トランプ大統領の次の標的は世界貿易機関か?

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Joe Raedle/Getty Images

トランプ大統領 政権移行チームの元上級アドバイザーは「貿易協定に関してホワイトハウスが次に標的にするのは、世界貿易機関(WTO)である」とBusiness Insiderのインタビューで示唆した。

米国最大級の鉄鋼メーカーNucorの元CEOで、Coalition for a Prosperous America(繁栄するアメリカ連合)の理事会メンバーでもあるダン・ディミッコ氏は、「今現在」あの世界的な機関は「我々のためになっていない」と語った。

1995年に創設されたWTOは160カ国以上が加盟しており、自由貿易促進を目的に加盟国が国際通商ルールを協議する場だが、それはトランプ大統領が選挙戦の時から掲げている保護主義と真っ向から対立するものだ。

もっともWTOに対する批判は設立当初からあった。非難の大部分は、中国のような、WTOに加盟していながらも、一方で保護主義的な政策をやめない国を十分に罰していないという意見である。

ディミッコ氏によると、WTOの主導による付加価値税(以下、VAT)の存在は、そのような税を課さない唯一の大国であるアメリカの輸出産業にとって不公平な状況を生んでいると言う。

VATを採用している多くの国にとっては、VATにより、貿易時の関税コストが払い戻されることになるが、米国が他のWTO加盟国に輸出した場合は、法人税とあわせて二重に税がかかることになるからだ。

「WTOに加盟したことで、アメリカは重大な不利益をこうむる立場に置かれた。なぜなら、VATは我が国の法人税に対立するもので、彼らにとっては自国の製造業者が製品を輸出する際にVATが代金の一部を割り戻すことになるからだ」

「我々の方法なら、フォードが自動車を輸出する際、製造コストに対して税の還付が受けられる。これは競争力にとても大きな変化をもたらす。たとえばヨーロッパに自動車を輸出する際は、すでに所得税を払っているのに、VATも払わなければいけないのだから」

ディミッコ氏の考え方は、新しく創設されたホワイトハウスの国家通商会議の代表を務めるピーター・ナバロやトランプ大統領が指名した商務省長官のウィルバー・ロスからは支持されている一方で、VATのシステムを誤って理解しているとの批判も受けている。

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ダン・ディミッコ氏(2009年)

Alex Wong/Getty Images

だが、非公式ながらトランプ政権にアドバイスを続けているディミッコ氏は、VATのせいで米国が1990年代から何兆ドルにものぼる貿易不均衡を積み重ねているのは「無理もない」ことだとする。

「この種の問題は解決されなければならない。歴代の政権が検討しているが、WTOは決して討議の場に座って交渉に応じようとしない。この状況は変わらなければならない。こんなことを続けてはいられない」

「これは重要課題の1つであり、もし、彼らが交渉に応じないのなら、トランプ大統領が取る道は明らかだ。“米国第一主義”にそぐわない取引を大統領は受け入れない。そしてこの件はまさにそれだ。大統領は脱退も辞さない。大統領が求めているのは世界の貿易を引っ張ることではなく、米国にとってより良い条件を勝ち取ることだ」

ディミッコ氏はさらに、取り沙汰されている国境税調整がWTOとのVAT関連問題を正す効果があるとして、すべての輸入品を対象に課せられるべきだと主張する。

「わたしは税制の専門家ではないし、(国境税調整の)草案の内容も見ていないが、聞いた限りでは、まだだいぶ時間がかかるようだ」

しかしながら、輸入品に対する国境税調整は消費者に直結するものだ。産業界では意見が真っ二つに割れている。小売業は嫌悪し、製造業は歓迎している。先週の火曜日(2017年2月21日)には、ウォルマートのCFO ブレット・ビッグス氏が「アメリカ国内の小売価格を上昇させる可能性を持つ要因を懸念するのは当然だ」と記者会見で語り、ウォルマートが税制案に反対する立場を示した。

昨年7月、当時のトランプ大統領候補は、NBCの番組『Meet the Press』に出演した際、「(トランプ氏が)推進しようとしている保護主義的な政策はWTOの規定に抵触するのではないか」とインタビュアーに問われて、もしWTOが自身の政策に干渉するなら脱退することもあり得ると警告し、強硬姿勢をみせている。

「問題ない。再度交渉するか、さもなくば脱退する。あの貿易協定は最悪だ。世界貿易機関は最悪だ」

ウォール・ストリート・ジャーナルはこの発言を受け、WTOから脱退することは「米国が世界各国と結んでいる低い関税率を無効にするものであり、アメリカの輸出品に対して貿易相手国から膨大な課徴金がかけられる可能性がある」と評し、あわせて、WTO加盟国によってアメリカの規定違反が追及される事態が起こりうるとも付け加えている。

source:NBC、ウォール・ストリート・ジャーナル

[原文:Former Trump trade adviser: The world's foremost authority on trade could be Trump's next target]

(翻訳:十河亜矢子)

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