ドル・ショップやその他のディスカウント・ストアは大成功している。アメリカでは2010年から2015年で、1ドル・ショップの売り上げは304億ドル(約3兆4600億円)から453億ドル(約5兆1600億円)に増えている。Gordon Haskettが約500世帯を対象に行った調査によると、9月には、1ドル・ショップやディスカウント・ストアでの購入は、他の業態に比べ最も多かった。
1ドル・ショップの成功のカギは、より所得の低い世帯に、必要なものを、他に選択肢がない時に提供する能力に長けていたことだ。
「本質的に1ドル・ショップは、アメリカに永続的な底辺層が存在する未来に、大々的な勝負をかけている」不動産会社クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(Cushman & Wakefield)のリテール調査部門の責任者、ガリック・ブラウン(Garrick Brown)氏はブルームバーグの取材に、こう答えている。「これは、雇用を失えば二度と戻ってこず、そうすれば何事も良い方向には向かわないというコンセプトに基づいている」
そして今、ウォルマートとアマゾンはこの「永続的な底辺層」をオンラインで獲得しようと動いている。
富裕層の顧客をめぐる戦いは、競争が激しさを増しており、飽和状態になりつつある。 パイパー・ジャフレー(Piper Jaffray)は2016年、世帯年収が11万2000ドル(約1300万円)以上の世帯の約75%が、アマゾンのプライム会員だと推定している。一方で、世帯年収が2万1000ドル(約240万円)~4万1000ドル(約470万円)のパイパー・ジャフレーが設定した最も世帯年収が低い世帯層では、プライム会員の割合は50%以下だ。
SNAPのパイロット事業やアマゾンの低所得者向けプライム会員サービスは、これを変えようとしている。1ドル・ショップは、低所得者層の顧客向けのマーケティングが利益を上げることを証明した。そして今、大手小売業者たちはこの理論をECに適用しようとしている。
(翻訳:編集部)