中国、天安門事件最後の政治犯を釈放へ —— だが彼はより大きな監獄に移るだけかもしれない

2_12

1989年6月5日、人民解放軍の戦車の前に立ちはだかる男性。

Photographer: Jeff Widener

人権団体の情報によれば、2016年10月15日土曜日(現地時間)、1989年の天安門事件で拘束された最後の政治犯の苗徳順(Miao Deshun)氏が30年近い歳月を経て、刑務所から釈放される見通しだ。

健康状態が芳しくないと伝えられる苗氏について、自身も共産党を非難したことによって投獄された経験があり、現在、重い病に伏している著名な人権活動家の胡佳(Hu Jia)氏は「小さな刑務所から出ようとしているが、もっと大きな監獄へと足を踏み入れようとしているだけかもしれない」と、ワシントン・ポストに語った。

「釈放後も、公安警察に監視されていると気づくだろう。これは彼が刑務所に入る前には想像もしなかったことだろうけれど」と、胡氏は語る。

「刑務所からの釈放は必ずしも、自由になれることを意味するのではない」

中国共産党は民主主義と自由を求める学生主導のデモを、「反革命主義の暴動」と呼び、容赦なく抑圧してきた。

こうした流れが、1989年6月4日の弾圧につながった。政府は軍隊や戦車を展開し、数知れないほどの死者を出した。政府の公式発表では241名と報告されたが、推定では数百名から数千名とも言われる。

この弾圧とともに、天安門事件は中国本土では未だに天安門事件タブーとされている。共産党はネット上の「天安門」という単語を検閲し、また、歴史の教科書からも抹消している。中国本土で育った若者たちは、『グレートファイアーウォール』によって海外メディアへのアクセスを遮断され、弾圧に関する情報を得る手段を持たない。

GettyImages-495014223-

天安門事件25周年になる6月4日を目前にして(2014年6月1日香港)。

Jessica Hromas/Getty Images

苗氏は天安門事件の際、燃えている戦車に籠を投げ入れたとされ、執行猶予付きの死刑を宣告された。

苗氏への判決は、1991年には終身刑、1998年には20年に減刑され、今年再度11カ月減刑された。その結果、サンフランシスコにある人権団体Dui Huaは、5月に出した声明文で、苗氏が北京にある刑務所から10月15日に解放されると伝えた。

しかしAP通信は、中国公安部と北京最高裁判所がファックスでのコメントを受け付けないことから、日付を「独自に確定できなかった」と報じている。

現在51歳で、事件当時工場労働者だった苗氏は、「刑務所での労働や再教育、懺悔文を書くことを拒否した」と、苗氏と同じ刑務所に入っていたWu Wenjian氏は語る。Wu氏によれば、苗氏の頑固な性格がより重い刑罰や、長い独房生活につながったという。

「あの時、死刑判決を受けた者は、少なくとも判決と再教育を受け入れるふりをした。だが、彼はそうしなかった。彼は自分の主張を訴え続け、転向を拒んだ」とWu氏はワシントン・ポストに語った。

GettyImages-495014191

民主化活動家たちによる抗議デモ(2014年6月1日香港)。

Jessica Hromas/Getty Images

大統領選挙の民主党と共和党の候補者、ヒラリー・クリントン氏とドナルド・トランプ氏は両者とも、過去に中国の人権問題について言及している。

2009年、当時、国務長官だったクリントン氏は、天安門事件の悲劇から20年を迎えた日に、中国に「過去の悲劇的な事件」として認めるよう要求した。またBBCによればクリントン氏は中国政府に対して「死者や投獄された人、行方不明になった人について公式に報告する」ことに加えて、「事件から学び、傷を癒すこと」を求めた。中国政府は当時、このクリントン氏の言葉を「根拠のない非難」と呼び、拒否した。

ドナルド・トランプ氏は、3月の共和党予備選挙集会において天安門事件のことを「暴動」と呼び、中国のことを、混乱を「力」によって抑えつける「強く、パワフルな政府」と呼んだ。

source: wikipedia

[原文:China is reportedly releasing the last Tiananmen detainee — but he might find himself stepping into 'a bigger prison'

(翻訳: 宮脇真綸)

Popular

あわせて読みたい

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み