Amazon Echoに対抗心燃やすグーグル、火花を散らすAIスピーカー戦争のゆくえ

先週、ついにスマートスピーカーの本命である「Amazon Echo」が日本上陸を果たした。先行するアメリカで最も成功しているスマートスピーカーだけに、日本で普及する期待も高い。一方、Amazon Echoを迎え撃つのはGoogle Homeだ。これから、2社による「家の中の一等地をかけた争奪戦」が始まる。

Amazon Echoは日本でも「大成功」するのか?

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アマゾンは日本語開発に1年以上を費やしたと公表しているが、ユーザーが満足できる対応をしてくれるのか?

アマゾンがAmazon Echoを日本市場に投入するにあたり、新たに開発してきたのが日本語対応だ。日本語には同音異義語、同じ言葉であってもイントネーションによって意味が変わる言葉などが多い。そうした言葉を聞き取って理解し、適切な答えを返す技術に相当、時間を要したようだ。

Amazon.comのAlexa担当シニア・バイス・プレジデント トム・テイラー氏は「日本語対応のために全く新しい言語処理モデルを開発した」と語る。

Alexa担当シニア・バイス・プレジデント トム・テイラー氏

Amazon本社のAlexa担当シニア・バイス・プレジデント トム・テイラー氏。

実際、コンテンツ業界関係者のなかでも「アマゾンは相当、日本語処理の開発に手間取っていたようだ。他社に遅れたのも、それが原因のようだ」と語る人もいるほどだ。日本語開発には1年以上を費やしたと公表しているが、実際に使ってみて、ユーザーが満足できる対応をしてくれるかどうか、興味深いところだ。

その点において、ややリードしているといえるのがグーグルだ。グーグルは、長年の検索エンジン事業によって、「日本のユーザーが何を欲しているか」を理解している。また、PCやスマホ向けに日本語変換ソフト「Google日本語入力」も提供しており、日本人がどういった日本語を打っているかを把握している。もちろん、すでにスマホ向けに音声入力も手がけており、音声入力の実績を積んできているのは相当なアドバンテージだ。

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Amazon.comのAlexa担当シニア・バイス・プレジデント トム・テイラー氏は、「日本語対応のために全く新しい言語処理モデルを開発した」と語る。

筆者も自宅でGoogle Homeを使っているが、かなりの割合で認識してくれる。また、スマホのGoogle アシスタントでも、話した言葉が見る見るうちに正しく変換されていく様子は本当に驚いてしまう。

ユーザーがどういった声でしゃべり、どんな内容を発するかを理解するには、単にスマートスピーカーだけでサンプルを集めるのは難しい。スマートスピーカーに対しては、限られた命令や会話しかしない。どうしても、一人あたりから得られる会話例というのは数が限られてしまう。その点、グーグルはスマートスピーカーに加えて、スマホやPC、テレビといったデバイスからユーザーの命令や会話を吸い上げて、分析することができる。

幅広いデバイスで機械学習を行える点において、アマゾンよりもグーグルのほうが優位に立っているような気がしてならない。

対アマゾンの火花散らすグーグル

Google Homeとピカチュウ

ピカチュウと会話できる拡張機能「ピカチュウトーク」を2017年内にサービス開始する(リリースによると、Alexa向けにもスキルを提供する)。提供はポケモン社。写真中央はグーグル日本法人の徳生裕人製品開発本部長。

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Actions on Google対応サービスの例。Google Homeに「食べログと話す」などを話しかけるとサービスを呼び出せる。

アマゾンが日本発売の発表会を行った翌日、グーグルも対抗するように「Actions on Google」の記者説明会を実施した。グーグルとしては、アマゾンに対して相当、ライバル視している様子がうかがえる。

説明会において、グーグルの徳生裕人製品開発本部長が真っ先に語ったのが「Google アシスタント対応のデバイスが世界で1億台、稼働している」ということだった(編集部注:一方のAmazonは発表会で、Amazon Echoシリーズを数千万台出荷していると語った)。

グーグルとしては、単にスマートスピーカー単体で勝負を挑もうとしているわけではない。同じGoogleアシスタントが、スピーカーであるGoogle Homeだけでなく、AndroidやiPhone、さらにはクルマ、テレビなどで、すでに稼働しているという点が強みというわけだ。

もちろん、この点においても、アマゾン陣営でも着々と手を広げているおり、ロボット掃除機や冷蔵庫などがAlexa対応を始めつつある。

スマホにおいては、Androidを持つグーグルが圧倒的に強いが、アマゾンも中国・ファーウェイと組むことで、Alexa対応のスマホを投入するなど、巻き返しに必死の構えだ。

スマートスピーカーの本質は当然「スピーカー」だ。そのため、アマゾンは日本市場で月額380円(Echoユーザー向け料金)、4000万曲以上を聞ける「Music Unlimited」を投入してきた。アメリカでは音楽のストリーミングサービスが盛況で、「スピーカーでストリーミングの音楽を聴く」という当たり前のことをしたいために、Amazon Echoがよく売れたという経緯がある。

ただ、スマートスピーカーの登場によって、我々は「声で機械を操作する」という新しい体験を手にすることができる。スイッチ、ボタン、キーボード、マウス、タッチパネルに続き、声で機械やコンピューターを操作できるのだ。ここで単にスピーカーと話せるだけでは、スマートスピーカーの存在価値はない。情報を引き出し、話し相手になってくれるだけでなく、家の家電をコントロールできるようになることで、付加価値が一気に増してくる。

将来的には、スマートスピーカーに話しかけるのではなく、テレビや冷蔵庫、洗濯機、照明、家の中にあるあらゆるモノに直接、話しかける日が来るはずだ。そのとき、我々はそれらの家電に対して「Alexa」と話しかけるのか、それとも「OK Google」と話しかけるのか。

アマゾンとグーグルはこれから様々なパートナーと話し合い、AlexaやGoogle アシスタントに対応するデバイスを増やしていくのが、本当の戦いといえるだろう。

スマートスピーカーの登場は、あくまで序章に過ぎないのだ。


石川温:スマホジャーナリスト。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。ラジオNIKKEIで毎週木曜22時からの番組「スマホNo.1メディア」に出演。

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