バスケBリーグ「グッズ購入倍増」の仕掛け人、27歳マーケ女子の素顔

男子プロバスケットボールリーグ・B.LEAGUE(Bリーグ)が、新リーグ発足2季目を迎え、2020年までに来場者数300万人目標に向け、勝負をかけている。カギを握るのが、未開拓とされてきた女性ファン層だ。

「女性ターゲット」というとピンクで演出したり、インスタ映えを意識した“フォトジェニック”を狙ったりしがちだが、Bリーグの女性向けマーケティングのキーカラーはブラック、オリジナルブランドはストリート系ファッションと、一味違う。

旧2リーグ合算比で入場者数は1.4倍の226万人と、昨シーズンの順調な滑り出しを支えたのは、化粧品メーカーから転身した27歳のマーケッターだった。

菅原瑠美さん

Bリーグ好発進を支えるミレニアル世代マーケッターの菅原瑠美さん。

キラキラインスタ映え女子は「2割」

「インスタばりばりやって、全部ピンクがいいキラキラ女子って、感覚的に世の中の2割くらいなんじゃないかと思います。あとの8割はそれを見て『いいね!』をしている。その8割を狙っていきたい

そう話すのはBリーグのマーケティング・商品企画担当、菅原瑠美さん(27)だ。

菅原さんは、日本バスケットボール協会とBリーグが出資し、Bリーグや日本代表のマーケティングや権利ビジネスを担当する B.MARKETING (Bマーケティング)へ1年前に転職。来場者数拡大はもとより、興行収入の柱となるグッズの販売や、Bリーグのイメージアップを狙ったブランディングを担当している。

Bリーグには36のクラブチームがあるが、「リーグができることはプロバスケのイメージ向上だと思っています」。

菅原さんがBリーグに参加して1年超。Bリーグのグッズ売り上げは試合会場と公式オンラインショップの合計で初年度目標の1億円を40%上回り、通常なら来場者数の10%とされる購入率を20%に引き上げた。入場者数1人当たりの売り上げ単価は1000円だが、これも「他スポーツと比較しても異例の実績」(Bリーグ広報)という。

菅原瑠美さん

好発進の大きな要因は、女性ファンを開拓したことだ。

「スポーツ観戦の来場者はどうしても男性の方が多くなる傾向にありますが、新リーグ発足初年度のBリーグファイナル2016-2017は女性比率が53%だった。これには彼女の存在がある」

Bリーグ広報部の新出浩行さんは、菅原さんについて、そう評す。

転職1年目でBリーグのマーケティング・商品企画責任者を任されたミレニアル世代、菅原さんの目のつけどころは、従来の「女性マーケティング」とは、一味違う。

1. “女性向け”にしない

マーケッターとしてBリーグに転職した菅原さんが「いけるな」と思ったのは、メーンカラーがブラックだったこと。

女性も黒は好きです。女性向けといえばピンク!とした方がメディア受けしますが、あまり引っ張られたくない。女性女性しているものは、逆に(女性は)引いてしまう

あえて男性向け、女性向けと分けずに、Bリーグのブランディングの軸にある「クールでかっこいい」路線をぶれずに行こうと決めた。

女性向けラインとしては、サイズで男女別をつくるだけ。あくまでメーンカラーの黒とロゴを生かしたブランド展開で「クールでかっこいいものが好きな女性」に訴求させた。

2. いわゆるグッズの概念をなくす

「スポーツ観戦の“グッズ”って、ちょっとかっこよくないと感じています。極力、グッズという概念をなくしたいんです

応援グッズやユニフォームをただ売るのではなく「Bリーグで売っているものは身近なアパレルブランドと並べても引けを取らない、というイメージをつくりたい」

Bリーグオリジナルブランドのスウェット。

Bリーグオリジナルブランドのパーカー。

Bリーグのオリジナルグッズのページへ飛ぶと、迷彩柄のマウンテンパーカー、ゴリライラストのプルオーバーパーカーにロングTシャツと、ストリート系ファッションを彷彿とさせるラインナップだ。従来のスポーツ観戦グッズのイメージとは一線を画す。

サイトのデザインも黒を基調に効果的にBリーグのロゴをあしらい、さながらアパレルブランドだ。

3. 普段使いで波及させる

「試合会場やコンサート会場でテンション高く買ったTシャツとかって、家に帰って冷静になると冷めちゃう。これどこに着て行くの? となる。そうではなく、帰ってからも着てもらいたい」

だからこそ、Bリーグオリジナルブランドの洋服は、シルエットや肌触りにこだわり抜いた。

「スウェットひとつにしても、ダボっとした大学の合宿で着るようなものではなくて少し細身にしたり、ジェラートピケ(女性に人気のルームウェアブランド)みたいなほわほわした生地で部屋着として着られるようにしたり」

その理由は明確だ。

交通広告を出すよりも、(Bリーグオリジナルの)Tシャツを着ている人を増やす方が効果があると思っています

「一生の仕事」をみつける

27歳にして、プロバスケ界のマーケティングを一手に担う菅原さんのベースには、新卒で入社した前職の化粧品会社の経験がある。

「もともと化粧にそんなに興味があったわけではないのですが、商品企画がやりたくて。川上から川下まで仕事の流れを全部やらせてくれる、中堅どころを選びました。ポイントは1年目から商品企画に携われる、ということでした」

年間5億円程度の売り上げ規模のブランドのセカンドライン立ち上げを任され、商品の品揃え、価格帯、ビジュアル、販売まで一通りを担当した。ブランドを回せるようになっていた入社3年目の秋に、Bリーグでマーケティング担当者の公募を目にする。

「マーケティング企画をキャリアの軸にしたい。そこにプラスして小学校から始めて社会人の今も続けている、大好きなバスケットボールという要素があれば、一生の仕事にできる、と」

インスタ

SNSのフォロワーは統合前から315%増の40万人に達した。

Bリーグの公式インスタグラム

モノを買わない時代の購買動機は

現在のプロスポーツの市場規模は、野球1600億円、サッカー1000億円に対し、バスケ100億円とまだまだ小さい。2020年までにチケットや物販込みで年間売上高300億円、来場者数は年間300万人を目指し、2年目からの正念場を迎えている。

人口減少社会に加え「モノを買わない」時代の消費者とどう向き合うか。

今の消費者の購買動機について「質と、特別な体験に付随していることは絶対条件。ファイナル試合を見ると、会場が黄色い Tシャツで埋まっていたりする。配っているわけではありません。一体感の中に自分が入っているという特別な体験を買っている。そもそものところに、特別な体験ができるという材料がある」。

これに加え、アパレルブランドに引けを取らないおしゃれなイメージを持ってもらうことができれば「(Bリーグは)他のスポーツグッズやアパレルブランドより、優位な立ち位置にいると思います」

ミレニアル世代のマーケッターには、時代を見据えた勝算がある。

(文・滝川麻衣子、撮影・今村拓馬)

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