インスタグラマーの価値は、いいね数やフォロワー数などにより、明確に決まっていく。
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インスタグラマーは、今やタレントの卵や読者モデルだけでなく、学生や主婦、子供にも広がる。
インスタグラマーの価値は、インスターグラマーのキャスティング会社によってフォロワー数やその影響力が数値化され、企業は彼女たちを、価格や属性の一覧表から選び、「仕事」を発注する。何とも機械的に人の価値が決まるシステムだが、システム化されたことによって「フォロワー買い」が疑われるアカウントも見抜くことができる、と関係者は語る。
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アドテック東京では、インフルエンサーの無料案内所も出現した。
撮影:木許はるみ
インスタグラマーと企業をマッチングさせるキャスティング会社は、国内に約30業者ほど存在するという。
大手タレント事務所からYouTuberが経営する事務所、元グーグル社員による事務所など、幅広い。
専属のインスタグラマーやフリーのインフルエンサーを抱える事務所など、事業の形態は多様だ。
複数業者にヒアリングすると、何フォロワーからが「インスタグラマー」か、という基準も各社によって違う。「1万以上いないとスカウトしない」という事務所もあれば、2000フォロワーから仕事を発注する企業もある。
「インスタグラマー」の価格は属性別データベースで管理されている
費用はフォロワー数やいいね数によって決まる。
出典:ROOSTER
国内のキャスティング会社は、インスタグラマーの影響力を数値化し、価格を付けている。
国内最大級というインスタグラマーのキャスティングツール「ROOSTER」(ルースター)は、インスタグラマーと企業のマッチングサイト。インスタのユーザー1400人が登録する。フィリピンでインスタグラムのマーケティングを経験した甲斐優理子さん(27)が代表を務める。
ルースターの企業向けメニューでは、インスタグラマーの「性別」、「フォロワー数」、「既婚か未婚か」、「子供の有無」、「予算」の6つの条件を選択できる。 希望の条件をマークすると、一覧表には、各インスタグラマーの「フォロワー数」「平均いいね数」「平均いいね率」「年齢」「価格目安」などが表示される。
企業は、イメージに合うインスタグラマーにチェックを入れ、費用を一括で見積もることができる。 仮に一番条件が高い、フォロワー数「5万以上」、予算を「300万円まで」としてみると、50万以上のフォロワーを持つ未婚の女性(28)が一覧表のトップに表示された。女性は平均いいね率が1.5%。価格の目安は192万円だった。
「価値」を偏差値に換算、洗練進むビジネス化
偏差値化するPONY。まだ人気を測る指標としては、曖昧な点もあるという。
出典:PONY
さらに、パスチャーでは、「PONY」というツールで、インスタグラマーを「偏差値」化している。
フォロワー数やエンゲージメント率、投稿時間など50の指標から、拡散力、成長力、影響力などの5項目を評価する。
自分と親和性の高いアカウントやフォロワーがアクティブな時間、人気が出る写真の撮り方をアドバイスする。ちなみに一度も投稿をしたことのないアカウントで試すと、すべてF評価で、インスタ偏差値は21だった。
甲斐さんは「米国ではSNS上での信用度に応じてキャッシング枠が調整されることもあり、評価経済的な流れのひとつで役立てたい」と偏差値化に取り組む意気込みを説明した。
「偽フォロワー」持ちはバレる
フィリピンでインスタグラムを活用して、アパレル商品を販売していた甲斐優理子さん。
人々の価値が「いいね数」「フォロワー数」などで決まり、価格が一覧表で表示されるシステムは、機械的に人の価値を数値化している。
甲斐さんは、インスタグラマーの価値を見える化する背景を「登録するインスタグラマーの中にも、半年前からフォロワーを買う人が出てきた。1万フォロワーあっても、10いいねしかない。そういう人がパッと見て、ちらほらと出てきた」と説明する。
フォロワーを買っていたようなアカウントは、サービスの利用を停止した。例えば、その中には、読者モデルのアカウントも含まれた。甲斐さんは「読者モデルが雑誌に載るだけなら、人気の度合いは見えにくいが、フォローはステータスが歴然としている。劣等感が生まれ、買ってしまうのでは」と話す。
パスチャーでは、疑わしいインスタグラマーを一掃するため、「今年の初めごろから、『平均いいね数』や『平均いいね率』、『フォロワーの属性』や『フォロワーのアクティブ率』について分析している」(甲斐さん)。
偽フォロワー見抜く業者、売る業者も次の手
一方、一部のインスタグラマーが手を出してしまう「偽フォロワー」の売買は、どのような業者が行なっているのか。「1000フォロワー980円」「日本人フォロワー」「毎月の定期付与」 とネット上では、さまざまな業者がフォロワーを売っている。
インスタグラムのフォロワービジネスに詳しい関係者によると、「インスタグラムは、1つのパソコン、スマホから作れるアカウントの数に限りがある。個人事業主がパソコンをたくさん持っている人にお願いして、ダミーアカウントを作っている」と明かす。ただし、やはりキャスティング会社にはすぐにバレてしまうという。偽フォロワーがいても、投稿に対してリアクションがないためだ。「(本来なら)エンゲージメント率は10%ほどないとおかしい」と話す。
フォロワーはネット上で販売されている。種類は、ダミーやリアルなど、さまざま。
出典:グーグルショッピング
偽フォローを見抜くため、今はいくつかのキャスティング会社が、ROOSTERのようなシステムを持っている。
このようなシステムのほか、インスタグラマーに「ハッシュタグテスト」を課すサイトもある。インスタグラマーは、サイトの名称を「#」で自身のインスタグラムに載せ、サイトの記事を投稿する。アカウントから一定のユーザーがサイトに訪れると、合格という仕組みだ。
しかし、ネット上では、“リアルフォロワー”を販売する業者もある。「独自ルートで日本人ユーザに直接にフォローを依頼している」と販売サイトには書かれていた。
インスタグラマーの影響を正確に測ろうとする業者もあれば、それに対し、インスタグラマーになりたい人々にさまざまな手を仕掛ける業者もある。
どの業者が真っ当で、どの手法がクリーンなのか。適正価格とは何か取材をしていても、判断を迷うほど、インスタビジネスは拡大している。
(文:木許はるみ)