北朝鮮にどう対処する? 米議会に示された7つのオプションとは

金正恩

Reuters / KCNA

アメリカの議会調査局(CRS)は、高まる北朝鮮の脅威に対し、アメリカが今後取り得る7つの軍事オプションを示した報告書を取りまとめた。

北朝鮮に対するオプションは、トランプ大統領閣僚らが「全てのオプションがテーブルの上にある」と発言したように、アメリカの軍事力と戦略の幅広さを示すものだが、中には意外なものもある。

例えば、全てのオプションが武力行使をするわけではない。中には、アメリカは通常通り振舞うというものもあれば、韓国から米軍が完全撤退するというものもある。

米議会が持っている、対北朝鮮軍事オプションに関する情報を、1つずつスライドで紹介しよう。


現状維持

韓国軍

Public Domain

簡単に言えば、米国務省が北朝鮮に対し制裁や外交的解決を模索する一方で、 米軍の通常の活動や演習は継続するというオプションだ。

どこかで聞いたような気がするとしたら、オバマ前大統領が8年間これを実行し、限定的な成果を上げたからだろう。

このオプションのメリットは、現在の緊張状態から本格的な危機・戦争に発展する危険性が比較的低い点だ。オバマ政権が「戦略的忍耐」と呼んだこの政策の反対派は、この政策は北朝鮮の核兵器もしくは長距離ミサイルの開発を何年も阻止できなかったと指摘する。

トランプ大統領はこれまで「戦略的忍耐」の基本原則を貫いてきたが、空母の配備を増強し、時に「炎と怒り」で北朝鮮を「完全に破壊」すると警告した。

地域の配備を増強し、北朝鮮への監視を強化する

THAAD

Lockheed Martin

このオプションは現状維持から抜け出し、アメリカで最恐、最大の能力を持つプラットフォームを展開、北朝鮮を密に監視し、核開発計画を進めることが賢明な選択ではないと感じさせるよう仕向けるものだ。

アメリカのステルス戦闘機や爆撃機、空母、原子力潜水艦、ミサイル駆逐艦、さらには戦術核などを韓国と日本により永続的に配備し、域内での駐留米軍のプレゼンスを強化する。

同時に、サイバー空間や海上でのプレゼンスを高め、北朝鮮政府のさらなる兵器開発につながる可能性のある同国への貨物輸送を阻止する。

このオプションに懐疑的な人々は、北朝鮮は朝鮮半島における米軍の配備を嫌い、コスト度外視の兵器開発の継続を正当化する根拠にするだろうと指摘する。

また、アメリカはこうしたアセットを単に投下するわけにはいかない。軍事プレゼンスの強化によって、北朝鮮にとって確実な脅威にならなければならない。北朝鮮の船が、貨物検査のために乗り込もうとする米海軍の船員に発砲すれば、何が起こるだろう?

北朝鮮が発射する全ての中・長距離ミサイルを迎撃し、実験を阻止する

ミサイル

US Navy

このオプションは、北朝鮮の非核化というアメリカの長年の目標を無視し、その核・ミサイル開発計画を凍結するというより現実的な目標を目指すものだ。

北朝鮮は基本的に、アメリカに核の脅威をつき付けるべくミサイルの実験を続けているが、そのためには、国境を越えて飛ぶミサイルの実験をしなければならない。

これをアメリカやその同盟国が撃墜できれば、それは北朝鮮の自信となっている実験データを否定することになるだろう。

しかしそのためには、海軍の駆逐艦といったアメリカの弾道ミサイル防衛を、常に当該地域に配備しておかなければならず、他の地域で展開できるリソースを制限してしまう。

加えて北朝鮮は、依然として域内の駐留米軍を危険にさらす短距離ミサイルの実験を行う可能性があり、ミサイルが迎撃された場合、北朝鮮がどう反応するかは不明だ。

大陸間弾道ミサイル(ICBM)の施設とミサイル発射施設の完全破壊

火星12号

中距離弾道ミサイル「火星12号」の発射を視察する北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)氏。写真は朝鮮中央通信が公表したもの。

Thomson Reuters

これは北朝鮮に対する初の大規模な武力行使となる。

海軍による限定的な空爆と複数のトマホークミサイルの発射で、米軍は一度に全ての既知のミサイル発射施設とICBM製造施設を破壊できるだろう。

しかし、アメリカは北朝鮮のミサイル製造施設の全てを把握してはおらず、一部の秘密基地や地下施設を取りこぼす可能性もある。そして、北朝鮮ミサイルの大半は決まった場所から発射されているが、北朝鮮はどこからでも、事実上いつでも発射できる固体燃料ミサイルを開発している。

