悩みも不満も笑いに。海外子育て支え合う「旦那が中国人の会」

日本人の国際結婚と言われて思い浮かぶのは、「日本人男性に嫁ぐアジアの女性」あるいは「欧米人男性と日本人女性」の組み合わせではないだろうか。

しかし、台湾の卓球選手と結婚した福原愛さんのように、アジア各国の経済力の向上や日本人女性の社会進出の加速で、「日本人女性とアジア人男性」の結婚が増えている。日本と経済的結びつきが強い中国・東北地方の大連市では、中国人の夫を持つ日本人女性たちが「旦中会」を結成。メンバー数を年々増やしながら、異国での子育てや生活をサポートしあっている。

大連

急速に経済成長を遂げる中国。大連市も高層ビルが続々と建設されている。

JCREATION/shutterstock

家事育児当たり前、生理中は水仕事を全て担当

ひとみさん(35)さんは2008年に日本で、日本企業に勤める中国人男性と結婚。妊娠中の同年6月、夫の転勤で中国に移り住んだ。出産前後は日本に戻ったが、生後1カ月の娘を抱えて、再び大連生活をスタート。勝手が違う外国での子育てをサポートしてくれたのは、同じように中国で過ごす日本人妻たちだった。

「当時は5、6人で時々ご飯を食べたりしていたのですが、メンバーが増えてきたので数年前に『旦那が中国人の会』を縮めた『旦中会』とグループ名をつけて、月に1回のペースで交流するようになりました。今は29人のメンバーがいます」

ひとみさんによると、メンバーの多くが日本や留学先の第三国で知り合っているため、夫たちは平均的な中国人に比べると、経済力のあるケースが多いという。同時に、中国人男性はイクメンというのが日本人妻の共通認識。実際に彼女たちの多くが、子どもを育てながら働いている。小学生の娘がいるひとみさんは、医療機関に勤務。

「夫は家事育児に協力的ですが、中国ではそれが普通のようです。幼稚園や小学校のお迎えに行くとパパだらけで驚きました」

お迎え風景

小学校の下校風景。中国では子どもを迎えに来る父親も珍しくない。

撮影:浦上早苗

1歳の子どもを持つあいさん(32)は、「交際中から子どもが生まれるまで、率先して家事や子育てをやってくれる姿勢は変わらない。今はどちらがお母さんか分からないくらい、おむつ替えや離乳食の準備をしてくれる。一番驚いたのは、私の生理中に『体を冷やさない方がいい』と、水仕事を全部引き受けてくれること」と話す。

5歳、1歳の2人の子育て中のりささん(37)も、「頼み事は基本的にノーと言わない。家族の願いをかなえるよう、精一杯努力してくれる」と語った。

朝6時半に訪れる両親、家族付き合いの濃さに驚き

もちろん外国人との結婚生活は、子どもの教育や親せきとの付き合い方など、戸惑いも少なくない。旦中会の集まりでは、愚痴とも笑い話ともつかないそれぞれの家庭の話題で盛り上がる。

嫁姑の関係の難しさは万国共通だが、変化の速い中国では、「文化」「世代」の違いが一層大きくなる。

メンバーの一人の体験は、衝撃的だ。

大連のロバ

ビルが立ち並ぶ大連だが、生活スタイルは世代によって大きく異なる。

撮影:浦上早苗

「姑が、孫のペットにと素手でスズメを捕まえてきたときには本当にびっくりしました。しかも、数日したら死んでしまって、あっさりごみ箱に捨てられた」

中国人の家族や親せきの距離の近さは頼もしく感じる一方で、ストレスの種にもなる。

「親戚が集まる回数の多さにびっくりした。結婚式に普段着で来る人が多いことにも驚いた」(YUKIさん)

「夫の家族、親戚、友達……とにかく突然の来客が多い。義理の両親が朝6時半に突然訪ねてきたこともある」(マキさん)

しかし、家族を大事にする中国人夫は、妻の家族も大事に考えてくれるという。

りささんは、「義母は洗濯機があっても服を全て手洗いする。私も影響を受けて下着と靴下は手洗いするようになった」と、世代の違いについて教えてくれた。

多様な環境で育つ子どもたちの学びの場にも

優しい夫と頼りになる義父母。それでも、中国生活にはさまざまな不安がある。あいさんは「年々大気汚染が深刻化するので、毎日アプリで数値をチェックして、行動を決めている」という。

共通する大きな悩みが子どもの国籍の選択や進学。今は中国で生活しているが、日本の教育を受けるとなると、家族の居住地や仕事も問題になる。老後どこに住むか、それぞれの親の介護など将来の問題もある。

「だからこそ、同じような境遇の人と情報交換できる場はありがたい。不満やストレスになりそうな出来事も、笑い話にできる」

5歳の子どもを持つひろこさんはそう語る。あいさんは「離乳食の食材調達で困っているときに、新鮮な魚や野菜を変える場所を教えてもらって、とてもありがたかった」という。

麻雀をする子供たち

子どもたちは交流を通じ、日本と中国の文化の違いを学ぶこともできる(写真はイメージ)。

撮影:浦上早苗

「旦中会の集まりは、実は子どもたちのためでもあるんです」とひとみさん。

メンバーの子どもで、日本人学校に通っているのは少数派。半分以上が、子どもを現地の小学校や幼稚園に通わせており、母親以外とは日本語で話す場がない子もいる。

月に1度開かれる旦中会の集まりや、ハロウィンパーティーなどのイベントは、さまざまな環境の子どもたちが混ざり合い、幅広い日本語や日本文化に触れる場にもなっている。

「子どもたちは、国籍も進学先も複数の選択肢があると同時に、どちらも中途半端になる恐れもある。旦中会は、私たちが助け合うだけでなく、子どもの選択肢を広げるための場でもあるのです」と、ひとみさんは話した。(文中一部仮名)

(文・浦上早苗)

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