11・11「独身の日」に向け臨戦態勢の中国人——店舗で「試着」しネットのカートに“取り置き”

10月中旬、友人から買い物に誘われて、中国・大連のショッピングセンターに行った。日本ブランド「ハニーズ」でパンツを試着し、気に入ったので買おうとすると、友達に、「ちょっと待って。ネットの方が安いかも」と止められた。調べてみたら、店の価格は199元(約3400円)、ECサイトのタオバオ(淘宝)では159元(約2700円)だった。

試着する女性

友達に買い物に誘われたが、試着してネットで買うことを勧められた(写真はイメージ)。

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友人はさらに言った。

「双11まで待った方がいいよ。もっと安くなると思うから。これから毎週土曜日と日曜日は、店に試着に来よう」

「双11」こと11月11日は中国で「独身の日」と呼ばれる。「独り者」を意味する1が4つ並ぶのが由来で、昔は大学のキャンパスで合コンが行われていたらしい。けれど、私が大学に入ったころには、この日は「買い物の日」「ネットセールの日」に変貌していた。仕掛けたのは、今や海外でも有名になった中国最大のEC企業アリババだ。

タオバオのサイト

タオバオの11月11日のセールコーナー。さまざまな商品の値下げが予測されている。

タオバオ公式サイト

アリババは2009年11月11日、「恋人のいない皆さん、ネットで買い物をしましょう」と、自社サイトタオバオでセールを行った。当時はネットショッピングをする人が少なく、知名度アップが目的だったようで、その日の売上高は1億元(約17億円)しかなかった。その後、スマホやネットショッピングが急速に普及し、2016年11月11日はタオバオ、Tmall(天猫国際)などアリババのECサイトだけで1207億元(約2兆円)を売り上げた。ユニクロは2015年、Tmall出店企業中最速の2分35秒で売り上げ1億元を突破した。

アリババ以外にも中国にはJD.com(京東商城)、蘇寧易購といった著名ECサイトがあり、いずれも独身の日のセールを実施する。全部足した売上高はとんでもない額になるはずだ。

11日0時になったら決済

アリババはセールを盛り上げるため、11月に入るとテレビの特番まで企画する。11月10日の夜になると、若者だけでなく子どもがいる30代の女性たちもネットにつないで、日付が変わるのを待つ。大幅に割り引きされている商品が並ぶ画面を前に、「買わないと損」という気にすらなってくる。今年の11日は土曜日だから、夜更かしもしやすい。

ハニーズのパンツ

私が試着したハニーズのパンツ。店では199元だったが、11月11日まで待つと半額で買える。

タオバオ公式サイト

10月に一緒に買い物に行った友人は、「店で試着して気に入った商品は、タオバオショップのカートに入れて“取り置き”しておくの。そして11日0時になった瞬間に決済する」と戦術を教えてくれた。

私がその日気に入ったパンツも、店頭価格の半額の99元(約1700円)になるようだ。もちろん、同じことを考えている人が大勢いるので、もたもたしているとすぐに売り切れる。

服だけでない。電子機器、家具……何でも安くなりそうな空気が、今のネット上に漂っている。

Tmallでは11月11日限定で使える300元の金券を、100元で売っている。例えばiPad mini4(128GB)を買うとするなら、11月11日に370元値下げされる商品を、クーポンを使うことでさらに200元安く手に入れられる。普段3288元(約5万6000円)のところを、2718元(約4万7000円)で買えるのだ。

物流会社は「試練の日」

20代の女性たちは、この日にどれくらい買い物するのか。周囲に聞いてみた。

「この日を逃してはいけない」と鼻息荒いのは謝照偉(24)。昨年買った洋服2着のうち、1着は品質が良くなかったが、今年も洋服はもちろん、化粧品も狙っている。

宅配風景

11月11日前後、宅配企業は配送員の確保に追われ、「試練の日」と言われる。

撮影:浦上早苗

ただ、ネット上にセール商品があふれかえっているのを見ると、普段の価格に比べて本当に安いのか、少し疑問に感じているという。「理性的にお得な買い物をする」のが今年の目標だ。

李施雨(23)は「在庫を処分できるし、消費者だけでなくお店にとってもメリットがある」と話した。

一方、買い物をしないと答えた友人も何人かいた。理由は「配送が遅いから」。

11月11日は、物流会社の「試練の日」と言われる。大量の注文をさばききれず、配送が数週間かかることもある。最近はかなり改善されているが、注文翌日配送に慣れていると、数日でも待ちたくないと感じる人も多い。また、「いらないものまで買ってしまい、後で後悔したくない」という声もあった。

私の親世代になると、11月11日がネットセールの日だと知ってはいても、実際に買い物をする人はあまりいない。少なくとも私が聞いた限りでは、見当たらなかった。

街の店舗も対抗セール

ワトソン

ショッピングセンターやデパートのテナントも11月に入ってセールを始めている。

撮影:王夢夢

中国の消費市場には「金九銀十」という言葉がある。大型連休があり、気候も安定した9月から10月にかけて、家電や車、住宅など消費財がよく売れることから、そう呼ばれている。11月は以前は消費の閑散期だったが、「独身の日」はその伝統を一変させた。EC業界は二匹目のどじょうを狙い、12月12日も「双12」としてセールを始めた。

もちろん、デパートやショッピングセンターも、客を吸い取られるのを座して眺めているわけではなく、数年前から「独身の日」セールを実施している。

けれど、デパートはいつもセールしているイメージだし、仕事の帰りだとなかなか時間がないし、何といってもネットの方が安い。

今年の独身の日も、デパートやショッピングセンターは「ネットで買うための試着の場」になりそうだ。

(文・王夢夢、編集・浦上早苗)

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