ライバル、自然、己との戦い —— 世界で最も過酷な9つの耐久レース

ランナー(左)とそのペース・メーカー(右)

ハードロック100ウルトラマラソンの初日、日没のエンジニア・パス(Engineer Pass)を走るランナー(左)とそのペース・メーカー(2005年7月8日、コロラド州ユーレイ近く)。

AP Photo/Brett Butterstein

マラソン、トライアスロン、アドベンチャーレースは、参加者を肉体的、精神的に新たな境地へと導く過激な試練だ。

だが、世界各地で開催される究極の耐久レースは、レベルが違う。

人間の心と体の極限が試される。

砂漠や山、海を100マイル(約160キロメートル)以上超えていかなければならないレースもある。何日もほぼ眠らず、幻覚を見るほど衰弱するようなレースもある。いつレースが始まるのか、どのような障害が待ち受けているのか、事前には分からないレースさえ存在する。

だが、参加者はレースがどんなに過酷なものかは、分かっている。

世界で最も過酷な耐久レースを紹介しよう。1つでも完走できれば、本当の意味で自分の可能性の限界にチャレンジしたと言えるだろう。


「ブルータル・エクストリーム・トライアスロン(Brutal Extreme Triathlons)」は、世界で最も過酷なトライアスロンかもしれない。

笑顔で走る女性

Brutal Events

「最も過酷な」トライアスロンを1つだけ選ぶのは不可能に近い。それぞれが大会独自のチャレンジを用意しているからだ。出場選手は過酷な状況でスイム、バイク、ランの3種目をこなすことが求められる。

だが、アイアンマンレースの2倍の距離を行く「ブルータル・エクストリーム・トライアスロン(Brutal Extreme Triathlons)」の「ダブル・ブルータル」はトップクラスに入る。イギリスのウェールズで開催され、スイム4.8マイル(約7.7キロメートル)、バイク224マイル(約360キロメートル)、ラン52マイル(約84キロメートル)で構成される。

これで物足りなければ、アイアンマンの「3倍」バージョンが2019年に復活するとの噂もある。

「自分でも怖くなるほど大きな夢をみよう」とレースのウェブサイトは呼びかける。

「バークレー・マラソン(Barkley Marathons)」の完走者は、1986年の大会開始以来、15人しかいない。

険しい山道を下る男性

GravitasVOD/YouTube Movies

バークレー・マラソンにはウェブサイトがない。つまり、このウルトラマラソンへの参加方法は秘密だ

レースは創設者ゲイリー・「ラザルス・レイク」・カントレル(Gary "Lazarus Lake" Cantrell)氏がほら貝を吹いてから1時間後に始まる。それがレース当日の真夜中なのか、正午なのか、いつになるかは分からない。コースはテネシー州フローズンヘッド州立公園の険しい山中の、100マイル(約160キロメートル)の曲がりくねった道だと言われている(130マイル近いと言われることもある)。制限時間は60時間。

コースはレースの前日まで明らかにされず、そのほとんどがいわゆる道なき道だ。多くの参加者が何時間も道に迷ってしまう。

毎年出場できるのは40人までだが、応募は200人以上にのぼる。参加希望者の中には、世界で最も過酷なその他のウルトラマラソンの勝者もいる。

それでも、制限時間内に完走できたのはこれまでに15人しかいない。

驚くべきことに、大会記録保持者のブレット・マウネ(Brett Maune)氏は2度完走している(52時間3分8秒)。また、ジャレッド・キャンベル(Jared Campbell)氏というランナーは3度完走している。

ちなみに、過去に完走したことがあり、再度挑戦したいという人のレース参加料は、キャメルのたばこ1箱だ。

「パタゴニア・エクスペディション・レース(Patagonia Expedition Race)」の未来のレースがどうなるかは、出場経験者にも分からない。

カヤックを漕ぐ2人組

Patagonia Expedition Race

パタゴニア・エクスペディション・レースは、毎回異なるルートが用意されている。選手は4人1組で氷河や川、山、森、平原を超えていく。

カヤックを漕いだり、マウンテンバイクに乗ったり、ロッククライミングをしながら、何日もかけて数百マイルを移動する。

「なぜ何度もここへ来てしまうのだろう? どんな見えない力が、我々をここに引き付けるのだろうか? 」レースの責任者ステファン・パビチッチ(Stjepan Pavicic)氏は2016年、チリのプエルト・ナタレスで行われた閉会式で問いかけた。

答えはこうだ。「場所、チャレンジ、人間の耐久力の限界……時として我々は、自然の中のふるさとに帰る必要がある。我々が生まれて来た場所と再びつながるために」

「サハラマラソン(Marathon des Sables)」では、参加者は砂と太陽と戦いながら、150マイル(約240キロメートル)以上にわたってサハラ砂漠を進む。

