23万人登録の小学生YouTuber —— 広告動画や会社設立、撮影編集に追われるママたち

「男子中学生がなりたい将来の職業」トップ3(ソニー生命調べ)にも入るようになった“YouTuber”というお仕事。YouTuberを子どもに持つ親は何を思い、どんな生活を送っているのか? 2組の家族を取材した。

「ベイビーチャンネル」の姉・アンちゃんと弟・リョウくん

「ベイビーチャンネル」の姉・アンちゃん(11)と弟・リョウくん(7)。動画にも出てくるお気に入りのスクイーズと一緒に。YouTuber事務所のE-DGE(エッジ)に所属している。

23万人が登録する小学生YouTuber

2017年12月時点で23万人以上のチャンネル登録者を持つ「ベイビーチャンネル」。

始まりは2012年の夏。母親が娘・アンちゃん(11)に買ってきたおもちゃを使うためにYouTubeで見たレビュー動画だった。

ママ、私もこれ、やりたい!

アンちゃんは自らも登場したいと言い出したのだ。

当初は「無理だよ」と気にも留めていなかった母親は1年以上経って、娘の懇願に根負けした。

「1本だけ撮ってみようか」

IT企業に勤める夫の助けを借りて、撮影して編集。次の日、登録者のマークが一人ついたときは、「わあっ」と家族で大喜びした。

最初に投稿したお菓子紹介動画。まだ画質も荒く、編集もシンプルだ。

動画:ベイビーチャンネル Baby-Channel

「もともと、撮るのが好きだったのもあるんです。夫が仕事が忙しくて家にいないことが多かったため、気を紛らわすように子どもたちと動画を撮っていたので」

主な動画の内容は、おもちゃや菓子の紹介。その他、「おでかけ編」では買い物や遊園地に行った様子を動画にすることもある。今人気の動画ジャンルは「スクイーズ(スポンジのようなムニムニとした触感のおもちゃ)の紹介」だそう。ジャンルは約40にものぼる。

投稿した動画の中には、この動画のように再生回数がなんと2100万回を超えるものも。「赤ちゃんは、お気に入りの動画を毎日繰り返しで見る傾向がある。多分そのお気に入り動画になっているのでは」(母)。「アンパンマン」関連は再生数が伸びることが多かったそう。

動画:ベイビーチャンネル Baby-Channel

始めた頃は画質も荒く、編集もシンプルだった。それでも毎日動画の投稿を続けると、次第にファンがついてきた。2013年3月には、1日400人ほどのペースで再生数が伸びるようになり、登録者数は約4万人にまでなった。5月には外出すると声をかけられるほどになった。

「でも(人気になった)実感がなくて。毎日楽しいからやっていた。学校から帰ったら、(アンちゃんが)『今日は何するの!?』と」(母)

祖母から大反対されても続けた5年間

「ベイビーチャンネル」の姉・アンちゃん(11)と弟・リョウくん(7)

YouTuberの好きなところは?「おいしいお菓子が食べられたり、おもちゃで遊べたりするところ!」(リョウくん)

人気が出てくると、スポンサーもつくようなった。知育アプリや遊園地、菓子などは実際体験した感想などを話すことで、広告料金がもらえた。

2014年夏には会社を設立。だが、そのことをアンちゃんの祖母に報告すると、「子どもを前に出すものではない」と猛反対を受けた。仕方なく、顔は出さずに手だけを映して撮影をする日々が2年ほど続いた。

再生数は伸び悩んだ。どうしてもやりたいというアンちゃんの希望もあり、2016年の夏、祖母には告げずに再度顔出しでの動画投稿を踏み切った。そこまでするなら、と祖母もしぶしぶ納得。16万人ほどだったチャンネル登録者数は、1年余りで23万人に増えた。

顔出しなしで投稿していたときの動画。2年ほどはこの状態で続けた。

動画:ベイビーチャンネル Baby-Channel

YouTuderママたちの毎日は多忙だ。毎日朝6時起床。朝ごはんの用意や洗濯などの家事をしながら、朝7時30分までに子どもたちを学校に送ると、15時までに家事・編集・買い物を終わらせる。アンちゃん・リョウくんが学校から帰ってきたらまず宿題、そのあとは習い事がなければ動画撮影だ。撮影は週2、3回で、1回につき数本を撮りだめする。

「(ここまで登録者がついた理由は)よく分からないけれど、多分早く始めたからじゃないかな?」(母)

企画の提案もすることが多いというアンちゃんが今気になっているのは、モデル系YouTuberの「ねお」ちゃん。「(今は自分は系統が違うけれど)高校生くらいになったらファッション系もやるかな」と冷静に自分をプロデュースする一面も見せる。だが、自分が見るのはもっぱらテレビだという。

