戦争、肥満、喫煙、栄養不良…… 環境汚染はもっと多くの死亡者を出していた!

マスクを着用する警察官

深刻な大気汚染から身を守るため、マスクを着用する警察官。

Thomson Reuters

  • 2015年、900万人が環境汚染に関連する病気によって早期死亡した。これは全世界の死亡者数の16%にあたる。
  • 環境汚染関連の死は、そのほぼ全てが貧しい発展途上国で起こっている。
  • これは金額に換算すると、年間約4兆6000億ドル(約522兆9930億円)の損失にあたる。

汚染された空気、水、土、職場環境が原因で死亡する人の割合は、驚くほど高い。これらの影響を調査した研究者によると、環境汚染は今や世界の死因のトップクラスで、6人に1人が環境汚染によって死亡している。

環境汚染は喫煙よりも致命的だ。その死亡者数は年間900万人。これは世界の戦争・暴力による死亡者数の約15倍、エイズ・マラリア・結核による死亡者数の3倍にあたる。汚染と健康に関するランセット委員会(The Lancet Commission on Pollution and Health)が10月19日(現地時間)に発表した。

大気汚染による被害が圧倒的だが、世界中の汚染水や汚物、不衛生な労働条件も含めた環境汚染全体で見れば、世界の死因第1位とされる心疾患よりも、危険であることが明らかになった。

統計:世界の推定死亡者数とその危険因子及び原因

世界の推定死亡者数(縦)とその危険因子及び原因(横)をまとめたグラフ。後者は左から、環境汚染全体、喫煙、エイズ・マラリア・結核、アルコールの摂取、栄養不良、交通事故、薬物の使用、戦争及び殺人、エボラ出血熱。

The Lancet

「これまで、あらゆる形の汚染に起因する疾病や死亡について、その情報が1つにまとめられたことはなかった」報告書を書いたフィリップ・ランドリガン博士(Dr. Philip Landrigan)は医学雑誌『ランセット』に語った。同氏は、数十年にわたって、子どもの健康に対する汚染の影響を研究しているが、汚染の危険性はその情報が別々の統計データに混ざっているため、人々から注目されないことが多いという。

報告書の著者たちは、今回新たに出された汚染全体の死亡者数は、主に大気汚染(温室効果ガスの主な原因)による気候変動と「密接に」関連していると述べている。あらゆる燃料の燃焼が「浮遊粒子状物質による汚染の85%と、硫黄と窒素の酸化物による汚染のほぼ全ての原因となっている」と彼らは指摘する。

化石燃料や発展途上国などで使われる非効率的な調理用コンロ、焼畑農業も、全て大気汚染につながる。ただ、低所得・中所得の国々が貧困から抜け出すにつれ、煙の出る調理用コンロや衛生的でない飲料水などの汚染率が低下していることは、朗報と言えよう。

しかし報告書によると、よりクリーンなエネルギーが導入されない限り、多くの場所で汚染による致命的な被害は拡大する一方だ。高所得の国々が大量の化石燃料を使い続け、低・中所得の国々が急速な発展を遂げれば、世界の大気汚染問題は悪化する。世界の温室効果ガスの75%を排出する都市部では、特に致命的だ。都市部の住人の90%近くが、世界保健機関(WHO)が定める大気環境基準を満たさない空気を吸っているという。

国の発展には、鉱業の拡大、森林の減少、殺虫剤の使用増加、電力需要の増加、ガソリン車の増加がつきものだ。どれもコストだと報告書の筆者らは言う。彼らが「不健全で持続不可能な発展」と呼ぶこのような発展は、人々の病と死を促し、GDPに換算して世界経済の年間2%を奪う、生産性の損失だ。

だが、必ずしもそうした道をたどる必要はない。アメリカでは、大気汚染の割合は環境保護庁(EPA)が設立された1970年以来、70%以上低下している。その一方で、GDPは飛躍的に上昇した

報告書の筆者らは、発展途上国が固定電話やダイアルアップ接続を飛び越えて、携帯電話やブロードバンドを使い始めたように、多くの国がスモッグを大量発生させるような産業化ではなく、太陽光発電や風力発電のような再生可能エネルギーを使った発展ができるはずだと主張する。

そうでなければ、大気汚染による死亡者数は2050年までに50%以上増加し、統計の数字は悪化の一途をたどるだろう。

[原文:Pollution is killing more people than wars, obesity, smoking, and malnutrition]

(翻訳:Ito Yasuko)

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