砂漠を歩く選手たち

U.S. Army Corps of Engineers: Europe District/Flickr

サハラ砂漠を自分の足で横断しようと考えたことがあるのは、あなた1人ではない。

最高気温は約49度、砂や風も強烈だ。それでも毎年、参加者は地球上で最も過酷な足を使ったレースと言っても過言ではないこのレースを、何とか完走する。

その具体的な様子は、Business Insiderの副編集長マット・ターナー(Matt Turner)の記事で読むことができる

「ハードロック100(Hardrock 100)」では、ランナーは山に挑む。

山に積もる雪の上を歩く男性

AP Photo/Brett Butterstein

レースではレース仲間と競うこともあれば、己と戦うこともある。ハードロック100では、参加者は山に挑む。

コロラド州サン・フアン山脈を100マイル走るこのレースは、上り3万3050フィート(約1万メートル)、下り3万3050フィートを含む、標高平均1万1186フィート(約3400メートル)を駆け抜ける。

制限時間は48時間。大会記録保持者のキリアン・ジョーネット(Kilian Jornet)氏は、2014年に23時間を切るタイムで完走した。

走るのがあまり好きでない人には、単独世界一周ヨットレース「ヴァンデ・グローブ(Vendée Globe)」がおすすめだ。

ヨット上の選手

Allsport UK/ALLSPORT

ヴァンデ・グローブでは、参加者は単独、無寄港、無補給で世界を一周する。

スタートとゴールは、フランスの湾岸都市レ・サーブル・ドロンヌ(Les Sables d’Olonne)。北大西洋、南大西洋と進み、南極大陸を巡り、インド洋、太平洋を横断し、大西洋に戻る。

世界記録保持者はフランソワ・ギャバ(François Gabart)氏で、78日で完航した。

「レース・アクロス・アメリカ(Race Across America)」では、参加者はほとんど睡眠を取らないため、自転車を漕ぎながら幻覚を見る者も多い。

笑顔でバイクを漕ぐ男性

Race Across America/Flickr

3000マイル(約4800キロメートル)のこの自転車レースは、アメリカのカリフォルニア州オーシャンサイドからスタートし、12の州を横断して、メリーランド州アナポリスでゴールを迎える。17万5000フィート(約53キロメートル)の上りも含まれている。

12日以内にゴールすることが求められるため、参加者は睡眠時間がほとんどない。レース・アクロス・アメリカのウェブサイトによると、先頭集団の参加者たちは通常1日平均90分しか寝ていないという。つまり、終盤では多くの参加者が睡眠不足と過度の身体活動に耐えているということだ。この組み合わせが、激しい幻覚を引き起こすこともある。

前回のソロ部門の優勝者は、8日と9時間34分でゴールした

アメリカのバーモント州グリーン山脈で行われる「デス・レース(Death Race)」では、何が起こるか誰にも分からない。2つとして同じレースがないからだ。

有刺鉄線をくぐる女性

Cronin Hill Photography

デス・レースの物理的、精神的障害物が何かは、スタートするまで分からない。レースは70時間以上に及び、参加者は何時間も薪を割ったり、石を詰めたリュックサックを背負って歩き回ることもある。有刺鉄線をくぐりながら山を登り、凍てつくプールに飛び込んだ後に記憶力テストをしなければいけないこともあった。

主催者は告知している。「サポートはしない。いつ始まるのかは知らせない。いつ終わるのかも知らせない。何が起こるのかも知らせない。我々は参加者が失敗するのを望んでおり、いつでも止めてもらって構わない」

「セルフ・トランセンデンス3100マイル・レース(Self-Transcendence 3100 Mile Race)」では、参加者はニューヨーク市クイーンズ地区の1ブロックを、52日以内に5649周しなければならない。

カップを手に、虚ろな表情で歩く男性

John Gillespie/Flickr

セルフ・トランセンデンス3100マイルレースは、世界で最も過酷なレースは精神的な忍耐が求められるレースであることを証明している。

このコースには、自然の景観の変化などない。参加者はクイーンズ地区の同一ブロックで、1日にマラソンの約2倍の距離を周らなければならない。

大会は、運動競技は瞑想の1つの形態であると説いた思想家シュリ・チンモイ(Sri Chinmoy)氏の信奉者たちによって開催されている。ウルトラマラソンが自分への挑戦だとすれば、このレースはそれを前面に押し出している。

「本物のアスリートは、大変な勇気、身体的スタミナ、集中力、さらに疲労、退屈、多少のけがに耐えうる能力を持っていなければならない」と主催者は述べている。

(原文:9 of the most extreme endurance challenges in the world

[翻訳:Ito Yasuko/編集:山口玲子、山口佳美]

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