次にアマゾンが手中に収めるのは、金融街なのかもしれない —— マッキンゼー報告

ジェフ・べゾス氏

ジェフ・べゾス氏。

David Ryder/Getty

  • マッキンゼーは最新レポートの中で、アメリカの金融街(ウォールストリート)の銀行は、アマゾンやアリババ、楽天といったいわゆるプラットフォーム企業の脅威にさらされていると指摘した。
  • これらプラットフォーム企業は、大規模融資の「フロントエンド」になる可能性があり、大きな利益を生み出すだろう。
  • 最悪の場合、リターンは2008年の金融危機と同程度になる可能性がある。

アマゾンが次に手中に収める業界は、アメリカの金融街・ウォールストリートなのかもしれない。これはコンサルティング企業マッキンゼーが公表した、52ページにわたる世界の銀行業界に関する年次レポートの指摘だ。同レポートは、デジタル・プレイヤーの脅威が増す中、バンキング・ビジネスの中でも銀行は最も魅力のないビジネスとして置き去りにされる可能性があると警告する。

マッキンゼーのレポートはこう述べている。

「金利が回復し、追い風が吹けば、業界のROE(自己資本利益率)は2025年に9.3%に達する可能性がある。しかし、リテールやコーポレートの顧客が、人々がこれまで新しいテクノロジーに適応してきたように、銀行取引をデジタル企業に移せば、そのROEは(何の緩和策も取らなければ)2025年までに5.2%となるだろう」

つまり最悪の場合、リターンは2008年の金融危機と同程度になる可能性がある。違いは、その背景が金融危機ではなく、競合ということだ。

明確にすべきは、マッキンゼーが言うデジタル企業は、ここ2、3年で大きな注目を集めているフィンテックのスタートアップではない。アマゾンやアリババ、楽天といったいわゆるプラットフォーム企業だ。

これこそが真の脅威だと、マッキンゼーは指摘する。

2025年までのROEの見通し

2025年までのROEの見通し。2つのシナリオの間には、約4%の開きがある。

McKinsey

「2015年にも我々はプラットフォーム企業のプレゼンスについて言及していたが、(当時は)フィンテックがデジタル最大の脅威になると考えていた」マッキンゼーは言う。「銀行はフィンテックの動きの多くを受け流し、様々なケースで彼らと協力できるだろうと見る一方で、プラットフォーム企業はその強敵として現れるだろうと見ていた」

同レポートは、経営コンサルティングの用語であふれていて、「デジタル・パイオニア」が「多用な業界のバリューチェーンに秩序」をもたらすとある。しかし本質的には、これは顧客との関係について語っている。

今やプラットフォーム企業は、顧客と最も強固な関係を持っている。レポートでは、日本最大のオンライン・マーケットプレイス楽天市場がその一例として挙げられている。

  • 数十万のバーチャル/リアル店舗で使えるポイントや電子マネーを顧客に提供。
  • 会員に何千ものクレジットカードを発行。
  • 住宅ローンから証券仲介まで、様々な金融商品・サービスを提供。
  • 日本有数の大手オンライン旅行ポータルを運営。
  • 楽天のインスタント・メッセージングアプリViber(バイバー)は、全世界に8億人以上のユーザーを持つ。

どうやって銀行が戦えるというのだろうか?

アメリカでは、ミレニアルにとってアマゾンは生活に欠かすことのできないアプリであり、ミレニアルの73%が銀行よりも、グーグルやアマゾン、ペイパル(PayPal)、スクエア(Square)から新しい金融サービスが提供されればいいと考えている。そして十分な理由もある。アマゾンのアプリの使いやすさを考えてもらいたい。銀行のアプリとどちらが使いやすいかは明らかだろう。

マッキンゼーの国際銀行分野の責任者アシート・メータ(Asheet Mehta)氏はBusiness Insiderに対し、アマゾンの株取引はその成長に基づくもので、常に次の市場を開拓し続ける必要があると言う。金融サービスは大きな収益源で、アマゾンはすでに中小企業(SME)向けの貸し付けやファクタリングに参入している。

マッキンゼーは、アマゾンが金融商品を組成したり、銀行預金を始めると言っているわけではない。だが、アマゾンには一定の金融商品を流通させられるだけの潜在能力があるということだ。あるバンカーはマッキンゼーに語った。

「将来、私の子どもたちに『銀行はどこを使っているの? 』と聞いたら、彼らがHSBCだけど、実際はアマゾンのフロントエンドを使っているよなどと答える日が来るかもしれない。これが我々が直面するかもしれない可能性だ」

伝統的な金融業にとっては、フロントエンドこそがその始まりであり、銀行の収益の65%を生み出す最も収益性の高い分野だ。

同レポートは指摘する(太字の強調部分はBusiness Insiderが加えたもの)。

「プラットフォーム企業によって、国際的な銀行業務がさらされている脅威の価値を、下の図(Exhibit 9)のように2つに分けて計算した結果、金融のコアビジネスである"製造(manufacturing)"サイドは、業界の売り上げの53%、収益にして35%、ROE 4.4%を生み出している。一方の"流通(distribution)"サイド —— 銀行のセールスサイドの始まり —— は、売り上げの47%、収益の65%、ROE 20%を生み出している。プラットフォーム企業がその触手を銀行業に伸ばすのは、彼らがターゲットとしている流通サイドのビジネスが大きなリターンをもたらすからだ。そして多くの場合、こうした企業は銀行よりも優位なポジションを得ている。

2016年のグローバル・バンキングの売り上げと収益を事業内容ごとにまとめたもの

2016年のグローバル・バンキングの売り上げと収益を事業内容ごとにまとめたもの。赤字は"製造"サイド、青字は"流通"サイド。

McKinsey

では銀行のCEOはどうしたらいいのだろうか? マッキンゼーはいくつかの選択肢を提示する。

エコシステム・ルート

「世界の銀行は、顧客の信用情報やデータをフルに使って、特色ある、徹底した顧客体験を提供し始めている」とマッキンゼーは言う。

これは何を意味するのか? 不動産物件のリスト付きのウェブサイトや価格比較ツール、住宅ローン計算、引っ越しに伴う携帯電話の支払い変更ツールを持った住宅ローンの貸し手を想像してもらいたい。

ホワイトレーベル・アプローチ

一部の銀行にとっては、プラットフォーム企業と提携し、金融商品の組成に集中し、流通を他社に任せるのも理にかなった選択肢と言えよう。

「今日、多くの銀行はこの選択肢を検討している」マッキンゼーは言う。「ただ、価格が問題だ。もし銀行が顧客との関係を考えずに済むなら、リターンを生み出すのに十分なより高い価格を付けることができるだろうか? 答えはイエスだ」

専門性を高める

特定の商品や市場セグメントに特化するという選択肢もある。

[原文:Wall Street could be next to get Amazon'd (AMZN)

(翻訳:編集部)

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