副業解禁で激変する若者世代とマネージャー世代のキャリア観

「働き方改革、副業解禁で、大手企業でも公式に副業をOKにした会社が増えてきているらしい」

「副業をするなんて本業に集中できないし、無用の話なのでは?」

「いやいや、副業はお金のためだけでなく、成長機会や社外を知る意味でも重要だと思う」

最近、こうした「副業」というキーワードに関するやりとりが注目を集め始めています。特に、「金銭的な余裕を生むためにこっそりと副業をする」といったニュアンスだけでなく、働き方や会社と個人の関係そのものの変化だったり、現代の激しい変化を如実に反映しているトピックが、副業なのかもしれません。

そこで『”未来を変える” プロジェクト』では、ビジネスの最前線で活躍するビジネスパーソン、ベンチャー企業に勤務する面々に加え、一部大学生の方などを交えて、「副業の持つ意味は?」というテーマについて率直かつ赤裸々な議論を行いました。

本記事ではそこで交わされた多くの実態を踏まえ、個人・企業それぞれにとって「副業」の持つ意味を深掘りしてご紹介します。この時代に突きつけられた「副業」というキーワードが、あなたにとってどのような意味を持つのか、この記事を通じてぜひご確認ください。

金銭的報酬 VS「やりがい・学び・社会的つながり」というフレーム

まず、今回の議論で「なぜ副業をするのか?」という話になったとき、参加者から出てきたのは次のような話でした。

金銭的な報酬よりも、仕事では得られない “社会とつながっている感じ” がほしいんです。


自分自身がどんな立場にあるのか、何が好きなのかということを、仕事ではできないことに取り組むことで見極めてみたい。やりがいを探したい。


社内では学べないようなこと、外の世界で何が起きているかを肌で感じて、本業でも活かせるようにしたい。

そこで、お金以外のこれらの「副業」を通して得られることを「やりがい・学び・社会的つながり」とまとめ、参加者が語った自身の「副業観」をご紹介します。

副業に否定的なマネジャー

平日の大半を過ごす「本業」の時間こそ、金銭的な報酬だけでなく、「やりがい・学び・社会的つながり」に満ちたものにしなければ本末転倒です。これを個人に対して実現し、多くの時間に集中して高い成果を挙げられるようにするのが、本来のマネジメントが行うべきこと。

これが、会社への高いコミットメントと、マネジメントの役割について熱く考えるマネジャー型参加者のスタンスでした。これを図表にすると、以下のようになります。

マネジャーのスタンス

本業で取り組む仕事は、最初からやりがいや学びや社会的つながりを満たしているわけではかならずしもありません。

本人は目の前の仕事に集中して取り組み、試行錯誤することで成果を挙げ、周囲から信頼され始め、より大きな仕事をまかされるようになり、自分の強みを発見したり、仕事のやり方を変えたりしながら、仕事そのものを充実したものにしていく。マネジャーは、そういうことができるように部下を支援し、育てていく。

これこそが、会社としてあるべき姿。だからこそ、集中して取り組む時間そのものを奪い、他のことにわき目を反らしてしまいかねない「副業」には否定的というのが、このタイプの人のスタンスでした。

ある意味「副業」に時間を割きたくなるというのは、その時点で「本業」が金銭的対価以外の魅力を失ってしまっているというのも、彼らの指摘です。

副業を通して本業の再発見、本業との相乗効果を発見するという反論

一方、こうした考え方におおむね賛成しつつも、「副業」の価値を認める大組織のマネジャーからは、

副業することで、学びや刺激をもらい、結果的に本業の価値を再発見・再認識できることがあるんです。

という指摘もありました。これを図表にすると以下のようになります。

マネジャーのスタンス2

自分が長年所属している組織でいつも同じ考え方、同じ価値観で仕事を続けていると、いつしかそのこと自体を認識しなくなっていることがあります。

例えば、「消費者そのもの、相手そのものに憑依して、その視点でモノゴトを考える」というマーケティング感覚が極めて強い組織で生きてきた人にとって、「自分が純粋に作りたいものをわがままに作り込む」という考え方は、まったく想像もつきません。

一方で、「副業」の時間を通して、そうした働き方をベースとする組織やチームに加わると、目からウロコの連続になります。自分が本業で接しているパートナー企業がそうした考え方を持っていたり、あるいはセミナーや書籍でそうした考え方を知ったとしても、それほど影響を受けることはなかったでしょう。

報酬を受け取って「副業」を行うと、副業先のルール・文化に合わせようという意識は多くの人にとってより強いものになるというのがポイントです。

お金をもらっている以上、相手の組織に合わせよう、「プロダクトアウト」な組織のルールに従属的にどっぷりつかってみるかと考えてはじめて、「なるほどなあ・・・自分たちが作りたいものをわがままにつくり、相手がどのように受け取るかなんてことはノイズだと思って気にせず取り組むというのはこんな感じなんだ・・・」と実感できるようになります。

その結果、あらためて感じるわけです。「ああ、自分はやっぱり、相手がどういうことを感じ、考え、受け取ってくれるかを起点にモノゴトを進めるのが大好きだし、没頭できるんだ」と。

そうして気持ちを新たに本業に取り組んでみると、今までよりももっと鮮明に「自分は、自分の強みを活かしている。これこそが自分の “やりがい” の源泉なんだ」と再認識できるようになる。

