一度、辞めた社員を企業が再び雇用する「出戻り」を認める風潮が高まっていると、Business Insider Japanが報じた記事には、大きな反響があった。Yahoo!トピックスで取り上げられると1000件超のコメントが寄せられ、公開日(11月24日)には「出戻り社員」がツイッターのトレンド入り。反響をまとめたモーメントも多数の「いいね」がついた。
「win-winならいいんじゃない?」「戻れるなら戻りたい」といった肯定的な意見が多かった一方「(会社は)人手不足だから迎えるかもしれないが、内心は反逆者の気持ちはあるはず」といったシビアな見方も。新卒一括採用、終身雇用といった従来の雇用制度が崩れ、人手不足時代の到来に揺れ動く心情が浮き彫りになった。
「出戻り社員」肯定派という声は多かった。
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記事に登場した、出戻り歓迎の「Welcome back制度」を3年前から導入しているエン・ジャパンでは「かつて勤務していた社員から出戻りの問い合わせが2件あり、人事担当者には他社の知り合いから『いい制度』との声も寄せられたようです」(広報担当者)という。出戻り社員制度については、まずは前向きな反応が目立った。
身近にいるとの声多数
出戻り経験者の声はリアルだ。
自分も出戻りして、10年が経ちます。辞めた理由も、戻った理由も人それぞれ。再受け入れしてくれた会社には感謝してます。他社を見てきた分、自社を冷静に見る事も出来るので、良い事もあるかと思います。(Yahoo!コメントより)
自分も出戻り。わかったのは前のトコの良さではなく他の悪さ。つまりマシだったと。出戻っても不満タラタラだけどそれでもマシだ思って気づけば出戻り後の方が長くww(Yahoo!コメントより)
受け入れられた際の「理由」も具体的。
そもそも出戻り社員は「昔からやっている」という声も少なくない。
「近年、出戻り社員の話題が多いが、私の会社では30年以上前から制度があった。当たり前の事だと思う論理が定着しないのが残念。見聞を拡げ、元会社がいいと思う社員は愛社精神が強くなり経験者優遇、即採用に決まっている。」(Yahoo!コメントより)
昔から、地方の中小企業では、結婚出産でやめた女子社員の再雇用はありふれてます。それを容認してないのは、いくらでも若手を採用できる大都市の大企業だけでは?(Yahoo!コメントより)
元IT技術者という女性からはこんな声も。結婚・出産による離職からの「出戻り社員」は増えそうな予感だ。
夫と職場結婚して寿退社して5年ほどになるけど、ここ最近、夫経由で戻って来て欲しいと言われています。夫が部長に別室に呼び出されて何の話かと思ったら、「キミの奥さん、以前あの業務をやっていたと聞いたけど、出来れば社員、負担がおもいならパートででもきてもらえないか」と言われたらしいです。
IT技術者なんて、今の若い人がたくさんいるでしょうと思っていたのですが、それだけ人手不足なのでしょうね。
(Yahoo!コメントより)
「会社にもメリット」肯定派
育成コストがかからない、多角的な視点を得た人材になっているなど、人材戦略の観点から肯定派という声は目立った。
ただし、辞める時の態度は大事という指摘も。
人手不足で、中途でよくわからない人を費用かけて取るならば、即戦力になる退職した人に戻ってきてもらいたいと思うのは当然の流れなのかなと..(ただし、円満退社に限る)(Yahoo!コメントより)
転職経験者はどう見るか
できることなら戻りたい、という、転職者からの切実な声もある。
転職から約3年。その間、イジメ、降格左遷、給料激減。 今は周りに顎で使われながら、泥臭い職務をしてる。更に年明けからは、仕事量が倍になる。給料、等級は据置きで人員も増えない様子。当然ミスすれば、更なる降格。とりあえず頑張ってはみるけれど非常に不安。自業自得ですが、後悔と反省の毎日です。(Yahoo!コメントより)
転職先がばら色、ということはない。
私も転職したことあるけど、結局いいことばっかりじゃない。どこの会社もいい所もあれば悪い所もある。待遇を改善してくれて元の会社に戻れればそれもいいんじゃないかな。(Yahoo!コメントより)
転職した経験があります。この記事と同じような状態で、「大きな組織ではなく、小さな組織の方が、働くやりがいが多そう」という甘い考えでした。今までは分業制だったことも、全てやらなくてはならず、業務時間が増加しても収入はダウンでした。
「転職しなければよかった」一瞬でも思う人は、転職者の70%近くになるのではないでしょうか?(Yahoo!コメントより)
「出戻りは辛いよ」消極派
出戻り社員を認める風潮が高まっているからといって、すべて円満というわけにはいかないのも事実。
出戻りは辛いよ。個人的な話で申し訳ないけど、自分も辞めた会社に出戻ったことがあった。出戻った会社では全ての社員から無視されて孤立した。辞めた当時はいつても戻ってきていいからとみんなに言われたけど、実際には全く歓迎されないし、建前の言葉を鵜呑みにしてはならないとつくづく実感した。結局9ヶ月で辞めた。(Yahoo!コメントより)
会社や、そこで働き続けている同僚の胸の内をうかがう声は少なくかった。
いまは人手不足と言われているから笑顔で迎えるかもしれないが内心は反逆者の気持ちはあるはず、不景気なら普通に雇ったりはしない(Yahoo!コメントより)
とは言え、こんなに出戻りで歓迎してくれる会社はごく稀だろう。この人が相当人から好かれる性格をしていたのかもしれないが、大概は出戻っても無視されるか干されるかで結局辞めざるを得ない。(Yahoo!コメントより)
出戻りOK社会が示すもの
出戻り社員が増える流れは、単純に「辞めた社員を再雇用する」という話にとどまらない、という指摘は鋭い。会社への従属性が薄れ、雇用の流動化が起きれば、出戻りどころか企業への出入りはもっと自由になる可能性がある。
個人的にはフリーの傭兵みたいに色んな会社で働いて今ならネットで仕事を募集でも面白いな。正直人間関係の長期や会社の倒産は不安要素だけど転職しやすい社会なら悪くない。
フリーの雇用システムがしっかりしていれば会社は人手を確保しやすいしいらなければ減らしやすい、社員からすれば1つの会社に依存する必要もないので嫌な会社なら断れるし人間関係もライトにはなる。(Yahoo!コメントより)
波紋を広げる「出戻り社員」は、ポスト終身雇用制度の働き方を、示唆しているのかもしれない。
(文・滝川麻衣子)