この攻撃によって北朝鮮のICBMというアメリカにとっての脅威は取り除けるかもしれないが、北朝鮮はこれを金正恩体制に対する大規模な斬首攻撃と見なすかもしれない。

したがって北朝鮮はその反撃として、大規模な砲兵部隊の全兵力を韓国軍と駐韓米軍へ向ける可能性がある。日本や韓国に核ミサイルを発射する恐れもある。専門家は全面戦争になった場合、最初の数日間で韓国、日本および東アジア地域で3万~30万人が犠牲になり、そのうちの多くが民間人から出ると見ている。

武力による完全非核化

戦闘機

Master Sgt. Jeremy Lock/USAF

このオプションは、北朝鮮の既知の核・ミサイル施設を対象に、さらに大規模な軍事作戦を展開するものだ。空爆と巡航ミサイル攻撃の代わりに、特殊部隊を国境付近に展開し、北朝鮮の重要拠点を破壊することも考えられる。

アメリカは北朝鮮の全ての核・ミサイル施設の位置を把握していないため、最初の攻撃の後も、徹底した監視と確認作業が続くだろう。

このオプションは、アメリカの同盟国の既存のリスクを増大させるだけである。

金正恩政権の転覆

金正恩

金正恩氏(2017年4月13日、平壌にて)。

AP Photo/Wong Maye-E

米軍、ティラーソン国務長官、マティス国防長官の3者はいずれも、アメリカは北朝鮮の体制転換を望んでおらず、そのための訓練もしていないと明言しているが、大統領や米軍は、いかなる犠牲を払っても国のための最善策を取らねばならない。

アメリカが、金正恩政権にアメリカ国民を攻撃する意思があると判断した場合、武力による政権転覆が現実味を帯びる可能性がある。

しかし、アメリカは単に金正恩氏を殺害し、2500万人の北朝鮮国民を降伏させることはできない。厳密に言えば、北朝鮮は1994年に死亡した「永遠の指導者」金日成(キム・イルソン)氏の下に存在している。金正恩氏の死亡後は、恐らく同国のプロパガンダを植え付けられた北朝鮮国民がより激しく抗戦するだろう。

したがって、報告書によれば、米軍は「核施設だけでなく、司令管制施設、主要リーダー、砲兵部隊およびミサイル部隊、化学兵器および生物兵器施設、飛行場、港湾の他、体制の存続に不可欠なあらゆる目標」を攻撃対象としなければならない。

「この作戦は、朝鮮半島を全面戦争に突入させるようなもので、域内の国々にも紛争が広がる危険性がある」と、報告書は結論付けている。

ベトナム戦争やかつての朝鮮戦争のように多くの血が流れる可能性があることから、このオプションはありそうもない。

立ち去る

軍隊

Kim Hong-Ji/REUTERS

このオプションは、北朝鮮に対するアメリカの考え方を根本から見直すものであり、他の全ての軍事オプションの対極にある。

一部には、米軍が韓国と日本に駐留しているために、北朝鮮が核兵器の開発を進めるのだと考える者もいる。米軍が撤退すれば、金正恩氏は圧力を感じず、中国や国際社会は北朝鮮の非核化をより容易に進めることができるかもしれない。

しかしこのアイデアは、金正恩氏の対応に依拠する部分が大き過ぎる。北朝鮮が韓国の優位に立った後、同氏が交渉に応じる保証はない。さらにアメリカが日本と韓国への合法的な駐留を取りやめることで、北朝鮮に違法な核兵器の開発を止めさせるというのは、まさに脅迫のようだ。

さらに北朝鮮は、北朝鮮主導で朝鮮半島を統一するという目標を長年にわたって掲げ続けており、もしアメリカが北朝鮮に譲歩すれば、統一への勢いが増すかもしれない。

結論

トランプ大統領

Carlos Barria/Reuters

今回議会に示された軍事オプションは、どれも完璧な解決策ではなく、多くが壊滅的な結果をもたらすものだ。

結局のところ、ならず者国家・北朝鮮による権力と核開発の追求は、軍事オプションとしてだけでなく、外交オプションとして存在している。

そういう意味では、アメリカやその同盟軍は北朝鮮を打ち倒し、核計画を破壊することもできるのだろうが、それには数十万の命の犠牲が伴い、21世紀に核戦争の可能性がもたらされるだろう。

簡潔に言えば、軍事オプションは政治問題を解決するものではない。しかし最悪の場合には、アメリカは常にいかなる準備も整えている。

[原文:These are the 7 military options Congress has been given to deal with North Korea]

(翻訳:本田直子/編集:山口佳美)

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