建設機械を改造、SWAT向け装甲車両「ザ・ルーク」

高さ11フィート(約3.4メートル)まで持ち上げられるため、警察官は建物の2階からも突入できる。

Ring Power Tactical Solutions

数十社の軍事関連企業が10月下旬、ペンシルベニア州フィラデルフィアで開かれた国際警察署長協会(IACP:The International Association of Chiefs of Police)の年次総会および展示会で最新の装備やテクノロジーを展示した。

会場には、さまざまな武器、防弾チョッキ、ドローン、捜査用ソフトウエア、制服、さらに車両も展示された。その1つが最新の装甲車両「ザ・ルーク(The Rook)」だ。

ザ・ルークは、キャタピラー製の車両に装甲を施し、SWATや他の警察部隊向けに改造したもの。開発したのはキャタピラー製の重機を扱うディーラーで、重機の改造を手がけているリングパワー(Ring Power Corporation)。

ザ・ルークは4種類のアタッチメントを装備。人質救出、立てこもり、暴動、自然災害など、あらゆる状況に対応できる。

同社によると、少なくともアメリカ国内の25の警察がルークを購入、さらに多くが関心を寄せている。

ルークの詳細を見てみよう。

キャタピラー製の車両を改造し、装甲、暗視装置、赤外線カメラ、複数のカメラ、無線リモートコントロール機能、4種類のアタッチメントなどを装備。

展示の様子

Daniel Brown/Business Insider

ザ・ルークという名前はチェスの駒から。チェックメイトという意味が込められているとのこと。

10年ほど前にジェレミー・エクダール(Jeremy Eckdahl)氏が設計した。だがあまり売れず、5年前にリングパワーが権利を買い取った。

ルークの前面

Daniel Brown/Business Insider

出典: Shaun Mitchell, Ring Power Corporation. 

価格は約31万5000ドル(約3500万円)。現在までに25の警察署が導入。

ルーク、斜め前から

Daniel Brown/Business Insider

2015年、サンバーナーディーノ(San Bernardino)警察は銃乱射事件の制圧にザ・ルークを使用した。

そのほか、以下の警察が導入済み。

・ニューヨーク市警察

・ニューメキシコ州警察

・アルバカーキ市警察

・ペンシルバニア州警察

・ミシシッピ州警察

・ジャクソンビル市警察

・ボカラトン市警察

その時の様子。

サンバーナーディーノ警察が、サイード・リズワン・ファルークとタシュフィーン・マリクの制圧にザ・ルークを使用した際の様子。

Screenshot/Inside Edition





ドライバーはレバーで操作。

運転席

Daniel Brown/Business Insider


車内から外を見たところ。

車内から外を見た様子。

Daniel Brown/Business Insider


装甲ハッチを備え、必要に応じて上部から脱出できる。

装甲ハッチを備えており、必要に応じて上部から脱出できる。

Daniel Brown/Business Insider


4種類のアタッチメントを紹介したカタログ。

4種類のアタッチメント

Daniel Brown/Business Insider


1つ目は巨大な盾のようなアタッチメント。

アタッチメントの1つ

Daniel Brown/Business Insider


後ろに最大4人が立てる。引き戸がついており、障害物などを突破したあと、そこから突入する。

装甲アタッチメント

Daniel Brown/Business Insider


開閉式の銃口×2、スライド式の銃口×4、防弾ガラス製の覗き窓×4を備える。

開閉式の銃口×2、スライド式の銃口×4、防弾ガラス製の覗き窓×4を備える。

Daniel Brown/Business Insider


横から見たところ。

横から。

Ring Power Tactical Solutions


アタッチメントは高さ11フィート(約3.4メートル)まで持ち上げることが可能、2階からも突入できる。

高さ11フィート(約3.4メートル)まで持ち上げられるため、警察官は建物の2階からも突入できる。

Ring Power Tactical Solutions


このアタッチメントを使用する前に、まず突破口を作る必要がある場合には別のアタッチメント、油圧式の破城槌(はじょうつい)を使う。

破城槌(はじょうつい)

Ring Power Tactical Solutions

ブロック壁や強化スチール製ドア、木材、コンクリートなどを打ち破ることができる。


車両撤去用のアタッチメントもある。車両を移動させたり、動きを止めることが可能。

車両撤去用アタッチメント

Ring Power Tactical Solutions


4つ目のアタッチメントは、物をつかめるアイアンクロー。補強されたドアや防犯用の鉄格子を取り除くことができる。災害時に瓦れきを撤去することも可能。

アイアンクロー

Ring Power Tactical Solutions


同社に、ザ・ルークは警察のさらなる軍隊化につながるのではないかと聞いたところ、ザ・ルークは武器を一切装備せず、単に警察官を守るためのもので、警察官が持つ盾を強化したようなものと述べた。

警察が抗議行動の参加者を排除する様子

黒人青年が白人警察官に射殺された事件に対する抗議行動の参加者を、警察が商業地域の周辺へと追いやる様子。2014年8月11日。ミズーリ州ファーガソン。

Scott Olson/Getty

しかし、タンパ大学のアビゲイル・ホール(Abigail Hall)准教授は、あくまで警察など法執行機関による使い方次第だとBusiness Insiderに語った。同氏はアメリカにおける軍国主義の影響を指摘する『Tyranny Comes Home: The Domestic Fate of U.S. Militarism』の著者。

ホール准教授は、ザ・ルークのような最新装備は多くの場合、「警察官の安全性の向上という名目で導入」されるが、実際には「警察官をより攻撃的な行動」に駆り立てる可能性があると語る。

結局のところ、「この種の装備は、警察が軍隊並みの装備で武装するようになっている最近の傾向と大いに合致している」と同氏。

8月末、トランプ大統領はオバマ前大統領が出した大統領令を撤回すると発表した。一部の軍の装備品と武器に関して、警察が軍から払い下げで入手することを規制した大統領令だ。

オバマ前大統領は、2015年にこの大統領令に署名した。ミズーリ州ファーガソンにおける抗議行動の時のように、装甲車のような武器や装備が「政府と市民の間に敵対的」な感情を生み出すことを懸念したためだ

 [原文:Take a look inside 'The Rook' — an armored vehicle SWAT teams use to tear through vehicles, block an active shooter, or bust through a riot

(翻訳:高橋朋子/ガリレオ/編集:増田隆幸)

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