知育アプリ「赤ちゃんタッチ」のスポンサード広告動画。アプリや購入品の紹介動画もお手のもの。

動画:ベイビーチャンネル Baby-Channel

動画投稿を始めた当初小学校2年生だったアンちゃんは6年生に、幼かったリョウくんも小学校に入った。今のところ、アンちゃんの将来の夢はアナウンサー、リョウくんの夢はサッカー選手。2人ともYouTuberは「飽きるまでやりたい」というが、リョウくんはこっそりと「ドッキリでやるロシアンルーレットで、からいものを食べさせられるのが嫌」と教えてくれた。

この「仕事」は当たり前になっていく

Kanon&Rintarou Bonitos TVの姉・かのんちゃん(7)とりんたろうくん(4)

Kanon&Rintarou Bonitos TVの姉・かのんちゃん(7)と弟・りんたろうくん(4)。自宅に設置した動画スタジオでいつも動画を撮っている。機材も本格的だ。

「今の子どもたちが大人になる頃には、YouTuberという職業も当たり前の選択肢になっているはず。その選択肢を選べる状況を今つくってあげて、自分たちなりの立ち回り方も分かるようにさせておくのは、マイナスではないのかなと」

Kanon&Rintarou Bonitos TVチャンネルに出演するかのんちゃん(7)とりんたろうくん(4)の父親は、子どもの顔をネットに出すのは親として怖くないですか、という質問に対し、言葉を選びながらこう答えてくれた。自らもIT関連の仕事をしているという。

Kanon&Rintarou Bonitos TVは、2016年1月に開設。それまで母親はYouTubeを見たこともなかったが、かのんちゃんが「やりたい」と言い始めたことからまずは見てみた。もともと写真などクリエーティブなものを作ることが好きだったこともあり、これなら自分にでもできるのでは、と思ったという。

ゴーストバスターズの「なりきり」動画。脚本は父親、編集は母親がしており、クオリティーにはこだわって作っているそう。

動画:Kanon&Rintarou Bonitos TV

だが、動画編集はまったくの初めてで、Macの操作から学び始めたような状態だった。最初はかのんちゃんの母親がすべて一人でやっていたが、YouTuber事務所のUUUMに所属するときになってから、夫を巻き込んでやり始めたという。

2016年1月、投稿を始めたばかりの頃の動画。家族でディズニーランドに行ったときのものだ。

今は撮影・脚本を担当するのは主に父、編集は母。基本的に週末に撮影し、平日に編集する。

朝、子どもたちを小学校と幼稚園に送り届けたあと、最低限の家事をこなし動画編集に着手。14時になるとりんたろうくんのお迎えに行き、そのあと15時頃にはかのんちゃんが帰宅。17時に動画のアップを目指して最後の仕上げを済ませると、終わる頃にはへとへとだ。

部屋

動画編集の作業場。過去には、こだわりの編集をするあまりパソコンがフリーズしてしまうこともあったそう。

週末は撮影にかかりきりになる。1本あたり2〜3時間は撮影にかかる動画をまとめて数本撮る。なりきり動画(映画のキャラクターなどになりきった動画)になると7時間はかかり、週末は撮影だけでいっぱいいっぱいだ。

タレントにするより家族の作品を届けたい

事務所にも所属し、広告の案件が入ってくることもあるが、得た収益は撮影機材やスペックの良いパソコンの購入などに回している。今は「先行投資」の時期。たとえもっとお金が入ってくるようになったとしても、「家事代行は頼みたいけれど、動画は自分たちで制作したい」とこだわりを見せる。

かのんちゃん・りんたろうくんと父と母。

かのんちゃん・りんたろうくんと父と母。2人の将来の夢はやっぱり「YouTuber」!

今、子どもたちには一切YouTubeを見せていない状態だという。その理由は、かのんちゃんが、「別のYouTuberの●●ちゃん」が動画で言っていたセリフをさも自分の言葉のように言ってしまったことがあったから。動画にオリジナリティを出すため、両親もほかのYouTuberの動画は見ていないという。

子どもたちにタレントになってほしい、有名になってほしい、というよりは、私たち家族で作った作品を知ってほしいという思いですね。家族のチャンネルだと思っているので」(母)

多忙な日々だが、苦労して作り上げた作品が完成した時の達成感と、それが多くの人に見られた時の嬉しさが原動力になっている。かのんちゃん母は「目標は高く、1000万回再生です。もしチャンスがあれば、(自分が)YouTuberの仕事に専念したいとも思っています」と語る。

撮影で休日が潰れてしまうため、子どもたちが友達と遊びたいと言っても遊べない、ということもある。「土日は家族の時間」と言い聞かせつつ、その分、平日になるべく遊ばせるようにしているという。

「今のところはすんなりと受け入れてくれているけれど、今後その辺のバランスを取ってあげるのも必要になってくるのかな」(父)

(文・写真、西山里緒)

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