「沖縄の大人はもっと沖縄の子どもに目を向けてほしい」——19歳の大学生が訴える負の側面

「沖縄への観光客数が初めてハワイを超える勢い」

近年、官民が一丸となって観光業に力を入れ、沖縄への観光客数は過去最高を更新し続けている。

そんな「喜ばしい」ニュースがある一方で、19歳の女子大生が「沖縄の大人はもっと沖縄の問題に目を向けてほしい」と書いたブログ記事がSNS上で話題を集め共感を呼んだ。

このブログ記事を書いたのは、2017年3月(高校3年生)まで石垣島に住んでいた島尻優楓さん(19)。今は慶應義塾大学総合政策学部に通う大学1年生だ。

なぜこの記事を書こうと思ったのか、Business Insider Japanは島尻さんに取材した。

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沖縄といえばまずは美しい海が思い浮かぶ。

提供:島尻さん

住みながら感じていた大人への違和感

島尻さんは沖縄のどこに問題を感じていたのか。

「石垣島は時間がゆっくり流れ、空気はものすごくきれいで、夜は日本で一番と言われるほどの星空を見ることができ、本当に癒される。私にとって、すごく大好きな地元。一方で、スポーツや音楽、芸能はとても盛んで地域の人たちも学校も積極的だけど、それ以外のことに対して無関心であると感じます

それを最も感じたのは高校2年生の時。島尻さんは、当時政治家と高校生が対話するイベントや平和ガイドの活動をしていたが、街中で基地問題への是非や地元の問題に対しアンケートを行った際に、地元の大人たちから「分からない」「難しい」という反応しか返ってこなかったという。活動の様子が地元の新聞に取り上げられると、学校の先生に呼び出されることもあったという。

沖縄では触れてはいけない話題がある

米軍基地の周辺に住んでいる友人や自衛隊で働いている親戚は当たり前にいるのに、そもそもの基地や自衛隊の話に触れることはタブー視される。そんな想いを抱きながら、高校3年のとき、過去に自身がいじめられた経験から、いじめられている子どもたちが気軽に相談できるサービスの開発準備を進める。その中で、周りの友人からいじめや自殺願望について相談をされることが増え、悲惨な現実に驚いたという。

いじめやリストカット、不登校、障害、DV…

何度も友達が泣いてるのを目の前で見て、なんで誰もこの子を助けないんだろう。なんで気づかないの??と苦しくて大人たちに対する怒りでいっぱいで叫びたくなるときがありました。 自殺したいと毎晩電話してくる子、先生に暴力を受けた子、障害を持っているからイジメられたり、リストカットしたよって傷跡を見せてくる子。家に食べるものがなくてお店から盗まなきゃいけない子。居場所がなくて、夜中は外で遊ぶ子。

ここに書いてあるのはほんの少しです。

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貧困の実態や家庭の問題は見えにくい。島尻さんがブログを書こうと思ったのも久しぶりに昔の友人から電話で話を聞いたのがきっかけだったという(写真は本文とは関係ありません)。

撮影:今村拓馬

島尻さんは政治への関心が高く、政治家の集会や街頭演説もよく見に行ったが、そこで語られる問題は米軍基地のことばかり。子どもやシングルマザーの貧困について語られることはほとんどない。

「沖縄は早く結婚するから出生率も高いけど、離婚率も高い。結果的にシングルマザーになって貧困になりやすい。その子どもも早く結婚して離婚、そういう循環になることで、貧困層が増えている」

確かに県外や海外からの観光客数は増え続けているが、沖縄県民にとってその恩恵は大きくない。沖縄県の平均賃金は23万6300円(厚生労働省「平成28年賃金構造基本統計調査」より)と全国で最も低く、「子どもの貧困率」は29.9%と全国平均の約2倍で3人に1人が貧困状態になっている(沖縄県「平成28年沖縄県子どもの貧困実態調査結果概要」より)。ワーキングプア率は9.7%と全国で突出して高く、母子世帯の出現率も全国で1位。だが、就学援助率は全国9位にとどまる。

ほぼ同じ人口(約140万人)のハワイと比べても、一人あたりGDPはハワイ約5.5万ドル(約610万円)に対し、沖縄は約270万円と半分以下になっている。

負の部分にも本気で向き合ってほしい

地域の音楽関係のフェスや祭りの行事などに対しては、大人たちは熱心だ。生徒も部活動の時間を使って手伝い、地域一丸となって本気で取り組む。

しかし、大学進学にあたっての資料は生徒から先生に言わないともらえないことも多く、島尻さんが進学した慶應義塾大学については、進路指導の先生に聞いても「分からない」という返事。島尻さんはネットを使って自分で情報収集したという。実際、島尻さんの高校から慶應に進学したのは、20年ぶりだったという。

沖縄本島の高校生には届く情報も離島だから送ってもらえず、そもそも何があるのか知らない状況があります。考える前に、選択肢があることすら知りません。

大学の説明会も離島開催がなく、受験のことを先生たちも分かっていません。全部自分で調べる必要があります。高校生の時にそのことを言うと「ネットで調べればいいのでは」と散々言われました。

私自身SNSを全て活用することで、自分の活動だけでなく受験のためにも生かしました。ネットで調べればいくらだって知ることは可能かもしれません。だけど、私たちの環境は検索をかけるためのキーワードにも辿り着けず、たとえ辿り着いてアクションを起こそうとすると、まわりにとめられてしまいます。生徒が掴み取ったチャンスを平気で裏でつぶそうとする先生たちもいます。

米軍の基地問題は国家間にまたがる問題であり、地方自治体だけで解決することは難しいかもしれない。しかし、教育に関しては自治体でやれることも多く、教育関係者が本気で取り組めば解決できるはずだ。

今島尻さんは、NHK番組「いじめをノックアウト」のLINKプロジェクトに加わり、全国のいじめ被害者や臨床心理士など専門家と交流しながら、いじめられている子どもたちがアプリで気軽に相談できるサービスを開発している。

客観的にこのブログ記事を見たら、自分でも「口だけで、うざい」と感じる、と島尻さんは語る。しかし、「キレイで、楽しい沖縄だけじゃなくて、もっとちゃんと内側を見てほしい。どれだけ沖縄の海が美しくても、そこに住む子どもの心や体は、すさんで助けを求めていることに気がついてほしい」という言葉は重い。

(文・室橋祐貴)

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