Airbnb Japanが、全日本空輸(ANA)とPeach Aviationとパートナーシップを締結した。Airbnbが日本のエアラインと提携するのは初めて。CtoCで広がる“シェアする旅”に、航空会社も目を付け始めた。
ANAとPeachは11月6日、Airbnbの予約ができる特設ページをそれぞれ開設、Airbnbを予約すると特典が受けられる。特に20〜30代の利用者が約6割のPeachは、「人から検索する」をコンセプトにページ「COTABI」を立ち上げた。旅行者が自ら体験した旅のプランをシェアし合い、「この人が体験した旅に行きたい」というマインドを引き出す狙いだ。
「人から検索する」をコンセプトにした予約サイト「COTABI」。Peach Aviationが開設し、第1弾はAirbnbとタイアップ。日本の航空会社もシェリングエコノミーに注目を始めた。
出典:Peach Aviation
6日に都内で行われた記者会見に、Airbnb Japanの田邉泰之代表取締役、ANAの志岐隆史副社長、Peach Aviationの井上慎一CEOが登壇した。
記者会見に登壇した3社の代表者。左から、ANAの志岐隆史副社長、Airbnb Japanの田邉泰之代表取締役、Peach Aviationの井上慎一CEO。
Airbnb Japanは、国内の物件数が5万8000件を超え、ユーザーは2倍ペースに伸びている。ホテル、旅館を中心に連携してきた航空会社も、新しい旅行の流れに乗りたい考えだ。田邉氏は「個々の旅のスタイルをどう提供するか、何年も旅のスタイルを提案している全日空に期待している」と話し、Peachについては、「(COTABIは)人を切り口に旅に入る。人が違えば(行く場所が同じでも)違う旅になる。旅の頻度が高まる、何度も同じところに行くためにどうするか、Peachのアドバイスがほしい」と抱負を述べた。
ビジネス客の多いANAとの提携に関し、田邉氏は「出張の際に、仕事の仲間で大きな家を貸し切るなど、Airbnbのビジネス利用にも力を入れたい」と広がりに期待した。
ANAとAirbnbがタイアップしたページ。宿泊クーポンとマイルの特典が得られる。
出典:ANA
ANAが開設したページでは、「京町家に泊まる」「国内リゾート生活」など5つのテーマを紹介。テーマに沿ったAirbnbが扱う宿を予約できる。宿泊代金に応じて、最大200マイルが貯まる。またAirbnbの新規予約で使える3000円分のクーポンが得られる。
キャンペーンは、6日から1年間。
志岐氏は「CtoCのコミュニケーションが新しく、多様性を生む源泉になっている」とAirbnbやPeachの事業を評価し、「我々は、新しい旅の創造に苦しんでいるところがある。大いに参考にして、取り込む必要がある。客とのコミュニケーションのあり方は刺激を受けた」とあいさつした。
Peachはインスタグラマー活用で販売総額が2.4倍に
Peachは、インスタグラマーを活用したキャンペーンにより、販売総額を前年同月比2.4倍にした。キーワードは、旅行の「追体験」。
若い世代が利用客の中心のPeachは、以前からCtoCに注力してきた。
「SNSの力は想像を超えている」
井上氏が反響の大きさに驚いたのは、Peachが2017年春にインスタグラマーとタイアップしたキャンペーン。インスタグラマーが旅先の写真をSNSにアップする企画を31日間実施した。結果、航空券の販売総数が前年同月比2.4倍に達した。
井上氏は「 『私、この子好きなんだ、こんな旅しているんだ、行ってみよう』という追体験の旅があると気付いた」と話し、今回の「COTABI」の契機になったことを説明した。
「COTABI」は、まさにこの追体験をテーマにした。「この人の旅を体験したい」と人をテーマに旅を選べる。
COTABIの第1弾は、インスタグラマーとモデルを起用し、Airbnbとタイアップした旅のパッケージを紹介。サイトの本格オープンは2018年春。
出典:Peach Aviation
第1弾のキャンペーンは、インスタグラマーとモデルの3組が登場。「DEEP KANSAI TRIP」「東京おしゃれライフ旅」「古民家旅」をテーマに自身が体験した行程を紹介し、サイト上では交通手段とAirbnbの予約ができる。予約すると、Airbnbの新規予約で使える3000円のクーポンがもらえる。
来春のサイトの本格オープン後は、ほかの宿泊施設にも拡大し、一般の旅行者も自ら体験した旅をシェアできるようにする予定。移動手段や宿泊施設、アクティビティー、観光スポットを含めて共有する。
利用者は女性、カップル、家族などの属性から旅を検索し、自分に合った人の行程を一括予約できる。
「(インスタグラマーのキャンペーンで)社内の営業は打ちひしがれた。何をやっているんだと。もうBtoCではなく、CtoC。CtoCのコミュニケーションで旅のスタイルを作りたい」(井上氏)
(文、撮影:木許はるみ)