米NYテロ:「スナップチャットで事故の写真が次々と……」現地高校生の生々しい証言

警察の非常線

現場の自転車・歩行者道から1ブロック東に離れた警察のライン。現地にて、津山恵子が撮影。

米ニューヨークのマンハッタン南部で10月31日午後3時過ぎ、 ピックアップトラックが複数の通行人やサイクリストをひき逃げし、8人が死亡、12人が負傷する事件が起きた。犯人はその後、トラックを降りて、複数の「模造銃」(ニューヨーク市警)を取り出したところ、警官に腹部を撃たれて拘束された。ビル・デブラシオ同市市長は「卑劣なテロ」と発表した。

ニューヨークで多数の死亡者が出るテロ関連事件は、2001年9月11日の米同時多発テロ以来、初めて。

現場は、米同時多発テロの現場だった世界貿易センターから北に約500メートルしか離れていない自転車・歩行者道で、ニューヨークでトップクラスのスタイブサント高校が面しており、授業中だった。また、同日はハロウィンの日で、市民がパーティやパレードの準備をするため、市内は最後の買い物などで賑わっていた。

現場の自転車・歩行者道から1ブロック東に離れた警察のライン。津山恵子撮影。

同市警によると、犯人は、ウズベキスタンからの移民で南部フロリダ州在住のサイフロ・サイポフ容疑者(29)で、動機は不明だ。米メディアは、同容疑者が現場で、「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫んだと伝えている。

米メディアや目撃者によると、トラックは自転車道に突っ込んで数百メートル走り、複数のサイクリストをはねた。その直後、児童が乗り降りをしていたスクールバスに衝突して停止し、児童と父母を負傷させた。現場に駆けつけたカメラマンは、「30〜40台の壊れた自転車を見た」と話している。

米ワシントン・ポストによると、死亡者8人のうち5人は、アルゼンチンから高校卒業30周年を祝うため、長年の夢だったニューヨークを訪れていた同級生グループで、事件当時、自転車に乗っていた。アルゼンチンの外務省が発表した。

このほか、ベルギーからの旅行客が死亡したことも確認されている。

スタイブサント高校は、生徒の安全のため、出入り口を閉鎖して、下校時間を大幅に遅らせた。

在ニューヨーク総領事館によると、日本人が巻き込まれたとの情報はない。

現地高校生「スナップチャットで事故の写真が次々と……」

米CBSニュースが流したビデオでは、黒いジャージ姿のサイポフ容疑者が、光る模造銃を手にして自転車道と並行して走る車道を駆け回り、イエローキャブなどが急停止したり、車から降りた市民が物陰に隠れたりする姿が映っており、現場の混乱ぶりがわかる。

また、同ニュースが入手した写真には、血だらけの人物が、ぐにゃりと潰された自転車の傍に横たわっているものや、白い遺体袋が写っている。

デブラシオ市長は事件発生直後、記者会見を開き、「何が攻撃してくるのかまったく知らない無実の市民を狙った卑劣なテロ行為だ」と述べた。

スタイブサント高校から午後6時ごろ、下校が許された生徒がどっと現場前にあふれ出てきて、警察ラインの真ん前にあるマクドナルドや、路上の屋台に長蛇の列を作り始めた。

12年生のエリザベス・チェルノベルスキーさん(17)は、事件についてこう語った。

12年生のエリザベス・チェルノベルスキーさん(17)

インタビューに答える、12年生のエリザベス・チェルノベルスキーさん(17)。

「教室が、現場に面していたので、2つの遺体袋を見ました。警官や消防士がいっぱいいて、特別機動隊、爆弾処理班もいたし、ヘリコプターの音も聞こえました。

学校が教室内避難を指示していたので、パニックにはなりませんでした。ただ、フランスや英国でのテロを覚えているので、学校の外にいる人たちが心配で、犠牲者がどのくらいいるのか、というのが一番気になりました。下校までの時間がとても長く感じました」

9年生のカリン・リー君(15歳)は、警察ラインから1ブロック半離れたところで、数人の友人とホットドックを3つ買って頬張っていた。

「生物の授業中に突然『教室から出ないように』という校内放送があったので、『訓練かな』と言っていたら、パトカーやヘリコプターの音が聞こえてきて、事件があったことをスナップチャットで知りました。それから、スナップチャットに、現場の遺体袋の写真などがどんどん来ました」

「ロンドンやパリでテロがあったので、ニューヨークでもいつか(テロが)起こるとは思っていたけど、8人が亡くなったと聞いて、怒りを覚えました。誰も傷ついてはいけない、こんなことがあってはいけないのに」

「一番心配性のおばさんには、電話をしておきました」

ベビーシッター歴20年というマリアさんは、仕事を終えて路上に出てきたばかりで、警察の非常線を見て、「これは何?」と記者に聞いてきた。

「あの自転車道は、ベビーシッターも子供と散歩に行くところです。知っている人が、巻き込まれていないといいけれど」

と心配していた。近くで働いていて、明日も出勤するのを怖くないか、聞いてみた。

「怖くはありません。何が起きても、普通の市民生活をして、テロリストにニューヨークは負けない、ということを知らせるのが大切です」

その言葉通り、スパイダーマンやピカチュウなどの仮装をした児童が、父母を伴って、例年通りの「トリック・アンド・トリート」のため、警察ラインやパトカーの前を横切っていた。銀行やレストラン、アパートの受付などに行って、キャンディをもらうと、手にした袋に入れて、はしゃぎながら歩道を走り回っている。

父母は、「CNNがいるわ」「すごい(人数の)警官ね」などと言いながら、スマートフォンで警察ラインの写真を撮影し、現場近くでは、いつもと変わらないハロウィンの夜が展開していた。

同日午後7時から予定されていた恒例のハロウィン・パレードも予定通り、行われた。ただ、いつもよりは警備の警官も多く、機関銃を掲げ、ヘルメットをかぶった機動隊の姿が目立った。

非常線を張る警察、見守る人々、現地に直行する各国メディア

警察ライン付近は、マシンガンを持った警察官のほか、爆弾処理班や装甲トラックなどが配備されていた。世界中のメディアが集まり、英語ばかりでなく、スペイン語や中国語、日本語で記者が中継する声が響き渡っていた。

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現場から1ブロックしか離れていないところでは……

現場から1ブロックしか離れていないところで、ハロウィン仮装した子供達が、「トリック ・アンド・トリート」をしていた。

NY自動車テロ現場写真

仮装した児童が父母の同伴で、店舗やアパート、民家からキャンディを集めるハロウィンの「トリック・アンド・トリート」を現場付近でも、繰り広げていた。警察ラインの向かい側にある銀行は、キャンディを配っていた。

NY自動車テロ現場写真

NY自動車テロ現場写真

※この記事は追加情報を加えて、18時40分に更新しました。

(文、写真・津山恵子)

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