インドの首都ニューデリーで開かれた、日本とインド両国の政治経済、文化、技術などについて意見交換するイベントで、安倍晋三首相の実弟の岸信夫衆院議員が2017年12月13日、「世界で最も可能性を秘めた二国間関係だ」とする首相のメッセージを代読し、両国の親密ぶりをアピールした。
このイベントは、12月11日に開幕した「グローバルパートナーシップサミット(GPS)2017」で、インドの民間団体が主催。岸氏が首相のメッセージを携えて参加したほか、二階俊博・自民党幹事長がビデオメッセージを寄せるなど、与党としてはかなりの肩の入れようだった。
主催団体の代表、ヴィバウ・カント・ウパデアーエ氏(左)と岸信夫衆院議員。
撮影:小島寛明
GPSの主催団体は「インドセンター・ファウンデーション」で、インドへの投資を加速するソフトバンクグループなどが開催を支援している。日本とインドを中心に世界各国から企業経営者、研究者、政治家らが集まり、イノベーション、農業、インフラなどさまざま分野で議論している。
同団体の代表を務めるヴィバウ・カント・ウパデアーエ氏は、東京大学でコンピューター・サイエンスを学んだ親日家で、与野党を問わず日本の政界関係者との親交が深い。インドでは政界進出が噂される有力者でもある。
岸氏は、13日に開かれた「特別セッション」に顔を出し、安倍首相の「両国は民主主義、法の支配などの普遍的価値、戦略的利益を共有し、協力分野は安全保障、経済、人的・文化交流にも広がっている。現下の不透明な情勢において、日印両国はインド太平洋地域と、世界の反映と安定をけん引していく責任を有している」とするメッセージを読み上げた。
ヴィバウ氏もこのセッションの中で、「岸さんと兄の(安倍)首相は、インドセンター・ファウンデーションの構想の協力なサポーターであり続けてくれた」と安倍首相と岸氏を持ち上げた。
12日夜に開かれた開会のセレモニーでは、与野党の国会議員4人が顔を見せ、二階俊博・自民党幹事長と西村康稔・官房副長官がビデオメッセージを寄せた。
グローバルパートナーシップサミットの開会セレモニーには、日本から与野党の国会議員も駆けつけた。
撮影:小島寛明
ただ、民間団体の主催イベントは、政府が全面的にバックアップすることはできないためか、参加した国会議員たちは「個人の資格での参加」を強調した。
GPSの事務局関係者も「日本政府の代表として安倍首相がメッセージを出したということではなく、自民党総裁の立場でのメッセージをいただいたものと聞いている」と話す。
ヴィバウ氏は「最初は頭がおかしいと言われたこともあったが、20年前からインドセンターの活動を続けてきた。フランスとドイツが一緒に欧州連合をつくったときは、民間のダボス会議の存在があった。日本とインドが一緒になれば、アジアをいい意味でまとめていくことができると考えている。この催しを、きっかけにしたい」と取材に答えた。
実際、日本とインド両国は近年、安全保障分野などで協力を深めている。防衛省によれば、2017年9月6日の日印防衛省階段の共同プレスリリースは「二国間の防衛協力が一層深化し拡大している」としている。
開会セレモニーでは、ダンスのパフォーマンスも。
撮影:小島寛明
大学で公共政策を学んでいるというリシャブ・チワリさん(20)は「文化や人生観、イデオロギーなど共通する点が多く、一緒にさまざまなことができると思う。日本に行ってみたい!」と話した。
13日の特別セッションで、岸氏が、2018年1月からインドからの短期滞在の旅行客等を対象に、ビザを緩和すると述べると、会場から拍手が起きた。
GPSに参加した自民党議員の一人は取材に、「何か特別なアジェンダを話し合うというわけではなく、長く付き合いのあるヴィバウさんからの招きで、個人の資格で参加したということだ。ただ、『一帯一路』を含め、台頭する中国と伍していくうえで、日本とインドの二国間関係はこれからますます重要になるね」と語った。
GPSは、2017年12月11〜14日の日程で開かれた。