「国会の空気も変わってきた」——山尾志桜里×青野慶久が振り返る「2017年の政治・働き方改革」

12月8日、今年もっとも多くの人にパワーと勇気を与えたワーキングマザーを表彰する「ワーママ・オブ・ザ・イヤー2017」が、パワーママプロジェクト主催で開催され、2012年から副業を解禁し選択的夫婦別姓を訴えているサイボウズの青野慶久社長(46)と、待機児童問題を積極的に取り上げてきた山尾志桜里衆院議員(43)が「2017年働き方改革を振り返る」というテーマで対談した。働き方改革をめぐるポイントを3つの視点でまとめた。

青野慶久サイボウズ社長・山尾志桜里衆院議員

必要な「働き方改革」は多様性を受け入れることと語る青野慶久サイボウズ社長と「政治家は一生の仕事」という考えをやめたほうがいいと語る山尾志桜里議員

1. みんなが金曜日に休みたいわけではない。一律から多様性へ

「働き方改革」について、青野さんはブームが続いていることは評価しつつも、こう指摘した。

「今話題になっているのは長時間労働や残業が中心で、ワーキングマザー(ワーママ)は短時間勤務や病児保育の充実など別の改革を求めている。ブラック企業の事例ばかり直しても、ワーママからするとあまり前進はないな、と」

本当に必要な『働き方改革』は一律から多様性。プレミアムフライデーも、全員が金曜日に休みたいわけではない。子育てや介護など、みんな働く条件が違うんだから、それをいかに受け入れていくのか、が大事」

サイボウズ新聞広告

サイボウズが新聞に出した“お詫び”広告。

提供:サイボウズ

また、山尾さんは今43歳だが、子育てに対する世代間の考え方の違いについてこう語った。

「上の世代は『配慮していただかなくても私は大丈夫です』と言わないと、働き続けられなかった。私たちの世代は『配慮はお願いできる』。でも、配慮ってお願いする方も、受け止める方もつらくないですか。子どもを2人、3人持てば子育ては10年、20年続く。10年配慮をお願いし続け、子どもを持っていない人たちは『なぜ、そのしわ寄せがいつも自分たちに来るのか』と思ってしまう」

「しかも、お願いするときに、『あなたは子どもを連れてこないための努力を最大限したんですか?』と突きつけられる。『全部やってそれでもダメなら仕方ないよね』と。何かお願いするときに自分の事情を全部言わないといけないんですか? 次の20代、30代には、そうじゃない、当たり前だよね、という空気にしてバトンを渡したい

青野さんは、「仕事ばかりやってきた経営者がアホだと思っているんです。子育てする前までは育児も大事だけど、やっぱり仕事が大事だと思っていた。でも、子育てをして、育児してくれないと市場がなくなると気づいた。商売人は子育てを最優先にすること。育児の隙間に仕事をしろ、と。事業を少々やめたって人類は滅びないが、育児やめると人類が滅びる。経営者は考え方を変えないといけない。今は仕事が偉すぎる」と話した。

一律から多様性へ、という視点では、青野さんは2018年に選択的夫婦別姓を求める裁判を起こす準備を進めている。現在日本では入籍した場合、夫か妻のどちらかが改姓をしないといけない。

「姓を変えたい人は変えればいいし、変えたいと思わない人はそのままでいいようにした方がいいのではないか。これは憲法違反ではないかと訴えている」(青野さん)

青野さんは2001年に結婚し、妻の氏を名乗ることにしたが、「旧姓を使って働くのがどれだけ大変か。変えたことがないおっさんは分からない。ホテルの予約も大変で、どっちで取ったか確認しないといけない。待機児童と同じで、声を上げていかないとわからない」

最高裁では2015年、「夫婦同姓は合憲」とする判決が出ているが、3人の女性の裁判官は全員違憲と判定。

「裁判では違憲ではないと出たが、裁判じゃなくて国会でやってくださいと言われたと受け止めて、なんとかやりたい」(山尾さん)