金銭を受け取ることで、強制的に「副業」側の文化に従わなければならなくなることが、こうした学びをもたらすというのが、このパターンのポイントです。

「副業」ではなく「複業」していますという人たち

さて、ここまでの流れにとはまた異なったスタンスの人が登場します。

自分はそもそも、本業、副業ということではなく “複業” なんです。

という面々です。これを図表にすると、次のようになります。

人たちのスタンス

副業ではなく、複業だというタイプの人は、どの仕事から金銭的報酬の多くをもらい、どの仕事からはそれほどもらわないかといったことはあまり気にしません。

自分が果たすべき役割が複数あれば、複数の仕事をする。


自分が学ぶべきこと、自分のやりがいが複数あるから、それによって仕事が増えるんです。

など、ごくごく自然に自分が仕事に求めることと、仕事や社会が自分に求めてくることを鑑みながら、新しい仕事を増やしたり、時間の流れとともにそれが必要なければ止める、といったことをするのが、このタイプの方々です。

この点について、グロービス経営大学院講師などを務める伊藤羊一氏は、次のようなコメントを寄せています。

僕が今パラレルでやっているのは、「自分の仕事」があり、それをヤフーに展開しているのがヤフーの正社員としての仕事であり、グロービスに展開しているのがグロービスの客員教授としての仕事であり、それ以外に展開しているのが自分が運営する会社であるウェイウェイとしての仕事。だから、僕は本業、副業ではなく、複業ということ。

同じく、さまざまなテーマに取り組んで仕事をしているウィルソン・ラーニングの三浦英雄氏は次のように語ります。

自分の人生の目的や実現したい世界観に向けた活動は、金銭の大小はあっても、いずれすべて自分にとって本業となるものだと思います。自分という資源を目的に沿って多重利用することで、個人の中に強みの多様性が生まれていくイメージです。 事業活動はシンプルに捉えると「問題」の「解決」だと考えています。ですので、本業か副業か、仕事か趣味かの区分けをせず、小さい活動からでも自分の強み、関心を活かした取り組みをすることで、問題の本質の理解や解決の発想が広がっていきます。

「副業」「複業」との向き合い方を問われる企業側

このように、個人のさまざまな「副業(複業含む)」に対する捉え方を聞いていくと、

  • 「副業」をせずに自分の仕事だけに邁進する
  • 外部での「副業」を本業の糧にする
  • 副業ではなく複業として「副業」を捉える

など、個々人によって「副業」の活かし方、捉え方は一様でないことが分かります。

であれば、組織側は、こうした副業に対する捉え方、取り組み方を本人に委ね、情報漏えいや職権の悪用などをクリアした上であれば、自由に「副業」に取り組めるようにするのがあるべき姿なのではないか、とも考えられます。

実際に、サイボウズ、リクルート、ロート製薬を始めとした大企業でも、公式に副業を認めることを制度に織り込む動きが活発化しています。

政府も、「働き方改革」の中で、企業が就業規則を定める際に参考にする厚生労働省の「モデル就業規則」から副業・兼業禁止規定をなくし、「原則禁止」から「原則容認」に転換するという姿勢を打ち出しています。

そのため、制度として「副業」への捉え方を織り込む本業企業側にとっては、自社の働き方をどうするのか、大いに試される局面が訪れていると言えます。ある「副業」を容認している企業の担当者は、赤裸々にこんなコメントを寄せてくれました。

弊社のコンセプト上、副業を容認してるのですが、本業に対する時間や熱意が下がっていて、毎日定時に帰り、副業してる人が1人出てきました。手伝っていたベンチャーに転職すると言い出す人も出てます。本業に集中したいと思える環境を作りきれていないというわれわれの反省とともに、集中力が分散するということはあるな、と正直思いました。

これを図にすると、以下のようになります。

抱える難しさ

本来は、組織側として「本業」の価値が高まるように副業への取り組みを推奨したものの、実際には、副業のほうが本業よりもさまざまな側面で魅力的に感じ、本業への集中が落ちる。そして、最終的には社員が退職してしまう。

これは副業を容認する組織側からすると、「副業をしていたとしても社員が自社に留まりたいという魅力ある環境を作らなければならない」ということを突きつけられるとともに、「社員を失うリスク」についても考えなくてはならないことを意味します。

移るべき組織に移ることを推進するのも「副業」かもしれない

企業側からすれば「脅威」ともなりうる副業経由の転職ですが、これは個人からすれば、これからの時代にあるべきパターンなのかもしれません。

ある女性は、自分個人としては一つのことに集中しなくなるという観点で、「副業否定派」と言いながらも次のような指摘をしていました。

私は副業経験があります(正確に言うと、個人事業主として複数の仕事を同時並行)。個人事業主としての経験から感じるのは、 自分自身の志向/特性を確かめるために一時期は副業をしていてもよいと思いますが、それを見極めた後はいずれ本業に絞るのがよいということです。「本業から別の本業へのシフトを何回か続ける」というのは、これからの潮流になる気がします。

こうした「本業」を何回かシフトしていくというスタンスについては、ロンドン・ビジネス・スクールのリンダ・グラットン教授も、その著書『ワーク・シフト』『ライフ・シフト』の中で次のような指摘を行っています。

未来の世界では、専門分野の脱皮を遂げる重要性が高まっていくだろう。(中略)第一は、新しいチャンスが目の前に現れたとき、未知の世界にいきなり飛び込むのではなく、新しい世界を理解するために実験をすること(『ワーク・シフト』P.276)

そして、これらの書籍でリンダ氏が「フリ―エージェント」と呼ぶ人びとが自分の状況に応じて新しい仕事へとシフトを続けていくことが、結果的に社会全体の活力を高め、変化に対応することにつながるのかもしれません。

これからの時代の変化、そして自分自身の仕事の変化を見据え、今一度「副業」について考えてみてはいかがでしょうか?

[編集・構成] “未来を変える”プロジェクト 編集部

未来を変えるプロジェクトから転載(2017年6月29日公開の記事)

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