レシピ動画出遅れクックパッドは巻き返し策は?鍵はユーザー投稿

クックパッドは2017年12月、レシピ動画の調理・撮影を担うユーザーのために、立派なスタジオをオープンさせた。

レシピ動画の市場で“出遅れた”クックパッドは、「ユーザー基盤を生かすことで、圧倒的な動画本数」を目指す。しかし、競合のクラシルは、「参入は遅い」「(動画本数の)ニーズは取りきった」と冷静に構えている。ユーザーたちは、クックパッドの救世主となるのか。

ユーザー動画の仕上がりは?

クックパッドのユーザーが作った動画を、競合他社の「クラシル」のプロの動画と比較してみよう。

クックパッドのユーザーが作った動画。

出典:cookpad、「濃厚ビスケットブラウニー」の投稿者「ちゅんまっち」

競合他社のクラシルが自社で撮影した動画。

出典:クラシル

仕上がりはさすがにプロの撮影にはかなわないが、クックパッドは少しでもユーザー動画の質を高めようと、プロ顔負けの立派なスタジオを設けた。

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クックパッドが代官山に12月にオープンしたスタジオ。

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クックパッドではユーザーが持参したレシピをもとに調理する。

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料理の過程は上部に設置されたカメラで撮影する。

12月初旬、クックパッドの第1号のスタジオを訪ねた。代官山から歩いて2分程度、スタジオには、人気ユーザー4人が集まっていた。4人がまず始めたのは絵コンテ作り。レシピ動画の撮影経験がある2人が付き添い、内容や見出しまでをアドバイス。動画の目安は1分間で10〜15コマ程度という。

30分ほどで絵コンテを作り、調理・撮影スペースに移動。撮影は、調理スペースに固定された頭上のカメラで行う。手元のタブレットで、調理作業ごとに撮影を開始・停止し、コマ数を重ねる。

カメラに頭が写らないようにしたり、調味料を一度見せてから加えたりと見栄えのする動画にはそれなりのコツがある。タブレットでアプリを操作するだけでトリミングや見出しの挿入が簡単にでき、動画を編集できる。

ユーザーは食材を持参すれば、調理から撮影・編集まで無料でスタジオを利用できる。

クックパッドに眠る膨大な動画の種

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編集自体はすごく簡単。タブレットでアプリを操作し、見出しを挿入、動画をトリミングする。

無料で立派なスタジオが使えるとはいえ、作業は慣れないと大変そうだ。調理から編集まで数時間、なぜユーザーたちは、クックパッドに“奉仕”するかのように、動画化に協力するのか

参加者に聞くと、「普段からレシピ動画を見ていて、あんな風に撮影したいな、と思っていた」「家だと片手にスマホを持って撮影し、調理するのは大変」と“撮影願望”があるのだ

プロとアマのどちらの動画が見たいか、と尋ねると、「プロが作る動画よりも、素人が作る方が、リアルな調理を見せられて、より伝わりやすい。(動画撮影に)ちょっとハマりそう」と早くもリピートを希望していた。

現在、クックパッドに登録されている静止画のレシピは280万品超「冷蔵庫にあるもので」というきめ細かいニーズに対応したレシピが詰まっている。それをユーザーが動画に置き換えていくだけで、膨大な動画の本数が積み上がる。

岩田林平代表は「料理動画数世界一」を目標に掲げ、「動画を自分でつくるのは制作本数も限界がある。ユーザー基盤を活用して、他社にはできない圧倒的な本数を実現する 」と11月の記者会見で話していた。

ただ、スタジオのキャパシティーは現在、1日12人。「満足のいく動画を撮影してほしい」と1人の所要時間は、4時間とたっぷり確保している。

2018年末までに国内5カ所にスタジオを拡大する計画だが、動画数を積み上げていくには、かなりの時間がかかりそうだ。

なぜこのタイミングで「本格参入」?

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クックパッドの利用者は減少傾向、一方、新興のレシピ動画サイトはユーザーを伸ばしている。

出展:ヴァリューズ

岩田氏は記者会見で、ユーザー投稿型のレシピ動画サービスと、新たな動画広告のメニューを紹介し、「(動画市場に)本格参入する」と説明した。

クックパッドは2016年11月に自社で動画を配信する「Cookpad TV」を始めている。ユーザーが投稿できるシステムも実は、すでに存在していた。クックパッドのユーザー数は減少傾向にあり、一方で新興レシピサイト「クラシル」などはユーザー数を伸ばしてきた(分析サービス「ヴァリューズ」の調査)。

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レシピ動画は料理の経験が浅い若年層の利用者も堅調。

出展:Cookpad

すでにレシピ動画を始めていたクックパッドが改めて、「本格参入」の色を打ち出すために頼ったのは、他社が参入していない「ユーザー投稿型」だった。

ユーザーの動画は質の担保が課題。そのために撮影しやすい環境を提供し、「動画をつくる楽しみを感じてもらえるように」(岩田氏)とこだわりを説明した。

レシピ動画の主要な視聴者は料理の経験が浅い若年層。人気ユーザーがレシピ動画をSNSで拡散することで、「新たな料理の作り手を増やす」(岩田氏)ことに重点を置いた。

スタジオの投資コストは、メーカーの商品体験会や発表会とタイアップすることで回収し、「運営コストはゼロベースにできる。実質0円で動画が投稿できる」(今田敦士・料理動画本部長)ととらえている。

数はクラシルが「ニーズを取りきった」

競合他社は、クックパッドの動きをどのように見ているのか?

クックパッドが目指す「動画本数世界一」は、2016年2月にサービスを開始したクラシルが、1年6カ月で達成した。月に1000本を自社で制作し、2017年9月時点で1万本を超えている。

クラシルを運営するdely社の堀江裕介代表は「僕らも初期は数を作り込んだが、もう(クラシルが)そのニーズは取りきった」ととらえ、クックパッドの参入に「大したダメージはない」と話した。

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レシピ動画世界一を売りにするクラシル。

出典:クラシル

クラシルのユーザーの検索ワードを見ると、「カレー」「野菜炒め」などといった定番レシピの検索が多い。ほとんどのユーザーが思いつくレシピ数は最大でも1000個のキーワード。それぞれ10レシピを用意すれば、それがユーザーにとって必要なレシピ数の頭打ちだ、と堀江氏は考えている。

さらに堀江氏は、料理動画に早くから参入したことで、クックパッドがリーチできていなかった新規の料理の作り手もすでに獲得できている、と自信を見せる。「今のクックパッドのユーザーを離さないための戦略ならありだが、参入は正直遅いと思う」(堀江氏)という。

実際に、スタジオを使って料理動画の撮影ができるのは「すでにクックパッドにレシピを投稿したことがある」ユーザーに限られる。「新たな料理の作り手を増やす」という岩田氏の考えとは裏腹に、初心者にとって動画投稿のハードルは低くはない。

12月に1000万ダウンロードを達成したクラシル。対するクックパッドは、来年からレシピ動画のユーザー課金も導入する予定だ。クックパッドの岩田氏は「競合を意識するよりも、新しい層を業界全体として盛り上げていきたい」と大きく構えているが、2018年は新しいターゲットの奪い合いが熱を増しそうだ。

(文:木許はるみ、西山里緒、撮影:木許はるみ)

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