部下のマネジメントに悩んだら:ボタンの掛け違いはこの3ステップで解決できる

「私の部下は優秀なのだけれど、上司の私に何も相談をせずに暴走してしまうことがある。どうすればきちんと相談してくれるのだろう」

あるいは、「もう一人前なのに、自分で何も判断せずに、上司の私に何でもかんでも相談してくる。どうすれば、自分で考えてくれるのだろう」

部下を持つ管理職の知り合いから、このような相談を受けることがあります。

一方で、部下にあたる人たちからも、「上司によって、『ちゃんと報告しろ』『そんなの自分で判断しろ』と言われることがばらばらで戸惑ってしまう」という悩みを聞くことがあります。

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マネジメントに起因する問題のほとんどは、上司と部下の間のささいなボタンの掛け違いなのですが、これが後々大きな問題を引き起こすことになりかねません。今回は上司と部下のボタンの掛け違いを避ける、マネジメントの3つのステップについてお伝えしたいと思います。

典型的なボタンの掛け違い例

とても基本的なことですが、上司が同じアプローチをしたつもりでも、部下によって、その反応や受け止め方は異なります。例えば、

上司が「あなたは、一人でできるはずなので、任せます」と伝えた場合、「私を信頼してくれている。期待に応えられるようにがんばろう」と思う部下がいる一方で、「サポートしてくれないということか。責任放棄なのではないか」と思う部下もいます。

あるいは、

上司が部下に言葉では何も伝えなかったとしても、「上司は、私を信頼してくれている」と考える人がいる一方で、「上司は、私には興味が無いのだ」と受け取られるケースもあります。

また、担当している仕事の状況が思わしくないときなどに、

上司「この案件の状況を定期的にチェックしたい」と伝えた場合、ある部下は「サポートしようと思ってくれているんだな。ありがたい」と思うかもしれませんが、別の部下は「自分一人で対応できるのに、私は信頼されていないのだ」と感じるかもしれません。

次の3つのステップで考えると処方箋が見えてきます。

ステップ1:マネジメント基準を「人」から「ミッション」に変える

私が社会人になった30年前は、部下がやること、すなわち「ミッション」は上司によって明確に決められていて、経験の浅い部下に対して、上司は自分自身の経験から各論の指示を行うというマネジメントが主流でした。この方法では、上司は部下から定期的に報告・連絡・相談(報連相:ほうれんそう)を受け、その都度指示し、軌道修正を求めます。

部下の成長に従い、上司は、細かく指示する→ある程度任せるというマネジメントスタイルに変化させ、部下の自律自転を促しました。つまり、経験の浅い部下には「指示」し、中堅以上の部下には「委任」するという、働く人の習熟度を基準とした「人」基準のマネジメントでした。

ところが、最近は、部下1人が複数のタイプのミッションを担うのが普通になり、その質も多様化しています。ミッションごとに、仕事の進め方が明確に見えているものもあれば、何から手を付けてよいのか分からないようなものもあります。上司自身も対応の仕方が分からないミッションを部下に与えるケースも増えています。部下の成長に合わせて上司の関与度合いを変えていく、という従来の「人」基準のマネジメントでは対応できません。

どうすれば良いのか? 答えはシンプルです。「人」基準ではなく「ミッション」基準でマネジメントの仕方を変えるということです。

ステップ2:マネジメントスタイルの引き出しを増やす

では、「ミッション」基準にした時にはどのようなマネジメントが必要になるのでしょうか。

K・ブランチャードは、1980年代に執筆した『1分間リーダーシップ』において、リーダーシップのスタイルとして「指示型」「コーチ型」「援助型」「委任型」の4つを挙げています。

従来多くの日本企業では、「人」基準のマネジメントをしていたので、「指示」の多寡によって、指示が多い場合は「指示型」、少ない場合の「委任型」の2つのマネジメントで十分でした。先行きが不透明な時代に「ミッション」基準でマネジメントしていくには、「援助型」「コーチ型」のスタイルも柔軟に使い分けられるようにしておく必要があります。

4つの基本的なリーダーシップ・スタイル(K.ブランチャード著『1分間リーダーシップ』をベースに、黄色部分を筆者が加筆)

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1)指示型:指示多×援助少

上司は細かく指示、コントロール、監督をする

部下は頻度高く報告・相談・連絡をする

2)コーチ型:指示多×援助多

上司は、部下自ら考えるように援助をし、必要に応じて指示する

部下は、定期的に報告をする

3)援助型:指示少×援助多

上司は、聞き、促し、褒める。上司がプロジェクトメンバーになるケースもある

部下は、主体的に動き、定期的に報告する

4)委任型:指示少×援助少

上司は委任し、事前に明示したOBラインを超えない限り見守る

部下は、定期的に報告する

ステップ3:部下のモチベーションとスキルのマトリックスでマネジメントを決定する

では、どのようなミッションに対して、どのマネジメントスタイルが適切なのでしょうか。これを決めるにあたっては、ミッションごとに、部下のモチベーションとスキルの状態を正確に把握することが必須です。

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「モチベーションとスキルのマトリックス」を活用してみてください。横軸にモチベーション(やる気)を高中低で3分割し、縦軸にスキル(コンピテンシー、能力、経験)を高中低で3分割し、合計で9分割された図を準備します。この図を使って、上司と部下で、部下のミッションそれぞれが、この9象限のどこに当てはまるのか確認してみます。

例えば、部下に担当させるあるミッションについて、上司と部下それぞれが、9象限のどこに該当するのか考え、持ち寄ります。同じ場所を指させば、ミッションに対する認識が同じであることが分かります。場所が異なる場合は、認識の差を確認し、すり合わせていきます。その際に、モチベーションの軸は部下本人の意見を、必要なコンピテンシーの軸は上司の意見を優先すると合意がとりやすいと思います。

確認された9象限のエリアにより、適切なマネジメントスタイルが分かります。

例えば、ケースごとに適しているマネジメントは、

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  • やる気を示す横軸は「高」いが、その実行に必要な能力示す縦軸が「低」の場合、「指示型」
  • 実行に必要な能力を示す縦軸が「中」であれば、横軸にかかわらず「コーチ型」
  • 縦軸が「高」で横軸は「低」「中」の場合は、援助型が望ましい。
  • 両軸とも「高」を示す場合、つまり本人にやる気もあり、必要な能力・経験も持っている場合は「委任型」が最適

「委任型」の場合、上司は事前にゴールとOBゾーン(やってはいけないこと)を明確にし、それ以外は見守ることです。ちなみに、やる気も低く、必要なスキルを持っていない一番下の左端と左から2つの場合、このミッションをその部下に付与するのかどうか再検討が必要になります。

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私自身、スタッフ部門、接客部門、IT部門、現在は研究部門とさまざまな部門でマネジメントをしてきました。自身にとっては専門外のミッションで、部下の方がスキルを持っているとか、自分の専門分野ではあるものの、上司の自分も部下もともに初めて取り組むようなミッションもありました。その中で10年以上にわたってこのステップを実践してきました。

どの組織でもフィットしましたので、広範囲に活用が可能だと思います。部下のマネジメントに悩んでいる方の参考になれば嬉しいです。


中尾隆一郎(なかお・りゅういちろう):リクルートワークス研究所副所長。大阪大学大学院工学研究科修了。リクルート入社。リクルート住まいカンパニー執行役員(事業開発担当)、リクルートテクノロジーズ社長などを経て、現職。

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