ICOは詐欺かバブルか? 金融庁、専門家が警告

仮想通貨を用いる資金調達手法ICO(Initial Coin Offering)が注目を集めている。

国内でもICO実施に踏み切る企業が相次ぎ、100億円を上回る資金調達に成功した事例も出てきた。こうした中、金融庁が10月下旬、「価格下落」と「詐欺」の可能性について、注意を促す文書を出した。専門家からは、企業やプロジェクトの実態を大きく上回る資金が集まる、バブルを懸念する声も出ている。

仮想通貨

ICOは、仮想通貨を用いる資金調達手法だ。

撮影:今村拓馬

100億円超えるICOも

ICOは、企業などがインターネット上でトークン(引換券に相当)を発行し、トークンを販売することで事業に必要な資金を集める。トークンセールとも呼ばれている。トークンは取引所で売買され、事業がうまくいけばトークンの価値は上昇し、うまくいかなければ下落する。市場原理が働く点については、株式市場に似た点が多い。

国内でも、2017年秋以降、ICOが活発になっている。

テックビューロ社は11月6日、ICOの実施支援プラットフォームCOMSAについて、トークンセールでの調達額が106億円に達したと発表した。「国内初で最大」としている。10月24日には、GMOインターネット社が、仮想通貨のマイニング(採掘)事業のため、トークンセールの実施を検討すると発表している。

トークンを販売する企業は、ホワイトペーパー(目論見書)と呼ばれる事業計画書を公開する。購入者側は、ホワイトペーパーの情報をもとに、事業の革新性や、資金計画の実現性などを判断する。

注目すべきは、ホワイトペーパーとトークンの中身だ。

米国で起きたICO詐欺事件

アメリカでは、ICOを巡るトラブルが起きている。

米証券取引委員会(SEC)は9月29日、不動産やダイヤモンドの裏付けがあると偽ってICOを実施し、投資家から金をだまし取ったとして、2社とその経営者を告発した。

SECの発表によると、REcoin グループ基金と、DRCワールド(ダイヤモンド・リザーブ・クラブ)の2社で、同じ人物が経営している。2社は実際には存在しない無記名証券、トークンや仮想通貨を販売したという。

REcoinについて経営者は「初めて不動産の裏付けのある仮想通貨」とうたったとされる。複数の弁護士や会計士、専門家らでチームを結成しているともしていたが、雇用したり、アドバイスを受けたりしたことはなかったという。DRCワールドについては、会員権を購入した人は、ダイヤモンドを割引価格で購入できるとしていたが、経営実態がなかったとしている。

米国のICO詐欺事件

米国で起きたICO詐欺事件の構図

制作:小島寛明

米ウォール・ストリート・ジャーナルは10月19日付で、トークンセールで2億3200万米ドルを集めたテゾス(Tezos)で内紛が起きていると報じた。テゾスのトークンセールは2017年で最大級だとされる。

報道によれば、テゾスの創業者側と、トークンセールの受け皿となったスイスの基金の運営者側の間で、係争が起きている。紛争の展開次第では、トークンを購入した投資家が、トークンを取引できないリスクが生じているという。11月に入って、両者の係争が訴訟に発展したとの報道もある。

SECは7月25日付で、ICOについて注意を促す文書を公表している。ロイター通信によれば、中国当局は9月4日に、ICOによる資金調達を全面的に禁止した。

金融庁が注意喚起文書

日本の金融庁も10月27日になって、ICOについて注意を促す文書を公表した。

トークンについて金融庁は「価格が急落したり、突然無価値になってしまう可能性があります」と指摘した。トークンを発行した企業のプロジェクトが行き詰まったり、経営が破綻したりすれば、トークンが無価値になるおそれは当然にある。

詐欺の可能性については、「一般に、ICOでは、ホワイトペーパーが作成されます。しかし、ホワイトペーパーに掲げたプロジェクトが実施されなかったり、約束されていた商品やサービスが実際には提供されないリスクがあります。また、ICOに便乗した詐欺の事例も報道されています」としている。

アメリカで起きた詐欺事件では、ダイヤモンドも不動産に裏付けられた仮想通貨も存在しなかった。

バブルの懸念

フィンテックや仮想通貨に詳しい、森・濱田松本法律事務所の堀天子(ほり・たかね)弁護士は「投機目的で入ってくるお金も多く、需要が殺到している。バブルと言われてもおかしくない状態ではないかと心配しています」と話す。

堀天子弁護士

堀天子弁護士。「トークンを買うなら、トークンセールの本質の理解を」と呼びかける。

撮影:小島寛明

トークンセールで発行されるトークンの内容は、企業側が自由に設計できる。新しいインターネット上のサービスを開発するプロジェクトであれば、ICOでトークンを購入した人には、運用開始後にサービスを優先的に利用できる権利が与えられるといった内容が多い。

ネット上のサービスであれば、似た点のある既存のサービスと比べれば、どの程度の「投資」が適正か検討したうえで、トークンを購入できる。

トークンは仮想通貨で販売されるため、トークンの価格は仮想通貨の値動きに影響される。トークンは市場で売買されるため、投機目的の資金が流れ込めば価格は上昇する。ブロックチェーン技術に注目が集まっていることから、「持っていれば値上がりするかも」という期待感も高まっているだろう。

ICOを実施した企業のサービスが当初の期待ほど成功しなければ、トークンの価格は下落する。仮想通貨の価格が下落局面に入れば、トークンの価格も下落する。トークンを購入する際には、サービスの提供する価値や、仮想通貨の価格などから、高い買い物にならないかを検討する必要がある。

過剰な投機は規制のきっかけに

ICOは、起業したばかりのスタートアップ企業にも、世界中から資金を集める道を開いた点で画期的な仕組みだ。これまでなら資金を確保できずにあきらめていたプロジェクトも、内容次第で実現のきっかけが得られるかもしれない。

堀氏は、ICOの健全な発展を願うひとりだ。

「プロジェクトに価値をつけて、事前にお金を集める手法はこれまでになかった。しかし、過剰な投機対象となり、一般の消費者も参加するようになって、万が一にも消費者に不利益が生じれば、一斉にバッシングが起き、規制が入りかねない。それは、果たしていいことでしょうか」

日本で実施されたICOのホワイトペーパーは総じて、集めた資金を何に使い、いつまでにどれだけの回収を目指すかについては記載が薄い。これではトークンの購入を考えている人も、どの程度の「投資額」が適正か判断できない。資金を集める以上、どういった情報を開示しなければならないか、最低限のスタンダードは必要だろう。堀氏は指摘する。

「トークンセールがどういったルールで実施されているのか。一部の関係者の間だけではなく、一般にも知られている状態をつくる必要があります」

(文・小島寛明)

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