インドが世界で最も利用者の少ない空港を買収、中国をけん制か

マッタラ・ラジャパクサ国際空港

スリランカのマッタラにあるマッタラ・ラジャパクサ国際空港で、最初の利用者となる同国の当時の大統領マヒンダ・ラジャパクサ氏の到着を待つ僧侶たち(2013年3月18日)。

AP Photo/Sanka Gayashan

  • インドが、スリランカで2番目に大きな空港を買収する。だが、この空港の1日あたりの利用者数は10人ほどだ。
  • 買収の背景には、インド洋で存在感を増す中国に対する懸念がある。中国は最近、重要な貿易ルートに位置する近くの港を掌握していた。
  • 専門家は、今回のインドによる3億ドルの投資は、中国がこの港を軍事拠点として使用する可能性を削ごうとするものだと話している。

インド洋での中国の影響力を削ぐため、インドは世界で最も利用者の少ない空港を買収する計画だ。

1日あたり100万人を受け入れるべく設計されたスリランカのマッタラ・ラジャパクサ国際空港 —— 同国の当時の大統領マヒンダ・ラジャパクサ氏の肝入りで、2013年に開港した —— は全く機能しておらず、1日あたりの利用者はわずか10人ほどだ。

それでもインドは共同事業者として3億ドル(約340億円)を出資、一時は米の備蓄庫として使われていたこのスリランカ南部にある約2000エーカー(約800万平方メートル)の空港を、40年間借り受ける予定だ。

「インドがこの空港を将来的にどう使うのか、計画はよく見えない。航空学校? インドの新しい新婚旅行先? 利益を生む可能性はほとんどないように見える。だが、今回の契約のポイントはそこではない」インド洋の戦略に詳しいオーストラリア国立大学のデビッド・ブリュースター(David Brewster)氏は、シンクタンクが運営するメディア『The Interpreter』にこう書いている。

代わりに、今回の買収の背景には、中国が運営するハンバントタ港に近いことがあるようだ。港は空港から車で30分ほどの距離にある。

中国がアジアとヨーロッパを結ぶ新シルクロード経済圏構想「一帯一路」を推し進める中、インドやアメリカ、日本は、中国がスリランカの港を軍事拠点として使うつもりではないかとの懸念を抱いている。だが、空港へのアクセスがなければ、その可能性も大きく阻まれる。

「海外の海軍拠点はもちろん、物流施設にとっても、人や物に空から容易にアクセスできることが重要だ。海軍の拠点であれば、沿岸の空中監視能力も必要になる。ハンバントタ港に近い空港をコントロールできれば、港の使い道に関しても、インドがある程度の影響力を持つことができる」ブリュースター氏は言う。「空港抜きでは、中国海軍がハンバントタをその重要な拠点として開発することも難しくなる。要するに、インドは3億ドルで空港を買うことで、中国の海軍拠点をブロックしている」

インド洋で影響力を増す中国を、インドが脅威とみなしていることには根拠がある。

アメリカ国防総省の2015年のレポートは、インド洋で中国のミサイル潜水艦が活動していることを認めている

その前の年には、スリランカとの関係を強化しており、これはインドに混乱を与えた。中国はコロンボ港に軍艦や潜水艦を入港させ始めた。

中国が、スリランカの港を世界で最も交通量の多い運輸ルートに結びつけた

ハンバントタの港

中国が建設したハンバントタの港に並ぶ、インド国内で生産されたヒュンダイの自動車。

AP Photo/Chamila Karunarathne

スリランカが中国政府にハンバントタ港の運営を正式に譲り渡したのは、最近のことだ。中国の国有企業、招商局集団(China Merchants Group) に、11億ドルで99年間リースされる。

この契約により、中国は世界で最も交通量の多い運輸ルートへのアクセスだけでなく、インド洋に面した数十カ国に対するアクセスを手に入れた。これには中国が急速にその影響力を高めているアフリカ諸国の他、人口が多く、市場規模も大きいインド、パキスタン、バングラデシュも含まれる。

フィナンシャル・タイムズは、中国が運営するこの港は「地域全体のサプライチェーンを改善し、より低い価格を実現し、貿易量を大幅に成長させるだろう」と述べている。

中国の新しい港は、インドを取り囲む「真珠の首飾り」の一環

真珠

REUTERS/Lang Lang

「中国による港の買収は、特にインド洋周辺での中国政府の戦略的、経済的な存在感の高まりを懸念するインドの不安を掻き立てた」アジア・太平洋地域のニュースに詳しい雑誌『The Diplomat』の安全保障担当の編集者アンキット・パンダ(Ankit Panda)氏はこう書いている。

インドでは、ハンバントタ港の買収は、中国の海上交通路戦略「真珠の首飾り」の一環と捉えられている。

1つ1つの真珠は、中国の軍事資産やインド洋やアジア太平洋の同盟国を意味し、それをつなげることでインドを取り囲もうというもの。マレーシアやパキスタン、バングラデシュ、ミャンマーもこれに含まれる。

中国は今年の夏、初の海外軍事基地をインドのすぐ西に位置するジブチに設置した。

[原文:India is buying world's emptiest airport in its battle for territorial dominance with China

(翻訳/編集:山口佳美)

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