ソフトバンク、ベイン、武田が2017年M&A市場を席巻 —— 海外企業の日本買いは過去最高水準

2017年の日本企業のM&A(Mergers & Acquisitions=合併・買収)の年間件数は、年初から11月末までに2700件を超え、過去最多を記録した2006年の2775件に迫る勢いだ。金額ベースでは3年連続で11兆円を超え、ソフトバンクや武田薬品工業、プライベートエクイティ(PE)のベインキャピタルなどの強い買収意欲に支えられた。

孫正義氏

事業買収を頻繁に行う日本のディールメーカーとして、国内外にその名を馳せる孫正義氏率いるソフトバンク・グループ。

REUTERS

M&A助言のレコフがまとめた直近のデータによると、11月末までの年間件数は2708件で、6年連続して増加。総額は11兆9572億円で、2016年に過去最高額を記録した16兆8496億円は下回っている。また、日本企業が海外の事業・企業を買収する、いわゆる「クロスボーダー・ディール(In-Out)」の総額は6兆3091億円で、全体の52%を占めた。

日本企業の海外買収が著しく増加し始めたのは1990年代後半。以来、海外買収の勢いは増し、1兆円規模の大型買収も見られるようになった。製造業であれば革新的なテクノロジーを獲得するための買収を行うケースが目立ち、食品や飲料、保険、メガバンクは需要の成長が期待できる海外市場のプレーヤーを買収するといった戦略的な動きが特徴だ。

クリストフ・ウェバー氏

クリストフ・ウェバーCEO率いる武田薬品は1月、米アリアドを買収することで合意。狙いは、革新的でターゲットを絞った薬剤を獲得すること。

REUTERS/Issei Kato

例えば、武田薬品は2017年早々に、アメリカの製薬会社アリアド・ファーマシューティカルズ(ARIAD Pharmaceuticals)を約52億ドル(6277億円)で買収すると発表した。武田薬品CEOのクリストフ・ウェバー氏は、革新的でターゲットを絞った薬剤を獲得して、血液がん分野のポートフォリオを拡大すると、大型買収に踏み切った理由を述べている。レコフのデータによると、武田薬品のアリアド買収は、2017年で2番目に金額の多い買収だった。

2017年1-11月M&A金額トップ10

順位 金額 (百万円) 買収社 被買収社形態
1 2,000,000ベインキャピタルを軸とするコンソーシアム東芝メモリ買収(out-in)
2 627,750武田ファーマシューティカルズUSAアリアド(米)買収(in-out)
3 550,000ソフトバンクグループ Xiaoju Kuaizhi Inc.(中国・滴滴快的持株会社)出資拡大(in-out)
4 375,200 ソフトバンクグループ、共同投資家フォートレス・インベストメント(米)買収(in-out)
5 365,996 米セブン・イレブン(セブン&アイ・ホールディングス)スノコLP(米)事業譲渡(in-out)
6 328,260 ソフトバンク、ソフトバンク・ビジョン・ファンドウィーワーク(米)資本参加(in-out)
7223,480ソフトバンクグループなどグラブ(シンガポール)出資拡大(in-out)
8 215,000KKR、日本産業パートナーズ日立国際電気買収(out-in)
9 202,674りそなホールディングス関西アーバン銀行、みなと銀行合併(in-in)
10 175,500三井住友海上火災保険ファーストキャピタル・インシュアランス(カナダ)買収(in-out)

(レコフのデータを元に作成)(「out-in」:海外企業による日本企業への出資、買収。「in-out」:日本企業による海外買収・出資。「in-in」:日本企業同士の買収・合併・出資)

そして、事業買収を頻繁に行う日本のディールメーカーとして、国内外にその名をはせるのが孫正義氏率いるソフトバンクグループ。2017年のM&A金額ランキングでは、タクシー配車とライドシェアで中国最大手の滴滴出行への出資や、コワーキングスペースを運営するアメリカのWeWork(ウィーワーク)への資本参加、東南アジアで配車アプリを提供するグラブ(本社:シンガポール)への追加出資など、ソフトバンクが関与したディールが目立った。

ベインキャピタルの存在感

日本企業は海外買収を進める一方で、さらに企業価値を高めるため、国内ではノンコア事業の売却を活発化させている。そして、手放される事業の取得に意欲的なのが、ベインキャピタルやKKRを中心とするアメリカのPEだ。

2017年、米系PEを含む海外企業による日本の企業または事業の買収総額(out-in)は、11月末までに3兆6347億円で、少なくとも2003年以降では最高額を記録した。Out-inの買収が3兆円を超えたのは、2003年以降では3兆187億円を記録した2007年のみ。

PEの中でも、日本市場で企業再生の分野において一段と存在感を増しているのがベインキャピタルだ。同社は、東芝のフラッシュメモリー事業の買収を行う企業コンソーシアムの主軸であり、2017年のOut-in買収の増加をけん引した。

杉本勇次氏

ベインキャピタルは、日本市場で企業再生の分野において一段と存在感を増している。(写真はベインキャピタル・日本代表の杉本勇次氏)

REUTERS/Kim Kyung Hoon

また、ベインキャピタルは12月7日、国内広告3位のアサツーディー・ケイ(ADK)株への株式公開買い付け(TOB)が成立したと発表。今後、ADKの収益力を強化し、数年後に同社の再上場を目指すという。

ベインキャピタルは過去に、すかいらーくや雪国まいたけ、マクロミル、ドミノ・ピザジャパン、大江戸温泉ホールディングスなどに投資をしてきた。すかいらーくは、ベインキャピタル傘下で再建を進め、2014年10月に再上場を果たした。インターネット調査会社のマクロミルは2017年3月、東証1部に上場している。

M&A金額の推移】(単位:百万円)

IN-OUTOUT-IN合計
2013年5,432,169671,324 7,900,030
2014年5,798,1671,191,8789,338,688
2015年11,217,7121,022,01316,214,214
2016年10,558,1592,572,007 16,849,580
2017年1月〜11月6,309,0733,634,72511,957,226

(レコフのデータを元に作成)(「out-in」:海外企業による日本企業への出資、買収。「in-out」:日本企業による海外買収・出資)

日本のM&A市場は12月に入っても大型の買収案件がちらついた。

日本ペイントホールディングスは、米塗料大手アクサルタ・コーティング・システムズを買収するための交渉を続けていたが、合意に至らず協議を打ち切った。12月1日、同社は「両社を取り巻くさまざまな状況を慎重に検討した結果、検討を中止することを決定した」とコメントを発表した。

合意すれば1兆円を超えると言われた超大型の海外買収案件だった。

(文・佐藤茂)

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