Business Insiderの年次ビジネスカンファレンス「IGNITION 2017」のステージ登壇の模様。写真左が米アマゾンのアレクサ担当バイスプレジデントのトニ・リードさん。聞き手はBusiness Insiderのスティーブ・コバチ(右)。
撮影:浜田敬子
米アマゾン・ドット・コムは11月30日、音声認識機能「アレクサ(Alexa)」の企業向けサービス「Alexa for Business」を発表し、同日サービス提供を開始した。
ニューヨークで開かれたBusiness Insiderの年次ビジネスカンファレンス「Business Insider IGNITION 2017」に、アレクサと音声認識スピーカー「エコー」担当ヴァイス・プレジデント、トニ・リードさんが登壇。同日、ラスベガスで開かれたアマゾンAWSの世界会議「re:Invent 2017」(リ・インベント)で発表されたオフィス向けアレクサ「Alexa for Business」について語った。
アメリカでは、家庭用の音声認識機能が搭載された端末が次々と登場している。同社はアレクサ搭載のエコーでシェアトップだが、ビジネス利用にも広げ、さらにシェアを拡大させる狙いだ。
会議室の予約やスケシュール管理も音声で
Alexa for Businessは、会議室の予約やスケジュールの管理を音声でできるようにする。業種や企業によって最適化させることが可能で、機能のアップデートにも対応する。
アレクサは、すでに電話応答や監視カメラなど、企業向けに使える可能性がある機能を追加してきた。 ただ、オフィス内には複数の社員が働いていて、声で操作することが、他の社員の迷惑になる可能性もある。また監視カメラなどが、いつ作動しているのか分からないという懸念もある。
これに対し、リードさんはこう反論した。
「エコーは将来のビジネスインフラになる。また、エコーは音声で起動しない限り、スリープ状態にあり、データはクラウドに送られない」
またリードさんは世界展開についても明かした。
アレクサとエコーは、日本で出荷が始まったばかり。世界展開は、オーストラリア、日本、インドを皮切りに、イギリス、オランダなどにも広げるという。国によって多少ローカライズはさせるが、アレクサの音声が持つ「性格」は、変えないようにするという。
人の声を「個別判別」する課題も
アメリカの自宅用エコーは、マーケットはまだ小さいものの使う人は急増している。自宅では、ラジオ、テレビ、電灯などの起動や、アマゾンでの買い物などに利用されている。アレクサに対応する家電も急増している。
ただロンドンでは、ペットのオウムが、飼い主の女性の話し方を真似て、アマゾンからギフトボックスを購入する「珍事」も発生している。英メディアによると、家族が注文した覚えがないギフトボックスが6箱配達され、オウムが注文した可能性が高まり、話題になった。
専門家は、アレクサには「個別判別」をする課題が残されているとする。
アマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は、2017年10月の第3四半期決算発表の際、以下のようにコメントした。
「数千万のアレクサ対応の端末が販売され、前年同期比の5倍以上に増加した」
11月のブラックフライデーから数日間だけで数百万台が出荷されたという見方もマーケット関係者の間にはある。
(文・津山恵子)
津山 恵子(つやま・けいこ):ジャーナリスト、元共同通信社記者。ニューヨーク在住。主に「アエラ」に米社会、政治、ビジネスについて執筆。近所や友人との話を行間に、米国の空気を伝えるスタイルを好む。