下町のロボットベンチャーMUJINが中国EC大手JDの大型倉庫を自動化する

工場で使われる産業用ロボットに「知能」を与えるベンチャー企業のMUJINは、中国インターネット通販大手のJD.com(京東商城)に18台のロボットを納入し、JDが上海で建設を進める大型倉庫の完全自動化をサポートする。MUJINはJDが計画する他の案件でも現在、協議を進めている。今後、産業用ロボットの需要が増す中国における販売を拡大していく。

上海

上海の完全自動化・大型倉庫の話が舞い込んできたのは2017年4月。JDの本社から数名の幹部がMUJINのオフィスを訪れた。

REUTERS

JDは、携帯電話などを扱う上海の大型倉庫で、荷の入荷、仕分け、梱包の作業をMUJINが納入するロボットで完全自動化し、2018年2月頃のフル稼働を目指すという。MUJIN共同創業者・CEOの滝野一征氏がBusiness Insider Japanの取材で明らかにした。

ロボットに教えることなく自律制御させる動作計画(モーション・プランニング)と呼ばれる技術を軸に、MUJINは産業用ロボットの脳にあたるコントローラーを開発、販売する。メーカーが製造するロボットとMUJINのコントローラーを組み合わせることで、ロボットをより知能化できる。バラ積みピッキングや箱詰め、組立て作業は、複数の動作が必要となるため自動化は困難とされてきたが、MUJINのコントローラーはこれらの作業の自動化を可能にする。

中国の倉庫建設ラッシュ

MUJINの滝野一征・CEO

中国の倉庫建設ラッシュが続き、ロボットの引き合いは強いと話す、MUJIN共同創業者・CEOの滝野氏。

Business Insider Japan

上海の完全自動化・大型倉庫の話が舞い込んできたのは、今年2017年4月。JDの北京本社から数名の幹部が、東京・墨田区の東京スカイツリーに近いMUJINのオフィスに訪れた。

約3カ月の交渉の末、滝野氏は7月にJDとの契約を締結。コントローラーだけを販売するのではなく、MUJINは今回、入荷から仕分け、梱包に至るまでに必要なロボット・ソリューションを納入した。

「7カ月に1箇所のペースで、中国では新たな倉庫が建設されている。建設ラッシュはしばらく続くだろう。物流が速いスピードで増える中国は、それを受け入れる倉庫を急ピッチで建てなければならない」と滝野氏は話す。

「中国企業の決断は、日本では考えられないほど速い。短い協議を終えて、契約にサインするとすぐに準備に取りかかった」

(動画:中国の動画サイトに投稿されたJD.comの上海・完全自動化倉庫)

JDが完全自動化倉庫の建設を進める背景には、中国最大のインターネットショッピングモール「Tmall(天猫)」を運営するアリババ・グループとのし烈な競争がある。JDは自動運転トラックやドローン、顔認識などの新たなテクノロジーを導入することにも積極的だ。

「一代で築き上げた中国の大企業の経営者は、大きなリスクを取り、競争に勝ち抜いてきた。彼らの早い決断と行動力は、日本の高度経済成長期の企業経営者に似ているのではないだろうか」(滝野氏)

MUJINのオフィス内

MUJINのオフィスで働くエンジニア達とその横に並ぶロボットアーム。

Business Insider Japan

2011年創業のMUJINは今年5月、本社を東京・本郷から墨田区に移転した。社員数は40人を超え、フロアスペースは以前のオフィスの3倍の広さを確保した。

アメリカ、中国、日本、ウクライナと、多様な出身地・国籍のトップエンジニアが働いている。これまでに、日産自動車やホンダ、日産、日立、キヤノンなどの大手企業がMUJINのコントローラーを納入してきた。

MUJINのテクノロジー部門は、ブルガリア出身の米国籍、カーネギーメロン大学で博士号を取得したCTOのロセン・デアンコウ(Rosen Diankov)氏が牽引する。ロボットの天才集団として知られる米ウィロー・ガレージ(Willow Garage)にも所属していたデアンコウ氏は、モーション・プランニングの権威として知られている人物だ。

MUJINは2016年、アスクルと物流センターへのロボット導入を目的とした業務提携に合意し、ピッキング工程のロボット化にかかる技術開発に取り組んだ。ロボットをティーチレス(教えることなく)で、かつ自律的に動作することで、物流センターのピッキング工程のロボット化を進めている。

滝野氏は、こう話す。

「倉庫の自動化を図りたいとする中国企業からの相談は増えてきた。巨大な人口と増加する物流量を抱える中国の事情と、人口減少で労働者不足の問題が起きる日本の事情は対照的だ。しかし、それぞれの国で、倉庫や物流センターにおけるロボットの導入機会の増加は、今後期待できるのではないだろうか」

(文・佐藤茂)

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