阪大発ベンチャー・ジェノミックス10億円調達 —— 世界初「再生誘導医薬」に挑む

再生医療——皮膚や骨髄など生体組織から採取した細胞を体外で大量に培養し、細胞そのものや目的とする臓器の組織構造を構築して患者に移植する技術——は1980年代から次世代の移植医療として注目を集めてきた。2006年には京都大学の山中伸弥教授らが「*iPS細胞(人工多能性幹細胞)」の生成に成功し、再生医療を大きく前進させた。

そして、リプロセルヘリオスなどの新たな日本企業が再生医療の世界で生まれた。

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幹細胞は損傷した組織において必要に応じて増殖し、組織の機能的な再生が促される。この生体が本来備える組織再生機能を最大限に効率化させる、新しい作用メカニズムに基づく医薬品が再生誘導医薬。(写真は本文とは関係ありません)

REUTERS/Kim Kyung Hoon

2017年11月、「再生誘導医薬」という聞きなれない医薬品を開発するバイオベンチャー「ジェノミックス(本社:大阪府茨木市)」が総額10億円の資金を調達した。関係者によると、今回の調達ラウンドに参加したのは、医療ポータルサイトを運営するエムスリー(M3)や大阪府が出資する大阪バイオファンド、みやこキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルを含む8社。

ジェノミックスが開発を進める再生誘導医薬とは何か?

生体には本来、ケガや病気で損傷し失われた組織を自ら修復、再生する自己組織再生能力が備わっているという。これはさまざまな組織に分化することが可能な幹細胞が体内に存在するためだ。

幹細胞は損傷した組織において必要に応じて増殖し、組織の機能的な再生が促される。この生体が本来備える組織再生機能を最大限に効率化させる、まったく新しい作用メカニズムに基づく医薬品が再生誘導医薬である。

生まれながらに備わるこの自己再生能力を薬剤の投与によりコントロールできれば、薬によって体内で再生医療と同等の治療効果をもたらすことができる。生きた細胞を特殊な施設内で大量に製造する必要がなくなり、従来型の再生医療の最大の課題とされてきた製造コストの問題を解決できるという。

ジェノミックス

ジェノミックスのHPより

ジェノミックスは2006年、大阪大学大学院医学系研究科の研究成果を活用し、骨髄内に存在する多能性幹細胞を血流を介して損傷した組織に集積させる作用をもった生体内因子を医薬品として開発するために設立された。ジェノミックスと大阪大学は翌年から共同研究を本格化。

文部科学省の科学技術振興機構(JST)や経済産業省の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などからの助成金を得ながら、疾患モデル動物を用いた薬効試験を進めた結果、その治療効果を証明してきたという。現在までに再生誘導医薬に関連する多数の特許を出願している。

再生誘導医薬によって損傷組織に供給された多能性幹細胞は、行き着いた組織の環境に応じて、皮膚や骨、神経、筋肉など必要とされる機能を持った細胞に分化することができるため、再生誘導医薬には幅広い疾患に対する治療効果が期待されるという。

近い将来、再生誘導医薬が心筋梗塞や脳梗塞、脊髄損傷、難治性皮膚疾患などの治療に活用されるようになるのか?ジェノミックスの今後の開発が注目される。

*iPS細胞(人工多能性幹細胞):人間の皮膚などの体細胞に、ごく少数の因子を導入し、培養することによって、さまざまな組織や臓器の細胞に分化する能力とほぼ無限に増殖する能力を持つ多能性幹細胞に変化する細胞(「京都大学・iPS細胞研究所」より)

(文・佐藤茂)

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