AWE Europe 2017で見た最新AR/VR動向 製造、保守、物流などの産業活用が進む

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ここ数年、大きく注目を集めているAR/VRの分野だが、エンターテインメントだけでなく、産業用としての活用も着実に進んできている。ドイツ時間の10月19、20日にミュンヘンにて開催された世界最大級のAR/VRカンファレンス「Augmented World Expo Eurpoe 2017」(AWE)でも、数多くの産業向けAR/VRの展示が用意されており、その盛り上がりの一端を感じられた。本稿では、現地の様子とヨーロッパでのAR/VR動向をお伝えしよう。


2010年より続く産業向けのAR/VRイベント

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AWEは2010年よりアメリカや中国、ヨーロッパなどで開催しているカンファレンスだ。今回はドイツのミュンヘンにあるMOC Exhibition Centerにて実施し、数十の講演に合計115人が登壇して、3000m2という幕張メッセ1ホール(6750m2)ほどの半分弱のスペースに90の出展者がブースを構える規模になっている。参加者も51の国から2日間で約1500人が集まるという、国際色豊かな顔ぶれだ。

出展と講演は、製造業、保守作業、物流業などの産業分野向けが9割近くを占めており、ゲームやエンターテイメントに関するものはほとんどなかった。


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基調講演では、AUGMENTEDREALITY.ORGの共同設立者 & CEOであるOri Inbar氏が登壇し、AWEの概要が語られた。


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会場には約800人が集まって、立ち見が出るほどだった。

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アメリカ、中国での記録を含むAWE全体の参加者を分析すると、47%はスタートアップ企業とのこと。


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出席者の役職で分けると、4割はCEO、CTO、COO、のような経営幹部の「C-Level」、その後にマネージャー、クリエーターと続く。

基調講演の後半では、AR/VRに関する想いが語られた。Inbar氏は、AR/VRの市場規模が増加傾向であることに触れて、人類が進化の過程でいろいろな道具を使って環境に適用してきたように、これからはスマートグラスが伸びていくだろうと予期していた。


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うつむく姿勢で使うスマートフォンよりも、前を見る姿勢で使うスマートグラスのほうが自然。

引き続き、気になったブースを紹介しよう。

●Bosch

自社の修理工程でHoloLensとタブレットを組み合わせた事例を紹介。同社では、この仕組みをCommon Augmented Reality Platform(CAP)と呼んでおり、今後も拡充を図るとした。

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実際の車の位置に合わせて、修理手順やガイドをAR表示。


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HoloLensとタブレットを組み合わせて、作業を効率化。


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ブースでは、HoloLensをかけることで、実際のオートバイにエンジンのCGを重ねて見せるデモを出展していた。実際に体験したが、精密にデザインされたエンジンがきれいに重畳されており、マシン点検の実用に耐えるという印象だった。

●HoloLight

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産業向けにスマートグラスを、MRで活用することに特化した会社だ。CADファイルをHoloLensで見られるようにする「Holo-View」を展開している。

Holo-ViewにはPersonal EditionとEnterprise Editionがあり、Personalであれば1.799ドルで利用できる。Enterpriseの場合、5000ドルからだが、扱えるCADモデルが25種類と大幅に増える。利用については連絡してほしいとのこと。


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HoloLightはソフトウェアの会社だが、入力デバイス「Holo-Stylus」の開発も進めている。これはペン型のデバイスで、MR空間に自在に文字を書いたり、CGオブジェクトを微調整するといった使い方を想定している。

詳しくは上の動画を参照していただきたい。現在、同社のサイトで事前予約を受け付けているが、注文確定ではなく購入希望者リストに入るだけであることに注意しよう。入力欄には、どんなアプリを開発するのかなど、いくつかの質問に答える必要がある。発売日や価格は不明だが、2018年内には開発者キットを出したいとのことだった。興味がある方はチェックしてみよう。

●Innoactive Hub

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VRを使った訓練システムを出展していた。この仕組みにより、VR空間で家具、車の組み立てなどを訓練したり、空間に文字を書いたり、他の人と同じ空間を共有することができる。この仕組みはAudiとVolkswagenがすでに導入しているとのこと。


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価格は1万ユーロで、一通り機材の入ったケース「VR Suitcase」を購入し、以後1ヶ月ごとに75ユーロをユーザー単位で支払うというものだ。

ちなみに、VR Suitcaseは単体での購入も可能だ。PCの性能や形態によって変わるが、5999〜9999ユーロ+送料で注文可能だ。注文先はこちら。ちなみに筆者が試したところ、配送先にJapanを指定できたが、zip code(郵便番号)の入力でエラーになってしまった。オーダーのページにはチャット形式の質問受付が自動で立ち上がるので、気になる方は問い合わせてみるといいだろう。

おわりに

展示と講演のほとんどが産業向けに特化しており、各種企業はAudi、volkswagen、bosch、GEなどの大手企業とタイアップ、実際の作業現場での適用などを積極的にアピールしていた。また、実際のソリューション販売、実績が出ており、ゲーム以外の分野において日本よりも進んでいる印象を受けた。

昨今のAR/VRの盛り上がりについて、市場として成立するまで大きくなるか、という問いかけを聞くことがある。AWEに行って感じたのは、ヨーロッパではAR/VRを現実に使えるようにして市場を作るために、今のデバイスの性能や周りの環境の制約を理解した上で、実現させる仕組みを作って一歩ずつ未来を実現させようとしていることだった。

次回のAWEはアメリカで2018年の5月下旬に開催される。様々な分野のデバイス、ソリューションを展開する企業が一つに集まるので、様々な産業分野でAR/VRの事業を進める企業には注目のイベントとなるだろう。

PANORAより転載(2017年10月26日公開の記事)

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