9月29日、アデレードで行われたローンチイベントでプレゼンテーションするイーロン・マスク氏。
- イーロン・マスク氏は世界最大のリチウムイオンバッテリーを南オーストラリア州に100日に設置するというリスクの高い賭けに勝った。
- 同氏は3月、シドニーに本社を置くソフトウエア企業アトラシアン(Atlassian)のマイク・キャノンブルックス(Mike Cannon-Brookes)氏とのTwitterでのやりとりで、100日以内にバッテリーを設置できなければ、費用は受け取らないとしていた。
- 期限に間に合わなかった場合、約5000万ドル(約56億円)か、それ以上の損失となっていただろうとマスク氏は語った。
イーロン・マスク氏は、南オーストラリアに設置した世界最大のリチウムイオンバッテリーの費用を受け取ることができそうだ。出力100メガワットのバッテリーは12月1日の期限を前に試験を開始する。期限に間に合わなければ、費用を受け取れないところだった。
南オーストラリア州首相ジェイ・ウェザリル(Jay Weatherill)氏は11月23日(現地時間)、試験を数日以内に開始すると発表。バッテリーは州都アデレードの北230キロにある、フランスの再生可能エネルギー企業ネオエン(Neoen)のホーンズデール(Hornsdale)風力発電所に設置された。
バッテリーはフル充電されれば8000世帯に24時間、または3万世帯に1時間、電力を供給できる見込み。
このプロジェクトは、エネルギーの確保とコストをめぐる国レベルの政治論争となった昨年の州全体の停電を受けて、電力の安定供給を実現するために州が5億5000万ドルを投じたプロジェクトの一環。およそ3億6000万ドルと言われる250メガワットの火力発電所も数カ月で稼働を開始する予定だ。
バッテリーについては3月、マスク氏はアトラシアンのマイク・キャノンブルックス氏とのTwitterでのやりとりで、100日以内に設置できなければ、費用は受け取らないとしていた。マスク氏が9月にアデレードを訪問し、この賭けにサインした時点から100日のカウントダウンは始まった。だが発電所での工事は7月、州政府がマスク氏と契約を締結した直後から始まっていた。
期限に間に合わなかった場合、「約5000万ドルか、それ以上」の損失となっていただろうとマスク氏は語った。
テスラのバッテリーシステムは、電力需要が供給を上回り、過負荷になって停電が起こることを防ぐために「負荷制限」を行う時に使用される。つまり、風力発電でカバーできなくなった電力をバッテリーから供給する。
州首相は、バッテリーはすでに完成しており、当局の要求を満たしているか試験を行って確認すると述べた。
「このプロジェクトは南オーストラリア州がバッテリーシステムを備えた再生可能エネルギーのリーダーとなることの明確なメッセージ」と州首相。
「極めて短期間でプロジェクトを終えるために、膨大な量の仕事をこなさなくてはならなかった。来週、当地を訪問して、プロジェクトに携わった人たちに感謝の言葉を伝えたい」
(翻訳:まいるす・ゑびす/編集:増田隆幸)