副業している人の中で1人あたりの平均副業・兼業件数は2.88件、かける時間は週末夜を中心に正社員で週7.4時間 —— 。来春に政府による副業解禁を控え、副業・兼業に注目が高まる中、クラウドソーシング大手のクラウドワークスの調査で、リアルな副業事情が明らかになった。実際に副業をしている人はどんな働き方をしているのか。副業に興味を持つ理由、そして不安とは? 副業をめぐる「現場の声」を聞いてみよう。
インターネット上で個人と企業の仕事の受発注を仲介するクラウドワークスが、自社のサービス利用者約700人を対象にしたアンケート「兼業・副業の最新事情」によると、「副業」とはいえ「収入源の複数化」という意図が目立つ。平均の副業件数は2.88件で、約半数が「本業と違う仕事内容」をしている。その理由は、
「気分転換、本業と違うことをしたい」(30代女性)→本業は会社勤め、副業はデータ入力検索
「スキルアップや自分試し」(40代男性)→本業は会社勤め、副業はWEBデザイン
「効率よく働きたい」(20代女性)→本業は会社勤め、副業は事務・資料作成
といった声が上がる。
副業をしようと思ったそもそもの理由は? との問いには、
「これからの時代はパラレルワークを行うことで、独自の専門性を高めることが需要であると感じたから」(30代起業家男性)
「時間を活用しながら、社会とのつながりを持ちたかったから」(30代個人事業主女性)
といった回答が寄せられた。副業には、単純な収入アップ以外の目的があることをうかがわせる。
働き方見直しでの収入減がきっかけ
「兼業・副業でどのくらい稼いでいる?」に対しては、クラウドソーシング経由で仕事を得ている人に限られるが、年間10万円以上稼いでいる人は3人に1人に過ぎなかった。1万円未満という人は2割で、100万円以上は6%と、ばらつきがある。
出典:クラウドワークス「兼業・副業の最新事情」
回答者の2割を占める正社員で働きながら副業する人についてみてみると、副業に使う時間は週7.4時間。副業に取り組むコアタイムは、週末の午後8時〜午前零時との実態が表れた。
注目は、正社員にしぼって聞いた動機だ。
「会社で働き方が見直されて残業がしにくくなり、収入が減ったため。もっと家計に余裕がほしくて始めた」(30代正社員女性)
「会社勤めでは、報酬も時間も限りがあること」(40代正社員女性)
多様な働き方を求める風潮の一方で、「働く時間減による収入減」がきっかけという、切実な声が上がっている。
「残業なしで帰れるなら」
政府は国がつくる就業規則の副業禁止規定を改定すると共に、企業向けに副業に関する手引きとなるガイドラインを策定。いずれも来春、公表する。この動きを報じたBusiness Insider Japan記事には、Yahoo!ニュース上で約1400件のコメントが寄せられた。
厚生労働省の「副業・兼業の現状と課題」によると、副業希望者は年々増えているものの、すでに「副業を持っている人の数」は、234万人とまだわずか。大半は、副業未経験者と思われる人たちの、Yahoo!上のコメントには、希望と不安が混在する。
副業に前向きな層からは
「副業で稼ぐ能力があるのに、会社がそれを抑えているなんてナンセンス」
「副業ができるならセカンドキャリアの形成をしたいと思う。老後を考えると、一つのことだけでは不安を感じる」
「15年前くらいのサラリーマン時代にコソコソやっていた副業が今、本業にまでなって法人化まで出来きました。……副業でアイデアを試したり、致命傷にはならない程度の失敗を重ねて経験を積むことは、成功率の高い事業を産み出すきっかけになる」
と前向き派の声の一方で、
「コレって労働時間云々言ってる事と真逆の事じゃないの? 副業始めて過労で倒れたらどっちの(企業の)責任にもならず、副業始めた奴が悪いって済ませられるね」
「副業ができるほど時間的余裕のある人の方が少ないと思う。」
「残業なしで帰れるなら、副業したいけどねww」
など、過労をはじめ働き方をめぐる不安も大きいようだ。
疑問や不安が集中する「2社で働いた時の労務管理をどうするか」「事故が発生したとき労災保険の適用は」といった点については、現状、厚労省内の検討会で時代に合った見直しを協議中。
85%の企業が副業・兼業を「認めていない」としてきた日本。政府による事実上の解禁には、国や企業のみならず、関わるすべての人たちでの議論が必要なことは間違いない。
(文・滝川麻衣子)
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