国境の壁は“物干しざお”、メキシコ・ティファナでの暮らし

国境付近で暮らす人たち

72歳、年金暮らしのペドロは国境フェンス近くの家で暮らしている。

Edgard Garrido/Reuters

大統領選から1年、トランプ政権はメキシコとの国境に壁を建設するための推定216億ドル(約2兆5000億円)の予算を、まだ議会(またはメキシコ)から得られていない。壁の建設はトランプ大統領の選挙戦における目玉とも言える公約だったが、大統領が国土安全保障省長官に指名したキルステン・ニールセン(Kirstjen Nielsen)は11月8日(現地時間)、壁の建設は不要と上院委員会で発言した。

先月、アメリカ税関・国境警備局は、国境の壁の8つの試作品を発表した。これに先立ち、下院の国土安全保障委員会は壁の建設費として100億ドルを承認、だがこれは上院で否決される可能性が高い。

一方、議会は4月下旬、1990年代半ばに設置された国境のスチールフェンスの改修予算1億4600万ドルを承認している。

国境は、アメリカとメキシコを分かつだけのものではない。そこで暮らす人もいる。

国境の町メキシコ・ティファナには、粗末なツリーハウスから、カリフォルニアや太平洋を見渡すマンションまで、さまざまな暮らしを送る人たちがいる。ロイターが取材した。

国境の町の暮らしを見てみよう。

アメリカとメキシコの国境、約3110キロのうち、スチールフェンスは約1050キロにおよぶ。残りのエリアには、探知機、国境警備隊、ドローンなどによる「バーチャルフェンス」が設置されている。

国境のフェンス。左はサンディエゴの国境監視事務局、右はメキシコ・ティファナ。

国境のフェンス。左はサンディエゴの国境監視事務局、右はメキシコ・ティファナ。

Wikipedia Commons


建築家カルロス・トーレスは、ティファナのマンションに30年間住んでいる。国境のフェンスは、庭の端から始まっている。彼は自分のマンションを「北西メキシコの一番最初の家」と名付けているとロイターに語った。

ティファナの国境付近で暮らす男性

Edgard Garrido/Reuters


トーレスの庭には、カリフォルニアやメキシコの町への方向を示す看板など、国境ならではのアイテムが散らばっていた。

トーレスの庭

Edgard Garrido/Reuters


トーレスはトランプ大統領の壁が国境を超える不法移民を食い止めることができるとは思っていない。「壁は不法移民を止められないだろう」と彼はロイターに語った。「大統領は現状をまったく理解していない。人々は毎週、このフェンスを越えている」

国境沿いに続くスチールフェンス

Edgard Garrido/Reuters


72歳、年金暮らしのペドロも同じ意見。

ペドロ

Edgard Garrido/Reuters


「トランプ大統領も、壁も、1人も止めることはできないだろう。できたとしてもほんの一瞬だけだ」

ペドロ

Edgard Garrido/Reuters


一緒に暮らすのは愛犬のオレホーナ。

ペドロと愛犬

Edgard Garrido/Reuters


グアテマラ人のシェフ、ホアキンは名字は公にしたくないと語った。住まいは、自分で作った粗末なツリーハウス。

ホアキン

Edgard Garrido/Reuters


ホアキンはほぼ無一文で、数年前にアメリカから国外追放された。「もう何度も国境を越えようとしているので、国境警備隊の隊員と顔なじみになった。だけどアメリカには一度も戻れていない」。彼はティファナでゴミを集め、地元のリサイクル業者に売って収入を得ている。

ツリーハウスで暮らすホアキン

Edgard Garrido/Reuters


27歳のメキシコ人男性、カルロスはティファナの二重フェンスの隣の小さな小屋で暮らしている。彼もまたアメリカから国外追放された。トルティーヤを焼いて、売っている。

カルロス

Edgard Garrido/Reuters


モーゼスとサラは大工と歯科助手。2人も匿名を条件に取材に応じた。国境のフェンス近くの小さな家で暮らしている。

モーゼスとサラの家

Edgard Garrido/Reuters


「トランプ大統領は演技上手な人種差別主義者で、神や人のことを何も分かっていない」とモーゼス。

メキシコ側から見たスチールフェンス

Edgard Garrido/Reuters


2人は国境フェンスを物干しに使っている。

スチールフェンスに干された洗濯物

Edgard Garrido/Reuters


別の家族がフェンスの近くでゴミを燃やしている。これが彼らのごみ処理のやり方。

ゴミを燃やす家族

Edgard Garrido/Reuters


メキシコ人の大工、ポルフィリオは家族と一緒にティファナ郊外で暮らす。写真は自宅の外で息子の髪の毛を切っているところ。

ポルフィリオ

Edgard Garrido/Reuters


カリフォルニア州チュラビスタとティファナを分断するフェンスは太平洋まで続いている。メキシコ側で釣りをする男性。

国境付近で夕暮れ時に釣りをする男性

Edgard Garrido/Reuters


トランプ政権の移民政策が実現すれば、フェンスは今よりも、より高いものになるだろう。

駆け出してきた少女

フェンスの近くにある家から少女が駆け出してきた。

Edgard Garrido/Reuters


(敬称略)

撮影:Edgard Garrido/取材:Lizbeth Diaz

[原文:17 photos that show what life is like on the US-Mexico border

(翻訳:まいるす・ゑびす/編集:増田隆幸)

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