会員間のコミュニティを育成するために、ザ・ウィングは仕事スペース以外のものも提供する。
Sarah Jacobs/Business Insider
- ザ・ウィング(The Wing)は、女性専用のコワーキングスペース兼クラブ。現在、ニューヨークに2カ所ある。
- 同社は、ウィーワーク(WeWork)が主導するシリーズBの投資ラウンドで3200万ドル(約35億円)を調達した。
- 最新施設はソーホー地区にある。メンバーはデスク、メイクルーム、仮眠室、ミーティングルーム、図書室、カフェが利用できる。
- 入会は現在、8000人待ち。
2016年10月、女性専用のコワーキングスペース兼クラブ「ザ・ウィング(The Wing)」を始めたとき、オードリー・ゲルマン(Audrey Gelman)とローレン・カッサン(Lauren Kassan)は、需要の大きさや提供すべきサービスを正確に理解していなかった。
2016年の大統領選挙の数カ月前、政治関係の仕事をしていたゲルマンはヒラリー・クリントンが勝つだろうと語っていた。
「ヒラリーにとって素晴らしい1年となるはずだった。そして彼女が大統領執務室に座るはずだった」とゲルマンはBusiness Insiderに語った。
「勝利がカタチになるはずだった。だが、明らかに状況は違うものになった」
ドラルド・トランプが大統領選に勝利した翌日、ザ・ウィングには会員やウェイティングリストに名を連ねた女性たちから電話が殺到した。カッサンによれば、彼女たちは口々にこう述べた。
「このような場所がどれほど欲しかったのか、どれだけ望んでいたのか、初めて気がついた」
今、ザ・ウィングは1500人の会員を持ち、8000人が入会待ち。今後、さらに2つの施設をオープンする予定だ。1つはブルックリン、もう1つはワシントンDC。年会費は2350ドル〜2700ドルで、会員はさまざまな特典を利用できる。
同社は最近、ウィーワーク(WeWork)が主導するシリーズBの投資ラウンドで3200万ドル(約35億円)を調達し、調達総額は4200万ドルに達したとフォーブスが伝えた。大手VCのNew Enterprise Associates(NEA)も投資に加わった。
会員間のコミュニティを育成するために、ザ・ウィングは仕事スペース以外のものも提供する。例えば、スピーキングイベントやコミュニティでのボランティア、映画上映会、交流のためのハッピーアワーなど。
ザ・ウィングの男性禁止のルールは厳格だ。ソーホー地区の新しい施設の紹介ツアーに訪れたオープニングの日、男性スタッフは同伴しないようにと言われた。電話の向こうでは、すでに会員が忙しそうに仕事をしていた。
(編集部より:11月9日に掲載した「年会費約30万円、でも“8000人”待ちの女性専用コワーキングスペース」を最新情報をもとに更新しました)
ゲルマンは働き詰めだった頃に、ザ・ウィングのような場所が必要だと気づいた。イベントやミーティングのために「街のあちこちのトイレ」で着替えるのではなく、自分が本当に欲しかったスペースを思い描いた。
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広々としたトイレ、シャワー、ロッカー、メイクルーム。女性が1日を過ごすために準備し、服装を整えることができる。
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COOのカッサンはコミュニティが生まれる機会に立ち会った。「ザ・ウィングがコミュニティを生み出し得ることは、私にとって驚きでした。元々のアイデアは利便性のためにスペースでした。だが、新たな人と出会えるスペースを作ることにもなった」
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ゲルマンはヒラリー・クリントンの2008年の大統領選でのアシスタント、その後、ニューヨーク市の会計監査官スコット・M・ストリンガーの広報担当を務めた。ザ・ウィングは自分の政治的キャリアから見れば、自然の成り行きだと考えている。
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出典 : The New York Times
「ミッションを持っているという意味で、ある意味、政治と近いものでした。ですが、そのミッションがどれほど重要になっているかを我々が理解していたとは思わない」とゲルマンは述べた。「私は今、この事業に取り組むことを愛している。なぜなら私が気にかけている価値観や問題を前に進めることだから。だが、政治とは別のこと」
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900平方メートル以上のスペースには、2つのミーティングスペースがある。
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ひと休みできる仮眠スペースも。
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搾乳室も静かで、独立した場所にある。
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カフェ兼バーでは朝食やサンドイッチ、コーヒーが楽しめる。
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大きな天窓と高い天井、明るく開放的な雰囲気。
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8つの電話用ブースは会員からの要望で設置された。
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かつて賑やかなカフェだった場所は、本がいっぱいの静かな図書室に。書籍は、女性が立ち上げた人気書店ストランド(Strand)が選んだ。すべて女性作家の書籍。
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会員資格については、ゲルマンとカッサンは多様性を維持しようとしている。「我々は会員については多様性を重視している。キャリア、人種、民族、年齢、利用目的などが、偏らないようにしている」とカッサンは語った。
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ゲルマンによると、会員は「教師、物理学者、エンジニア、ファッション、マーケティングまでさまざま。さらに微生物学者、飛行機エンジニア、匂いを研究する博士課程の人もいる」。
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会費は1拠点の利用であれば年間2350ドル、もしくは月額215ドル。全ての拠点を利用する場合は年間2700ドル、もしくは月額250ドル。
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ゲルマンによると、新しい会員メニューや奨学金を計画中、来年早々には発表の予定。
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「我々が思う以上の需要がある。控えめに見ても」とゲルマン。
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「女性にとって厳しい1年。だがここの女性たちの溢れるエネルギーは、多くの希望を与えてくれる」とゲルマンは結んだ。
COOローレン・カッサンとCEOオードリー・ゲルマン。
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(敬称略)
(翻訳:塚本直樹/編集:増田隆幸)