セクハラへの厳罰化強まる米社会——米有名アンカー、告発記事で1日でクビに

米テレビのアンカー重鎮で、「信頼できる顔」だったチャーリー・ローズ氏(75)が11月21日、ネットワークテレビ局最大手CBSから解雇された。8人の女性が、同氏にセクシャル・ハラスメントを受けたと訴えた新聞記事がきっかけで、CBSは「非常に不快で容認しがたい行動」が明らかになったためとしている。

チャーリー・ローズ氏

チャーリー・ローズ氏は8人の女性からセクハラを告発され、1日でネットワークテレビ局最大手CBSから解雇された。

REUTERS/Carlo Allegri

セクハラ告発記事は11月20日、ワシントン・ポストが配信。数時間後には、長寿番組「チャーリー・ローズ・ショー」を配信していた米公共放送のPBS、ブルームバーグが配信を停止した。米大統領や世界首脳の単独インタビューを数々こなしてきた伝説のアンカーは、告発記事からわずか1日でキャリアに終止符を打たれた。

ワシントン・ポストによると、ローズ氏の下で働いていた3人の女性が実名で、5人の女性が匿名で取材に応じ、1990年代〜2011年にかけて、太ももや下腹部を触られたり、後ろから抱きつかれたり、不適切な電話をかけられたと証言した。また、ローズ氏が仕事場として使っている複数の自宅で、女性らが仕事をしている最中、ローズ氏は、シャワーを浴びて全裸で歩き回ったりしたという。ポスト紙は、当時ローズ氏の番組プロダクションに関わっていた従業員数十人にも、目撃情報を求めて取材をした結果、ローズ氏のセクハラが事実だと報じた。

「以前容認されたことは、決して容認すべきではなかった」

CBSは2012年、朝の「CBS This Morning」の視聴率テコ入れのため、ローズ氏をメインアンカーに起用。CBSニュース部門のデイビッド・ローズ社長はローズ氏解雇について、社内向けメールでこう書いた。

「チャーリーはわが社のニュース部門の報道に重要な貢献をしてくれた。しかし、この組織でもどの組織でも、安全でプロフェッショナルな職場環境を確保することほど大切なことはない。誰もが最善を尽くすことができる、支援してもらえると感じる職場環境づくりが何より重要だ。我が社もそういう場所でなくてはならない」

「かつてはそうではなかったと、そういう話はよく聞かされた。そして過去を正すことは誰にもできないかもしれない。しかし、以前は容認されたかもしれないことは、決して容認するべきではなかった」

「CBS This Morning」の他の2人の女性アンカーは、ローズ氏の解雇後、放送中にこうコメントした。

「今回の件は、捜査があるでしょう。これは、終わらせなければならない。(ローズ氏の行為は)間違っている」(ノラ・オドネルさん)

「ワシントン・ポストの記事は非常に困惑し、不快で、読むのはつらかったです」(ゲイル・キングさん)

ローズ氏は、テレビ番組に送られるエミー賞を何度も受賞。2014年、タイム誌に「最も影響力のある100人」に選ばれた。1991年に放送開始の「チャーリー・ローズ・ショー」は、バラク・オバマ前大統領や投資家ウォーレン・バフェット氏など著名人に対し、深く掘り下げたインタビューをすることで有名だった。

告発の引き金引いた大物たちのセクハラニュース

ハーベイ・ワインスタイン氏

ハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン氏は十数人の女優やモデルから暴行を告発されている。

REUTERS/Mike Blake

アメリカでは2017年10月、ハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン氏(65)が、十数人の女優やモデルを暴行・強姦した「ハリウッド・スキャンダル」が表面化してから、メディア業界やワシントンの女性議員など、セクハラや暴行を訴える女性が後を絶たない。

ワインスタイン氏の暴行を訴えた女性は、女優アンジェリーナ・ジョリーを含め十数人に上る。同氏は、自らが共同創立したワインスタイン・カンパニーから解雇された。

ケビン・スペイシー氏

ケビン・スペイシーも性的暴行の加害者として告発され、主演ドラマを降板させられた。

REUTERS/Eduardo Munoz Alvarez/File Photo

また、ドラマシリーズ「スタートレック」に出演する俳優アンソニー・ラップ氏(46)が14歳のころ、俳優ケビン・スペイシー氏(58)に性的暴行を受けたと告発。スペイシー氏は主演していたNetflixの大人気政治サスペンスドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」のシーズン6から降板させられ、事務所との契約も解消された。

ワインスタイン氏やスペイシー氏のニュースは、多くの女性が、過去に受けたセクハラ、性的暴行被害を訴える引き金を引いた。

米アラバマ州で上院議員の補欠選挙に共和党から立候補しているロイ・ムーア元判事は、当時14歳だったという女性から40年前の性的暴行を訴えられた。共和党上院の有力議員らは、ムーア氏が選挙から辞退するべきだとしているが、ムーア氏は「40年前のことを蒸し返す女性など信じられない。選挙の直前であり、政治的だ」と抵抗している。12月12日にある補欠選挙の世論調査では、セクハラ報道以降、民主党候補のダグ・ジョーンズ氏がリードを広げている。

性的暴行被害者の9割以上がPTSD

一連のセクハラ・パワハラ、暴行の告発を促し、被害が起こらないように呼びかけている「#MeToo運動」は、アメリカだけでなく世界中に広がっている。RAINN (Rape, Abuse & Incest National Network)によると、1998年から性的暴行(セクハラを含む)を報告した女性は、アメリカ国内で1770万人で、94%の人が、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を訴えている。

日本では、ジャーナリストの伊藤詩織さんがTBSの元記者を準強姦容疑で訴えたが、東京地検が不起訴とした。伊藤さんは、日本の司法やマスコミのシステムでは、強姦の被害者が十分に救済されないと訴えている。

(文・津山恵子)

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