当日会場には30人以上のワーキングマザーがいたが、全員が仕事の場では旧姓を使用。野田聖子総務相など自民党にも賛成している議員も存在する。

姓は96%の女性が変えているのに、国会議員の9割は、姓を変えたこともない男性が占めている。でも政治家にとって名前ほど大事なものはないわけですよ。名前が変わることがどれだけ厳しいか、知っているのは皆さんじゃないですかと言っている」(山尾さん)

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青野さんはこう話した。

一律から多様性へ。働き方改革も夫婦別姓の話も同じ。選択肢があって、それぞれが自分らしい人生を歩めるようにする。これを理想にシフトしていきたい」

2. 政治の世界はイケてない会社と同じ。女性政治家が増えないワケ

世界経済フォーラムが毎年発表するジェンダーギャップ指数も、2016年の111位から114位にさらに最低記録を更新。山尾さんは国会議員に占める女性議員の少なさを指摘。安倍政権で「女性活躍」が叫ばれ、世界中で女性の国会議員や女性議長も増えてきているが、日本は世界平均の23.3%(2016年)を大きく下回る9.3%。193カ国中163位だ。国会の女性議員の割合は戦後70年間ほぼ変わっていない。

国会議事堂

閣僚は多くが男性議員が占め、国会議員の9割が男性。

撮影:今村拓馬

「今回3期目になって、『政治家の仕事とは何か』を改めて考えたが、政治家は一生の仕事、というのはやめたほうがいいんじゃないか、と。人生のある一定期間は政治家になって社会に貢献して、それが過ぎたら別の役割を果たしたらいいんじゃないか。そうすれば、ママとかいろんな人がトライできる。今は『落ちるまでは絶対にやる。落ちても絶対にやる』。これはハードルが高い。これを変えたい」(山尾さん)

青野さんも、会社と同じ構造だと指摘。

「本当に、それがダイバーシティ(多様性)を失わせている。何回当選したかが役職につながっている。年功序列。イケてない会社と同じ構造

山尾さんはさらにこう話す。

一生続けるのが前提になっていると、必要な能力は専門性ではなく、絶対に選挙に落ちないことになる。同じ政党の中や永田町の人脈が重要になってくる。これでは『選挙のための政治』になるしかない」

3. 当事者が声を上げれば政治は動く。政治家だけに政治をやらせていたらマズい

安倍政権が10月の総選挙の公約として突然掲げた幼児教育無償化。しかし、当事者の子育て世代は「無償化よりも保育園全入化のほうが先」と反発を強めている。山尾さんはこの件に触れ、「当事者の声で社会や政治は変わると分かった。去年よりまた一歩進んだ。最近はネットで声を上げれば一気に国会内で広がり、きちんと検討されるようになってきた。そういう意味ではいい年だった」と2017年を振り返った。

待機児童署名

安倍政権が打ち出した「幼児教育の無償化」。だが親たちは「待機児童対策を優先して」と3万人以上の署名を集め、片山さつき参院議員に提出した。

2016年、流行語大賞にも選ばれた「保育園落ちた日本死ね」。そのブログを初めて国会で取り上げたのは山尾さんだ。当時は、「匿名でしょ?」と言われたが、「だったら私たちが名前を名乗るよ、とわずか1週間で2万7000人以上の署名が集まり、無視できなくなった」と当事者の声の重要性について語った。

青野さんも幼児教育無償化について、「(安倍政権が)打ち出した時は『まだ分からないか』と驚いたが、当事者の声を届けたら国会議員も耳を傾けるようになってきた。いい流れができつつある」と語った。

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一方、山尾さんは「私たちは単に保育園に預けられればいいのではなくて、安心して預けたい。基準を下げて入園者を増やす方向は避けたい。保育園のクオリティーを上げてほしい、という声が届いていない」と指摘。

政治家と当事者の垣根を低くしたい。それぞれが、やれるときにやれることをやり続けるのが大事。政治家だけに政治をやらせていたらマズい。みんな忙しいので労力はそんな割けないけど、生活の一部を使って声を上げてそれが集まったら、社会が動いていく、そういう楽しい成功体験をつくっていきたい」

(文、撮影・室橋祐貴)

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