転職のビズリーチ、事業承継M&Aサービスに参入 —— 資本探しプラットフォーム開始

労働市場と企業をつなぐ転職サイトや、企業と従業員をつないで人材採用の業務を可視化する「ハーモス(HRMOS)」を運営するビズリーチ(BizReach) —— 2009年に設立されたベンチャー企業が新たに狙うのは、高齢化・日本の社会課題として取り上げられる中小企業の事業承継だ。

南壮一郎氏

「仕事探しのプラットフォームであるビズリーチに対して、ビズリーチ・サクシードは資本探しのプラットフォーム」と語る南壮一郎・社長。

Business Insider Japan

ビズリーチは11月28日、後継者不足に直面する日本の中小・零細企業が利用できる事業承継M&A(合併・買収)のマッチング・プラットフォーム「ビズリーチ・サクシード(BizReach SUCCEED)」を開始する。代表取締役社長の南壮一郎氏(41)がBusiness Insider Japanの取材で明らかにした。

サクシードの仕組みは、事業を譲渡する企業が匿名で登録でき、譲り受けを検討する企業はインターネット上のプラットフォームでアプローチできるというもの。譲渡企業は登録から案件成約まで無料で利用できる。一方、買い手企業は成約の際にビズリーチに対して一定の手数料を支払う。また、譲渡企業から相談を受けたM&A仲介会社や金融機関なども利用できる。

日本には1947年〜1949年に生まれた「団塊の世代」が、1歳児人口の約2倍の216万人存在する。日本の中小企業の多くの経営者がこの世代に属しており、経営者の引退に伴い2020年までに廃業のリスクに直面している企業は、100万社を超えるという試算がある。日本政策金融公庫の調査によると、走り続けてきた経営者が、仕事を引退して廃業しようとする年齢は平均で71.1歳だという。

少子高齢化による労働人口の減少や経営人材の不足は、この事業承継の問題を招いている。経済産業省や自治体、地方銀行、会計監査、コンサルティング会社は、中小企業が事業承継をするための仲介支援やサービスを拡大してきた。

資本探しのプラットフォーム

南壮一郎氏

「全国一括のプラットフォームでM&Aを通じて、資本をもっと流動化させていきたい」(南社長)

Business Insider Japan

「仕事探しのプラットフォームであるビズリーチに対して、ビズリーチ・サクシードは資本探しのプラットフォームです。地方の成長企業の経営者年齢が上がる中、事業承継のニーズは今後さらに高まっていくと思います。事業承継の社会課題の解決につながるサービスを作りたいと思い、ビズリーチ・サクシードを考えました」と南氏は語った。

関連記事:4社に1社、2020年までに100万社が廃業リスク —— 未来ある“古き企業”をどう残していくのか

ビズリーチは創業以来、約7200の企業の採用を支援してきた。中小企業が後継者を探す上で、これら多くの成長性の高い企業とのネットワークを生かせると南氏は言う。今回の新サービスの開発や運営コストは、ビズリーチが2016年に調達した約50億円の資金でまかなうという。

ビズリーチ・サクシードは、譲渡企業の利用を高めるために国内の事業承継の仲介や支援を行うアドバイザリー企業や中小企業支援センターと連携していく。ビズリーチの発表文によると、三井住友銀行と中小企業支援センターは、同サービスの利用を開始する。

「全国一括のプラットフォームでM&Aを通じて、資本をもっと流動化させていきたい。そして、価値ある事業は未来につないでいきたい」と南氏は意気込む。

ビズリーチは2009年4月、管理職やグローバル人材の会員制転職サイト「ビズリーチ」をスタートさせた。2012年10月には、「ビズリーチ」のアジア版「リージョンアップ(RegionUP)を開始すると、2014年には20代向けのレコメンド型転職サイト「キャリアトレック(careertrek)」を始めた。昨年6月には、人事クラウドサービスの「ハーモス(HRMOS)」をリリースしている。

南氏は1999年にアメリカのタフツ大学を卒業後、モルガン・スタンレー証券に入社すると投資銀行部でM&Aアドバイザリー業務に従事した。その後、香港・PCCWグループの日本支社の立ち上げにも参画した。2004年には、東北楽天ゴールデンイーグルスの創業メンバーとして、事業の立ち上げやチーム運営を行った。

(文・佐藤茂)

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