マクドナルドはファストフードの「教義」から離れつつある。
Cate Gillon/Getty Images
- 米マクドナルドは、その成長・進化に伴い、スピードと価格を強調することを止めている。
- 一般的に、サービスと価格がファストフードチェーンの最大の武器だ。
- だが、マクドナルドの売り上げはこのところ上昇している。
マクドナルドはプライオリティを変更した。そして、その変更は同社に利益をもたらしている。
長い間、そして終始、ファストフード業界は、より安い、より早いサービス提供を競い合ってきた。メニューが高価になると、客足は離れた。スピードも同じだ。だからこそ「ファストフード」と呼ばれている。
そして、マクドナルドほど、ファストフード業界を象徴する企業はない。マクドナルドはさまざまな方法で、スピーディーな流れ作業によるサービス提供を実現した。同社の最も有名な商品は2014年に販売を終了した1ドルメニュー(Dollar Menu)だ。
だが何年間も不振にあえいだ後、マクドナルドはファストフードの「教義」から離れ、クオリティ、デザイン、そしてテクノロジーに投資する道を選ぶことで復活しつつある。
マクドナルドのマックピック2
Hollis Johnson
「フランチャイズ加盟店に伝えたことは、我々は価格で勝たなくてよい。だが、価格で負けることはできないということだ」とマクドナルドUSの社長クリス・ケンプチンスキー(Chris Kempczinski)氏は投資家との電話会議で述べた。
価格は依然、重要だ。1ドルメニューを廃止した後、マクドナルドは価格面での競争力を失ったとケンプチンスキー氏。その後、マックピック2とドリンクセットなどを発売して軌道修正を行った。さらに同社は価格を1ドル、2ドル、3ドルに設定したバリューメニューを2018年初めに提供する予定だ。
だが、同社の勝つことではなく、決して負けないことを目指すという戦略は特筆に値する。マクドナルドはもはや1ドルメニューにこだわるのではなく、1ドル、2ドル、3ドルメニューが主軸となる。
またスピードも、強調しない。
リニューアルした店舗のオーダー端末
Hollis Johnson
「未来の体験(experience of tomorrow)」と呼ばれるリニューアル済みの店舗は、オーダー端末やテーブルサービスなどを備え、商品提供の時間は長くなっている。同社によると、従来の店舗より約5秒長い。
「店舗スタッフがより経験を積めば、すべてではなくとも、長くなった提供時間の大部分はいずれ回復できると期待している」とケンプチンスキー氏は語った。
「新しい店舗をご覧いただければ、顧客と我々とが交流する新たな方法をたくさん見つけていただけるはずだ」
基本的に同社は、マクドナルドを訪れる顧客がすべて、スピーディーなサービスを望んでいるわけではないと考えている。
「スピードを重要視する顧客には、より素早いサービスを提供したい。同時に、全ての顧客がスピードを望んでいるわけではないことを考慮し、我々はより多くの選択肢を提供していく」と同社CEOスティーブ・イースターブルック(Steve Easterbrook)氏は述べた。
これは、直感的には理解しにくい取り組みだ。マクドナルドはスピードを完全に放棄したわけではない。だが同社はその重要性を積極的に軽減させている。そして、成果につながっている。
10月24日(現地時間)、同社はオープン1年未満の店舗を除いたアメリカ国内の店舗の売り上げが4.1%アップしたと発表した。アナリストは3.4%と予想していた。
これでアメリカ国内の売り上げは、3四半期連続の増加となった。全世界では9四半期連続の売り上げ増を達成。UBSのデータによると、過去2年でアメリカ国内の売り上げは5.4%増加した。
「我々は我々自身を改善し、おいしいメニュー、お得感のある価格、素晴らしい体験を提供することで顧客を取り戻した」とイースターブルック氏。
マクドナルドの経営陣は、店舗やサービスを積極的に進化させている。そして今、マクドナルドはファストフード業界の常識や慣習を超えて進化することに、その将来を賭けている。
[原文:McDonald's gave up on winning the 2 biggest battles in fast food — and business is exploding]
(翻訳:まいるす・ゑびす)