がん保険には加入するべき?——備えは保険か貯蓄か、あなたはどちら派?

日本では2人に1人が罹患するといわれる「がん」。

死因の第1位、確率でいうと3人中1人ががんで亡くなっています。著名人の訃報ニュースも続けば、誰しも気になる病でしょう。

病院イメージ

日本人の死因第1位のがん。3人に1人ががんで亡くなっている。(写真はイメージ)

Andrei_R / Shutterstock

死因1位と聞いて、がんに保障を特化させた「がん保険」に入るべきかどうか、と悩んでいる人、多いのでは。がん保険に加入した方がいいのか、加入の必要はないのか。一緒に考えてみましょう。

患者の中には、「がんになって400万円くらいかかった」「600万円以上の支出があり、まだかかりそう」という声もあれば、「がん保険で儲かった。治ってうれしくなって外車を買った」「数十万円で済んだ。貯蓄でまかなえた」——これらの声は、すべて私が聞いた事実です。

がんになって、多額のお金がかかった人も、それほどかからなかった人も両方いるというが現実です。

厚生労働省の「医療給付費実態調査」(平成27年度の報告書)には、悪性新生物による「推計1入院当たり医療費」とその「推計平均在院日数」があります。

※医療費は健康保険が適用される治療に限られたもので10割分です。3割負担で済む場合でも、残り7割分まで合わせた金額。ひと月にかかる医療費負担の上限を決めた「高額療養費制度」の適用もされていません。

悪性新生物に関するデータ

「0〜14歳」は金額的にも入院日数も数値が高いですが、多くの自治体で差はあるものの、乳幼児医療費助成制度があるため、大きな負担にはなりにくい。他の年代をみても、100万円ほどかかっても、実際は3割負担で約30万円。高額療養費制度が使えれば、さらに負担は落とせます。

実際、高額を要した人からは入院以外の負担が大きかったとの声を聞きます。

抗がん剤治療で長く通院したとか、病院が遠くて交通費や宿泊費がかかったとか、民間の健康療法まで、さまざまです。加えて、健康保険が適用になる治療かどうかでも負担に差は出ます。

つまり、単に「がんの治療にかかるお金」といっても、一概には語れないということです。がんの種類はさまざまで、治療方法や生存率も大きく変わります。治療方法も医師によって意見が分かれるほど、その判断が難しい場合もあります。さらには、見つかるタイミング(進行度)や再発の有無でも大きく変わるでしょう。

保険イメージ

加入の是非を検討する際、「どこまで負担(保険料)を払っても備えたいと思うか」がポイントとなる。

Nong Mars / Shutterstock

こうした中で、加入の是非をどう検討したらいいのでしょうか。

加入を考える際のポイントは、どこまで負担(保険料)を払っても備えたいと思うかだと思います。

家族を養っている年代か、高齢期かによっても、その判断は変わってきます。

答えを先に言ってしまうと、最終的には個人の価値観によるのだと思います。

「なーんだ」と思われるかもしれません。

でも、いくつか考えるヒントはあります。

例えば、健康保険が適用になる治療だけでいいとすれば、あえてがん保険は必要ないかもしれません。しかし、万が一がんにかかった時に、お金のことをできるだけ気にせずに治療に専念したいと思えば、加入もアリでしょう。

あるいは、若いうちはお金を掛けても保険適用外の治療も含めてあらゆる治療の可能性を試したい、でも高齢期であればそこまでしなくてもいい、という考え方であれば、保障期間を若い間に特化させて保険料を抑えることもできます。

保険料水準は、確率が高いほど、保障が厚いほど、保障される期間が長いほど、高くなるものです。

がん死亡率のグラフ

年齢階級別のがん死亡率のグラフ。男女ともおおよそ60歳代から増加し、高齢になるほど高い。

国立がん研究センターがん情報サービスウェブサイト(http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html)より

具体的な商品候補をみつけ、最終的な判断に迷ったら、がん保険に加入した場合に想定できる3つの場面を考えると、頭の中を整理するのに役立ちます。3場面とは「継続」「解約」「死亡」です。

継続:保険契約を継続し、給付を受け取る

解約:途中で解約してしまう

死亡:給付を受け取らずに亡くなる。あるいは、保障期間が終了する

それぞれの場面での、「総支払保険料」と「受け取れる給付額」を出します。 そして、総支払保険料から受け取れる金額を差し引けば、それぞれの場面での「掛け捨て額」が分かります

将来、自分がどの場面に該当するかは分かりません。なので、それぞれの場面での掛け捨て額を総合的に捉え、保障を得ることへの対価、つまり“安心料”として納得できるかどうかを見極めます。掛け捨て額に納得できなければ、浮いた保険料をそのまま貯めることで「貯蓄」という備えになります。

例えば、「死亡」であれば、がん保険に加入して、がんにならずに亡くなれば(保障が切れれば)、それまでに支払った保険料総額は掛け捨てです。死亡保険金を受け取れれば、掛け捨て額はその分減ります。その掛け捨て額が100万円単位の額になっても、「備えておこう」と納得できるかどうかです。

がんの罹患率が2人に1人ということは、がんにならない人も2人に1人。裏を返せば、それだけ掛け捨てになる可能性も高い点は押さえておきたいところです。

お金

保険料の負担を重くしすぎると貯蓄形成の足を引っ張る。保険と貯蓄はバランスを保つことが重要だ。

Kawin Ounprasertsuk /Shutterstock

たくさんの保障があるに越したことはありませんが、いざというときに使えるお金(貯蓄)も、備えの一種。いわば“マイ保険”です。多くの保険に加入すれば、保険料の負担が重くなり、今度は逆に貯蓄形成の足を引っ張りますから、保険と貯蓄はバランスが大事です。

ちなみに、私の相談経験で上記の「考え方」で質問をすると、判断は分かれます。

「これだけの保険料を支払っても加入したい」という方もいれば、「貯めて貯蓄で備えます」とか、「保障を小さくして、最低限で備えます」など。「答え」はご自身が持っているもので、加入の是非は「考え方次第」「個人の価値観」と思うのは、私のこうした相談経験からにもよります。

最後に、保険加入に「正解」を求めすぎないことも重要です。不安やリスクは無限ですが、保険や貯蓄は有限です。そもそもピッタリ合いません。将来の「万が一」は誰にも分かりませんから、保険加入に「正解」もないでしょう。そもそも「正解はない」前提で、その中で自分にとって何が最善かを考えてみるといいのではないかと思います。

ご自身や家族が働いて得た大切なお金です。むやみやたらと保険に加入する必要もないでしょうし、かといって、何も考えずに無防備がいいというワケでもないでしょう。

「答え」をネットや専門家に求めすぎず、ぜひ自分自身に聞いて、家族とも相談しながらじっくり考えてみてください。「答え」は、一人ひとりが必ず持っているものだと思います。


八ツ井慶子:生活マネー相談室、ファイナンシャルプランナー。どなたでも参加できる「生活マネー塾」を主宰。

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい