住人の半分以上がビットコイン長者になったサンフランシスコのシェアハウス

クリプトキャッスルはまるで、若いビットコイン投資家が集まる社交クラブのようだ。

全員がビットコイン関連の仕事をしているわけではない。だが、住人は全員がビットコインのメリットを理解している。単に寝場所が必要だったという理由でここに引っ越してきた起業家もいる。

2015年、ガードナーは自宅兼自分のスタートアップ、オーガー（Augur）のオフィスとして使える家を探していた。シリコンバレーから車で30分ほどの高級住宅街に3階建ての家を見つけ、2万ドルの敷金を払ってここを借りた。クリプトキャッスルはこうして生まれた。

その後、ここは｢仮想通貨のためにクールなことをやっている人の溜まり場になった｣とガードナーは語った。2段ベッドで眠る住人やゲストのほとんどが20代前半。

｢ここに2時間いて、誰からも感化されないことはあり得ない｣。同氏の資産は2013年にビットコインを200ドルで購入して以来、爆発的に増えた。

自動運転のスタートアップCommaの運営担当バイスプレジデント、ビビアン・フォード（Vivian Ford）は、ここに引っ越してきて1週間も経たないうちにビットコイン投資を始めた。｢これまでで最高の投資｣と語った。

今では友人が、こぞってアドバイスを求めにやって来る。

｢メールを送ってきて、『会えない？ 仮想通貨について詳しいよね』と言ってくる。でも自分で調べればいいと思う｣

ルームメイトのアレックス・ヴォートー（Alex Voto）はパロアルトのInstitute for the Futureでビットコインが社会、経済、政治にどのような影響を与えるかを研究している。

中を見て回ると、この家の住人がただ者ではないことがはっきりと分かる。

この家に住むなら仮想通貨をテーマにした雑誌『Distribute』は必読。雑誌は玄関に積み重ねられている。

冷蔵庫には仮想通貨関連のスタートアップのステッカーが勲章のように貼られていた。

キッチンには2種類の飲み物が常備されている。ソイレント（VCが投資している栄養機能食品の飲み物）とお酒。それも大量のお酒だ。

モチベーションの高いテック業界の人に囲まれて暮らすのは疲れるとこぼした住人もいた。土曜日、ジョギングから戻ってきた時に質問攻めにあったことがあるとフォードは語った。

フォードが働くCommaは2016年までこの家の地下にあった。シリコンバレーの寵児と呼ばれる同社の創業者ジョージ・ホッツ（George Hotz）は最初の自動運転車をこの家のガレージで作った。

ホッツもかつて、このクローゼットに住んでいた。｢ワークライフバランスなどなかった｣とフォード。

証券トレーダーでビットコインに熱中しているアーロン・パワー・ビアーデン（Aaron Power-Bearden）はリビングルームでハウスメイトと夜遅くまで語り合うことが楽しいと語った。｢大体ファイナンス関係の話をしている｣。

ゲストの1人が、前回この家に来た時に知らない住人がホットドッグを作ってくれた話をしてくれた。｢2週間後、彼がオキュラス（Oculus）の共同創業者だと分かった｣と彼は語った。

クリプトキャッスルでは、賢くて同じような考え方をしている人を見つけるために遠くまで出かける必要はない。

クリプトキャッスルの家賃はアメリカで最も高いこの付近の相場を考えると破格。毎月の家賃は入居者全員で割る。家の資産価値は300万ドルぐらいだろうとガードナー。

この2、3年、ガードナーは貯金や株のほとんどを仮想通貨への投資につぎ込んだ。その利益が彼の生活費を支えている。

｢仮想通貨とブロックチェーン技術に絞ったことで、一生をかけて稼ぐだろうと考えていた額を上回るお金を手にすることができた｣とガードナーは語った。