氷は下からも溶けていた? 南極大陸の地下に存在が指摘される「熱源」とは

南極の地図

南極の氷が動くスピードを可視化した地図。

NASA's Goddard Space Flight Center Scientific Visualization Studio

  • 南極は地球上のどの場所よりも早く温暖化が進んでいて、それが地表の氷が溶ける原因となっている。
  • 南極大陸の分厚い氷床の下の溶けた水が、潤滑油のようになって氷床を海へと動かしている。
  • 新しい研究は、マントル・プルームが南極西部の地下に存在するとのアイデアを裏付けるものだ。
  • このマントル・プルームが南極西部の氷をこれまでになく大量に消失させている可能性がある。

今日、南極大陸は地上の熱の影響を大きく受けている。これも200年にわたり二酸化炭素を排出し続けた、人間の活動のおかげだろう。

一方で、南極大陸は地下からの熱にも直面していると考える研究者が増えている。マントル・プルームと呼ばれるマントル(地球の核と地殻の間にある層)の内部から発生する上昇流の熱が地殻から漏れ、南極大陸の氷床の下部を溶かしているのだ。

このアイデアが最初に提唱されたのは、30年前のことだ。マントル・プルームの影響は、氷床の消失が最も急速に進み、地球の海面上昇にも貢献している南極西部で特に顕著なようだ。これが偶然だと考える科学者は(少なくとも初期段階においては)少ない。

南極大陸

衛星観測により、南極西部で最も劇的に氷床が薄くなっていることが分かった。

ESA/Planetary Visions

「最初はクレイジーな考えだと思っていた」気候学者で、NASAジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory)の氷の研究者でもあるエレーヌ・セロウシ(Hélène Seroussi)氏は、プレスリリースの中でこう述べた。「これだけの熱量があって、どうすればその上に氷が存在できるのか、わからなかった」

しかし、セロウシ氏らによる新たな研究は、高度なコンピューター・モデリングを使って、マントル・プルームの存在と、それが氷床を溶かす原因になっていることを裏付けるものだ。

この研究成果は『Journal of Geophysical Research: Solid Earth』で、9月1日に公表された。

地下を探る

地球のイメージ図

Shutterstock

地球内部の熱は、常に地表を暖め続けている。全ての氷床の下の岩盤も含めてだ。だが、それは地下から一部の氷を溶かしても、地上で積もった雪や氷により、通常は相殺される。

だが、南極の氷を調査する科学者らは、長い年月を経て、南極西部がその例外であることを示してきた。衛星データによると、南極西部では大陸の他のどの場所よりも劇的に氷床が薄くなっている。

産業革命以来、北極と南極は地球上の他のどの地域よりも早いスピードで温暖化が進んでいる。南極大陸では氷床が上から溶け始め、その溶けた水が氷床の上に溜まっていて、巨大氷山の誕生を促す可能性もある。

だが、気温の上昇だけでは南極大陸で失われた氷の量を完全には説明できない。そのため、研究者らは近年、その答えをより深く探ろうとしてきた。

答えは氷の下に

氷河の下の湖と川

南極大陸の氷河の下の湖(薄い水色の点)と川(濃い青色の点)のシステム。マリーバードランド・ドーム(赤色の矢印)は南極西部の地下にある。

NSF/Zina Deretsky

こうした研究によって、氷河の下にある湖や川の巨大システムが明らかになり、報告された。穴が掘られたり、実地調査まで行われた。

この水が潤滑油のような役割を果たし、氷床を雪山から海へ向かって動かしている。氷河の下を流れる水が多い場所ほど、氷床が動くスピードも溶けるスピードも速い。

科学者らはまた、「マリーバードランド・ドーム(Marie Byrd Land Dome)」と呼ばれる、南極西部の地殻にある隆起の謎にも取り組んでいる。当初、その場所の地殻は薄いと考えられていたが、地震探査測定の結果、その考えが誤りであることが明らかになった

何か別のものが作用している —— そして、最新の地震探査(地殻とマントル用の3Dレーダー)によって、南極西部の地下にマントル・プルームが存在する可能性が出てきた。(音の伝わるスピードが固体中よりも液体中で遅くなるように、地震の揺れが伝わる速度もより高温で、粘度が高く、密度の低い岩盤の中で遅くなる)

地震探査測定の結果

地震探査測定の結果、南極西部の地下にマントル・プルームが存在する可能性が出てきた。

Helene Seroussi et al./JGR Solid Earth; Business Insider

マントル内部で起きたイレギュラーの可能性もあることから、セロウシ氏とその同僚らはアメリカのイエローストーン国立公園の地下にある巨大なマントル・プルームのシミュレーションに使われたコンピューターモデルを借りることにした。

NASAジェット推進研究所によると、研究者らはマントルや南極大陸、その氷床について、分かっている全ての物理特性 —— 変化する位置、動き、動きによって生じる摩擦、溶解速度など —— を入力し、何度もシミュレーションした。

こうしたシミュレーションによって、マントル・プルームから発生する熱量が、アメリカの非火山地域の通常のマントルに比べ、最大3倍多い可能性が示された。イエローストーン国立公園の地下のマントルと比べても、その熱量は火山活動が盛んなこの地域の75%にあたる。

この熱量を南極大陸の地下の溶解速度と比較したところ、南極西部以外で一致する場所はなかった。南極西部では、地殻の亀裂や断層から急速に熱が上に向かって放出されている可能性があると、研究者らは論文に書いている。

「マントル・プルームのような熱源がなければ、我々のシミュレーションによると、通常の地熱と地殻資源から氷の下にある膨大な水を作り出すのに必要なエネルギーが供給されることはない」

[原文:Hot rock under Antarctica may be melting some of its ice sheets from the bottom-up

(翻訳/編集:山口佳美)

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