育児休業の取得をきっかけとしたパタニティー(父性)・ハラスメントによる不利益を受け、うつ病を発症し、療養後も正当な理由なく休職命令を受けたとして、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の機関投資家営業部の特命部長、グレン・ウッド(Glen Wood)氏(47)が12月14日、同社を相手取り、地位確認、賃金支払いと損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。
Business Insider Japanが入手した訴状によると、ウッド氏は育休取得が認められなかった際に受けた苦痛と、育休を取得し後に受けた不利益に対する慰謝料200万円に加えて、未払いの賞与や賃金など合計約3900万円を請求した。
また、ウッド氏は14日、安倍晋三首相と東京都知事の小池百合子氏に宛てて、それぞれ書簡を送付。手紙の中でウッド氏は、企業が長期的に成長するためには、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3要素(ESG)の観点が必要であるという考え方が世界的に広まっていると記した。
「最高裁に行ってでも戦うつもりです」と述べるグレン・ウッド氏。(写真は2017年10月に撮影)
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その上で、自身が経験したことは世界の流れに逆行していると強調したという。ウッド氏は、安倍首相と小池都知事に対して、子育てをしながら仕事のキャリアを追求できる環境を整備する必要性を訴えた。
「最高裁に行ってでも戦うつもりです。長い戦いになるだろうし、日本で生きていけなくなるかもしれないと言われても、私は絶対にこの戦いをあきらめない。日本が海外から優秀な人材を招こうとしているのに、これではこの国から良い人材は去っていってしまう」と、ウッド氏は同日、Business Insider Japanの取材に答えた。
ウッド氏は10月26日に東京地裁に地位確認・賃金支払いを求める仮処分申請を申し立てた。ウッド氏の弁護士によると、仮処分手続きの中で、三菱UFJモルガン・スタンレー側は、同氏の訴えを「被害妄想であり、病気が治っていない」などとして復職を拒否。「これまでメディアで述べたことが間違いであったことを公表すること」を復職の絶対条件としているという。
ウッド氏は手紙の中で、安倍首相と小池都知事に対して、子育てをしながら仕事のキャリアを追求できる環境を整備する必要性を訴えた。
提供:グレン・ウッド氏
訴状によると、ウッド氏は2015年8月に、パートナーの出産に合わせて育児休業の取得を三菱UFJモルガン・スタンレーに申請。同社は、母子手帳を所持していないことなどを理由に認めなかった。その後、父子関係の証明のためのDNA鑑定書の提出を経て、12月末から育休休業を開始した。
ウッド氏はシングルファーザーとして、ベビーシッターを手配するなどこれまでどおりに仕事をする体制を整え、2016年3月に復職。しかし、訴状によると、ウッド氏は仕事を干されるなどのハラスメントを受けたという。上司や人事担当者と話し合うが状況は変わらず、2017年1月にうつ病の診断が下り、休養に入った。10月、会社は休職命令を発し、未だ現職での復帰は認められていないという。
三菱UFJモルガン・スタンレー・広報部は、同社はまだ訴状を受領していないとして、コメントを控えた。
(文・滝川麻衣子、佐藤茂)